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楽園の攻防戦 02 合流

 街の住人たちの一角がざわついたのに最初に気づいたのはサスケだった。

 チラリと視線だけ向けるとその中心には顔を覆って泣いている少女がいて、周りの人々がおろおろしていた。

 そこに見知った中年が近寄っていくのを確認した彼は、記憶の中からその人物を照合する。


「ジュリー、ゼン。やっさんがいたでござる」


 二人を小突きながらぼそりと呟くと、二人も視線をそちらに向けた。


「あ……」


 やや間があってジュリーが小さく呟いたかと思うと、ふるふると震えだし立ち上がる。


「ジュリー?」


 ゼンがその様子を訝しみジュリーの顔を見上げると、くしゃくしゃに歪んだ表情で泣いている。


「レイナっ!」


 叫んだ向こうで泣いていた少女がこちらを向く。

 サスケもゼンもその姿を確認した。

 生きていた。

 無事に生きていた。

 レイナの方も彼らを認めたようで堪えていた声が溢れ出し、しゃがみこんでおいおいと泣き出したため、コーが説明を中断するほどの事態になった。


 「どうしたんだ?」とジェスチャーでヒビキの説明を求めるコーの元へ近寄り、ヒビキが耳打ちする。


「レイナの兄貴たちが来たらしい」


「ホントか?」


 ヒビキは力強く頷く。


「……収拾つかねーな。仕方ない、説明は別れる過程で個別にしてもらうとしてとりあえずここは解散しよう」


「レイナの関係者には残ってもらってよ?」


「誰々だ?」


 訊かれたヒビキは四人を指をさす。

 小さく頷いたコーは手早くまとめこの場をお開きにする。

 集まった住人たちが荷物をほどき、手慣れた様子で検品仕分けを始める。

 コーはヒビキと一緒に今日来た人々の所持品が積まれた荷車に近づく。

 ヒビキはまだ泣きじゃくっているレイナの肩を抱き、その横にはやっさんも付き添っている。


「ああ、その四人にはちょっと残っていてもらう」


 今日来た人々を中央広場(そば)にある宿に案内しようとしていた自警団のメンバーに声をかけたコーは、少し戸惑った様子の四人を手招きした。

 集まった彼らは改めてレイナと対面する形になる。


「お兄ちゃん……」


「元気だったか?」


 レイナはうんうんとただただ頷くしか出来ず、泣き続ける。

 ヒビキは改めて彼らを見る。

 レイナの兄はレイナと比べて整った感じはないがなるほど顔の造りは似ている。


「で、我々を呼び止めたのは感動の再会のためだけでしょうか?」


 小柄で小太りの男が鼻にかかった声の妙な節ついた話し方でコーに話しかけて来た。


「ああ、すまない。まずは自己紹介をしてもらえないかな」


「ゼンです」


「サスケ」


 大きな男はぶっきらぼうに名前だけを呟く。


「ああ、ジュリーだ。こっちはロム」


 レイナの兄はセリフじみた言い方だ。


「ここでもニックネームで呼び合うの?」


 もう一人の青年が少し嫌そうにコーに訊ねる。


「普段呼び慣れている名前で呼んている。嫌かい?」


「まぁいいけど」


「君たちの話はレイナとやっさんからある程度は聞いている。それで、君たちはどれくらいこの事件のことを知っているのか教えてもらいたいんだ」


「情報の密度ならやっさんの方が詳しいと思うけど?」


 ロムがやっさんの方を見る。


「オレの情報は何ヶ月も前の情報だ。お前ら新しい情報掴んでねぇのか?」


「少しなら」


「充分だ。これから主だった人たちを集めるからそこで話をしてくれ」


「判りました」


「オレたちの武器はどうなるんだ?」


「通例なら一旦こちらで預からせてもらうことになる」


 コーがそう言うとロム以外の三人が渋い顔になった。


「何か、問題でも?」


 ヒビキが問う。


「我々の武器は少し特殊でして……」


「どれだ?」


 彼らはそれぞれの所持品を荷の中から取り出して目の前に広げてみせる。


「これは……」

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