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ラストダンジョン 05 レビングアーマーの急所

「今度はどんな問題だ?」


 身構えるジュリーの予想とは少し違い、鎧は意図的な合成音声で勝負を挑んでくる。


「我ガ息ノ根ヲ止メヨ」


 動き出した鎧(リビングアーマー)はスラリと剣を抜き放ち、まずは最も近くにいたレイナを狙って剣を振る。

 レイナはひらりとそれをかわして抜き胴を放つ。

 しかし、全身を鎧に覆われている敵はダメージを受けているのか傍目には判らない。

 冒険者はサッと部屋の中に展開し、次々に撃ちかかる。

 しかし、彼らの攻撃はプレートをへこませるだけでダメージを与えられている気がしない。

 唯一戦闘に参加せず、自身の守りをロムに委ねてひたすらに動く鎧を観察し続けていたゼンは、やがて自分の頭の中を整理するためだろう。

 いつもの顎に親指を当て、鼻の頭を人差し指で叩く仕草をしながらブツブツとロムに問いかけてくる。


「これはロボットですよね」


「だろうね」


 ロムだけではない。

 彼らがこの目の前の鎧がミクロンダンジョンでは本来あるべき姿とも言える敵ロボットであると頭では判っている。

 あとはどういう条件ならダメージ判定して機能が停止するかだ。

 これだけ殴りつけてまだ動き続けているからにはヒットポイント制のダメージ判定ではない事はまず間違いないだろう。


「で、()()が言った言葉が『我ガ息ノ根ヲ止メヨ』」


「何を試せばいいんだ?」


「突きです。問題はどこを狙えばいいか……」


 ダメージの累積で破壊判定がなされるのであれば、ゲームセンターでおなじみのパンチングマシーンなどに使われているような測定センサーが仕込まれているだろう。

 それはどこを叩いてもそれなりに反応してくれる。

 しかし突きで特定の場所を攻撃するような場合のセンサーは的になるセンサーに当てなければならない。

 それはどれほどの大きさでどこに仕込まれているのか?


「このダンジョンの設計者はゲームであることを強く意識しています。おそらく自身に課した制約かなにかなのでしょう。とすればどこかにヒントが隠されているはず。それさえ判ればいいのですが……」


「息の根ってのを見つければいいってことか?」


 ロムはいましがたゼンが呟いていた鎧の言葉に反応する。

 知らず知らずのうちにオタク特有の言葉足らずなゼンたちと、意思の疎通が出来ている自分に苦笑しながら意識をその命題に向ける。

 考えられる部位は多くない。

 おそらく文字通り『息の根』を攻撃すればいいと見た。

 とすれば呼吸関係のどこかに違いない。

 ロムはジュリーとサスケにゼンの護衛を代わってもらうとヒビキの隣に移動する。


「何か閃いたのかい?」


 問いかけられて手短にゼンとのやりとりを説明すると、ヒビキは感心したように背後のゼンを見やる。


「で? 君はどこだと思う」


「喉ってとこじゃないかと」


「甘いねぇ」


「甘いっすか?」


「人には急所が多いんだよ」


「それは一応把握してます」


「じゃあ息が止まる急所は?」


「……鳩尾?」


「答え合わせといこうじゃないか」


 ヒビキはニヤリと笑ってみせると突きの構えをとる。


「まずは喉」


 と、鋭く棍を築き上げる。

 だが突きの衝撃で仰け反りはしたものの動きが止まる気配はない。


「どこが鳩尾なんだか」


 そう言いながらも彼女は正確に正中線を捉え、鳩尾と思われる場所を穿つ。

 一瞬動きが止まったものの鎧はすぐに剣を振るい始める。

 振り下ろされる剣を避けるため崩された体制でヒビキが悪態をつく。


「シビアすぎ」


 なおも執拗にヒビキを狙って攻撃を仕掛けてくる鎧に、右側面からコーが体当たりをかますと姿勢制御のため攻撃が止む。

 動きの止まったそのほんの数秒をロムは見逃さなかった。

 手足を使ってバランスを取ろうとしたために無防備に彼の前にさらけ出された腹の、ヒビキが穿った鎧の凹みの少し上、棍の先が半分重なるくらいの位置に突き入れる。

 動く鎧は電子音声で苦悶の声をあげ、膝をついてのち崩折れた。

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