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ラストダンジョン 02 小手調べ

 サスケのマッピング準備が整うのを待って冒険者は先へ進む。

やがて通路が丁字に別れた場所に着いた。

 右手は通路がまっすぐ伸びているが左は光の届いているうちにさらに左折している。


「どっちに行く?」


 ヒビキが左を警戒しつつクロに訊ねる。

 クロは眉間にしわを浮かべたあと隣のサスケの手元、フロアマップに視線を落とす。


「拙者に任せてもらってよいでござるか?」


 それに気づいたサスケの提案をクロが受け入れ、彼らのフロア攻略法に乗ることになった。

 まずは通路の探索である。

 途中の扉は全て無視して確認できる範囲でフロアの全体像を把握する。

 それによって扉を開けずに幾つかの部屋が地図上に浮かび出す。

 ちなみにランタンオイルはゼンによっておおよそ一時間で使い切る量に調整され時間を測るのに使われており、この作業にざっと一時間半がかかっているのが確認されている。


「大迷宮ですね」


 ゼンがつぶやく。

 地図を囲むのはクロとサスケそしてゼン。

 他のメンバーは念のため周囲を警戒している。


「こことここは先に進む余地のない部屋、ここはこっちと続いていそうだな」


 クロが地図上を指差す。


「ええ、ここは空間スペースから見てトラップの仕掛けがある場所でしょうね」


 これまでの探索で二箇所で落とし穴(ピット)が、一箇所で仕掛け矢の罠が仕込まれていたが、いずれも無難に回避してきた。


「先に進めそうな扉が二箇所か」


「拙者は試しにこのどちらかを開けてみることを提案したい」


 と、閉鎖空間になっている二箇所を指し示す。


「なるほど、仮に戦闘が行われるとしてオレたちの連携が取れるか試しておくのは悪くない」


「であれば中が広そうなこちらをお勧めします」


 扉は鍵がかかっていたが、十分の一世界ということもあり複雑な仕組みではなく、サスケがピッキングすると二、三分でかいじょうに成功した。

 道すがら中に入る手順を確認していた冒険者は、ジュリーが合図とともに開けた扉に次々飛び込んで行く。

 光源であるランタンを持っているゼンが部屋に入り、室内が照らされたことにより明らかになったのは、そこには何もなかったということだった。

 しかし、彼らが気を抜いた次の瞬間、ガタリと音がしたかと思うと天井からコボルドが五体降ってきた。

 コボルドは俊敏な身ごなしで着地すると一斉に吠え、近くの冒険者たちに飛びかかってくる。

 一体は突然の出来事に硬直したジュリーに、二体がシュウトに向かい残りの二体はクロとゼンに狙いをつけている。

 不意を打たれたジュリーはとっさに顔をかばった左腕に噛み付かれたが、そこは完全武装の恩恵でしっかり受け止め、この日のために刃を研いだショートソードで胴を抜き打ちにいで振り払う。

 そこにサスケがこちらも刃を研いだ脇差で頚動脈を切り裂くと、コボルドは盛大に血飛沫をあげてどうと倒れた。

 二体に同時に襲われたシュウトだったが星球式槌矛モーニングスターを振り回すことでひとまず牽制し、二体と対峙する。

 その隙をついてヒビキが一体の後ろから自分の身長ほどの槍で突き込み致命傷を与えると、隣のコボルドがヒビキに反応した隙をシュウトは見逃さず残る一体の頭を星球で砕き潰した。

 クロは冷静だった。

 ジュリーから譲り受けた真剣をすらりと抜き放ち、一刀の許に真っ向袈裟懸けで切り伏せると彼の技量は真剣の性能を遺憾なく発揮したのか、まさに真っ二つにコボルドを両断した。

 狙われたゼンは情けなくも頭を抱えてしゃがみ込む。

 それをフォローしたのは隣にいたレイナと長柄の武器である棍を持っていたロムであった。

 とっさにロムが相手の喉に突き込み、痛みにうずくまろうとしていたコボルドの下がったうなじ辺りにレイナのレイピアが食い込む。

 見事な連携であった。

 互いに目配せをしたわけでもジュリーとサスケのように連携慣れしているわけでもないにも関わらずだ。


「助かりました」


「何のなんの」


「オレは出番がなかったな」


 コーがぼやく。


「戦わないで済むならその方がいいと思うけど?」


「確かにレイナちゃんの言う通りだ」


「一人でも戦えた」


 シュウトがヒビキを睨む。


「判ってる。効率の問題さ。戦いなんてとっとと済ませた方がいい」


 とヒビキは受け流す。

 シュウトはあからさまに舌打ちをして足元に倒れているコボルドのむくろを蹴飛ばした。


「ヤバイな、部屋にモンスターを仕込むのはRPGのセオリーだけど、現実世界では生き物を閉じ込めておくなんてなかなかできるもんじゃない」


「それをような手段で解決するとは拙者も思いつかなんだ」


「秘密基地的な()()だからできる手段でしょうね」


 ジュリーたちが場違いにもRPG談義をしているのを呆れた顔で眺めるロムがいた。

 冒険者はその後もう一つの独立した部屋と連絡通路で結ばれているだろうと見られる部屋を無視して、残り二つの扉を探索することにした。

 最初に開いた扉の中は倍くらいの広さがあり、最初に開いた扉と同じ仕掛けで今度はコボルドが八体降ってきた。

 それを前衛五人で退ける。

 コボルドであれば何体来たところで敗けはしないだろう。

 もう一つの扉を開けると、その先は通路が伸びていた。

 彼らは再びマッピングのために歩き回ることになる。

 探索中一度、後ろからケルベロス一体に襲われたが、コーとロムが協力して難なく倒した。

 そして扉が三箇所、どの扉を通っても先が広がっているのが予想された。

 冒険者は三箇所の扉の中で一番近いものを選び開けることにした。

 扉はそれまでの扉同様簡易な仕掛けの鍵がかかっていたがサスケが難なく開ける。

 途端に部屋の中の仕掛けが動く音がして生き物の気配がし始めた。


「判りやすくていいや」


 ジュリーが呟き扉を開ける。

 ヒビキとシュウトが素早く中に入り、ジュリー、クロ、サスケと続く。

 中には八体のオークが待ち構えていた。

 手にはそれぞれ刃渡り十五センチ級のナイフを持っている。


「厄介な」


 口にしたのはヒビキである。

 彼我の得物の長さはこちらの方が長い。

 普段であれば何の問題もないだろう。

 しかし、あまり広くない閉鎖空間ゆえに懐に入られると困るのだ。

 特に槍のヒビキはその厄介さをもっとも被ることになる。

 彼女はとっさの判断で槍を手放し腰に差していた三節棍に持ち替える。

 ブンブンと風を切る音が鳴るほど振り回し、迫り来る三体を威嚇する。

 その隣ではシュウトが星球式槌矛モーニングスターを同じように振り回している。


「棍を止めろ」

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