金色
「全く……まるで断頭台にいるような気分だ……」
「ご気分が優れないところ申しわけありませんが戴始爵様……結界もそう長く保ちそうにないですね……」
四つん這いで片手をつき、もう片方の手で後頭部を掴むように撫でながら……それはもう具合の悪そうな顔でザビティと会話するビクター。
彼らはこれまでの来客の中で間違いなくトップクラスに強い……そんな彼らを殺気だけであそこまでの状態に追いやってしまっている。もう、【弱】にしたところで弱い人なら死んでしまうかも知れない……なぜ、このレイスは以前よりこんなに強くなってしまったのかはわからない……。時間の経過によるもの?来客の人数?それとも……もっと他に条件があるのだろうか……?考えても答えの出ない問いには困らない身体になったものだと、つくづく思う。
考えを巡らせている間に……剣を持ち、割れそうな結界ギリギリまでこちら向かってくるビクターが目に映る。
「…………ん?」
(ビクターの剣は私が掴んでいたはず……)
持っているはずの剣が無くってるのをビクターを見てようやく気づいた。一体いつの間に……?でも、やったとしたらザビティしか考えられない……
だとしたら雷撃を喰らう前か?……本当に器用だ。
「グレン殿……サポートを頼めるか?」
「……ええもちろんでございます」
「戦いにおいて助力を乞うのは旅をしていた若い頃以来だな……私も年老いて驕っていたようだ」
彼らは仕掛けるつもりだ。
結界のヒビは秒刻みに音を立て増えていく。
「私も〈あの娘〉を見習って命を削ろうか……
ーー【覇克騎装・金色】っっ!!ーー」
「ーー魔導活性・皇っ」
ビクターが何を唱えると直ぐ様その身体は金色の光をうっすらと纏い、ザビティが何かを唱えた後にビクターのうっすらだった光は力強く輝きだした。
そして、切って火蓋を落とすが如くザビティの結界は一斉に割れて重なるような音を響かせた。
気づくと眼の前にビクターが輝きを放ちながら両手持ちにした剣を振りかぶっている。だが剣の間合いからは少し遠い……これでは振り降ろしたところで人ひとり分届かない。そう考えている一瞬にその刃は振り降ろされた。
「ーー【抜海】っ!!ーー」
ビクターの声を聞いた。
その次の瞬間……彼の前方、私を目掛けて数百メール先まで縦に地面が割れた。
「……は……っ?」
(もしかして剣でこんなことしたの?……どっちがバケモノよって話だわ)
難なくそれを躱した私はクレバスのように裂けた地面を横目に確認するとビクターとの距離を詰め、彼の首を掴み持ち上げた。
「ーーガッ!!カッ!!グァッ!!こ……このバケモノがぁあっっ!!ーー」
剣を離し、首を絞める私の手を掻くように両手で抵抗するビクターは空に浮く足をバタつかせもがいている。
気づけば彼らを圧倒するレイスの力に〈バケモノ〉と呼ばれてもやはり仕方ないのかもなと思いふける。彼らが弱いわけではない……金色に輝きだしたビクターはダンキュリーやシーザを遥かに凌ぐスピードで以前の自分なら対応出来る速さではなかった。だが、どうゆうわけか殺意にブレーキをかけることをやめてからレイスの身体能力や感知する力が急に跳ね上がり、もはや別次元の強さを有する存在へとなったかのよう感じる。
「……そろそろ、終わりに……しようと思います」
淡々と言葉を吐く自分に違和感を覚えた。
これまで、レイスの姿でありながら人であろうと努めた心情から最も遠い行いをすることでしか守れないものがある自身の境遇への葛藤なのだろうか……。
そう……
私は……
【守る】ために
【殺す】ことを
選んだんだ。
私は突き上げた左手の五指の先端からゆっくりと……力を入れ始めた。




