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扇風機





 足の踏み場のないほどの睡下蓮タストネシアが一斉に蕾を開く異様な光景の中、花粉の舞う濁った視界でサビティとビクターが口を覆う仕草が目に入る。



睡下蓮タストネシアですか……それに瞬時にこの量を」

「グレン卿!これは何だ?」

「この花粉には睡眠作用があります、吸い込まぬよう」

「そうか……なら脳の覚醒を制御すれば……」



 2人の会話の中、ザビティは杖を胸の前に突き出した。その杖の上部先端にはこぶし大ほどの大きさの水晶があしらわれており、次第に青白く光出した。

(杖なんか持っていただろうか……?急にそこに出てきた感じだった……)



「リ・フリート」



 ザビティが杖を構えて何か唱えた直後、風が発生し花粉を巻き上げ遥か上空へ運んでいった。



「おお!助かったぞ。目に入りそうで鬱陶しかったのでな、少し吸ったが……問題ないな、グレン卿はどうだ?」

「ええ、こちらも問題ないです」



 ビクターは羽虫を払うような仕草でザビティの方へ歩いていく。一瞬で眠りに落ちたネイナと違って2人は平然としている。


 睡下蓮タストネシアの効果をものともしない2人の姿を見せつけられながら、少し離れた場所に【別の植物】を生やした。



『時間を作ってくれてありがとう……少し休んでいて……』



 誰にも聞こえない小さな声で言った。





 地面から手を離して立ち上がり、眼前の強者2人を見据えてた。



「それにしても雰囲気がまるで違うじゃないか……あの特級モンスター」

「こうなる前に終わらせておくべきだったと後悔するかも知れませんね戴始爵様」

「まさか!だが、グレン卿が危険視する理由が何となく分かったような気がするよ。少なくとも上級騎士数名で何とかなる相手ではない……異様な殺気が肌に刺さるようだ」





『たぶん……電源ボタンが壊れてしまった扇風機なんです……』



 臨戦態勢に入りつつある2人の会話に割って入った。私は例えば話に家電を良く引用する。正しく表現出来ているかはともかく癖なんだろうと思う。



「……?」

「……せん……ぷう?」



 脈絡のない切り出しと彼らにとっては未知の言葉を発する私に怪訝さと警戒にも近い所作をする2人。



『……私の今の殺気かぜはたぶん……極めて【弱】なんだと思います。周りに影響が出ないようずっとそうしてきました……そういう生き方をしてきましたから……』



 強者2人が何かを感じたのか、構える。



「戴始爵様……」

「ああ、動く前に……殺る……」





 今だから明確に分かる、このレイスの力は以前よりも格段に強くなっている……見知らぬ森で目覚めたあの日よりも遥かに強く。自分の性格が幸いにして【弱】を維持できてたから良かったものの、もし姉妹に今の加減なしの殺気かぜを浴びせていたらどうなっていただろうか…………考えたくもないが、今は2人ともレイスの殺気を受信する条件から外しておいた。睡下蓮タストネシアはそのためのものだ。





 さあ……やってみよう……。



『……だから……したことがないんです、



 【中】や【強】に……










 ……【ちょっと付き合ってもらえます?】」





「ーーた、戴始爵様っ!待っーー」

「ーーーーいいやっ待たぬ!!グレン卿は正しかった!故に私が始末をつけるっっ!!」



 私のただならぬ雰囲気に呼応するようにビクターが瞬速を持って剣を私に真っすぐ突進してくる。




 なんだろう?今までで一番速いのに…………なんだか……ゆっくりに感じる。



「ーーーーなっ!!!!」



 今まで見たこともないビクターの余裕のない顔を……刺突された剣の先端を私は左手で掴みながらまじまじと見ていた。



 そして、改めて殺気を自らの意識で彼らに向けた。その瞬間、知らない言葉が脳裏に浮かんだ……。









可死適応アポストロヴァニア

 


 


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