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睡下蓮












 ……ビクターが横槍を嫌ってアルフレア・ダンキュリーを連れて行ってしまった後、私と姉妹の3人は一番不気味な仮面の紳士とその場に取り残されてしまった。




 仮面の紳士ザビティ・グレンは数メートル程距離のあるところから近づいてくる様子もなく、ただこっちを向いている。凝視しているかのように見えるが仮面のせいか目線が今一つ掴めないのが尚更不気味で居心地が悪い。




「ネイナちゃん……私ね、意志とは関係なく【殺気】が出てるみたいなの」



 私はザビティ・グレンが何もしてこないこの時間を利用して突拍子もなく話し始めた。



「……え?でも今は何も出てないよ?」

「今は足を治してるから……その間は出ないみたい……私も詳しくはわからないの、ごめんね」

「ううん、勝手に出ちゃうなら仕方ないね!」

「だから……少しだけ我慢して……」

「え?」




 ネイナにこの話をしたのは




 【足の修復がもうすぐ完了しようとしてるのがこのレイスの身体で感じたからだ】



「あ、ネイナちゃんのその本に麻酔……眠たくなる植物は載ってない?」



 私はネイナの腰にあるブックホルダーを指差して言った。



「……え、えっと!あるよ!…………これ!」



 ネイナは更に突拍子もない質問に不思議そうな顔をしながらも本を開いて差し出してくれた。そこに構造は蓮科に似ているが色は黄色いおしべが青い花弁で囲まれている植物が載っていた。その名は……



「……睡下蓮タストネシア

「そうだよ!その花粉を吸い込んだら大人でも一発で夢の中だよ!」

「人体に影響はあるの?」

「ない!…………たぶん!」

「……そう、ありがとう」



 本をネイナに返すとネイナの頭をそっと撫でてお礼を言った。時間が経つにつれ感覚が強くなり秒刻みで鮮明さを帯びてくる……足の修復が完了するその時を。



「あなた達は絶対守ってみせる……」

「レーコ……ちゃん?……」



 ……3



「おや、もう終わったようですね……」



 ザビティが呟いて私達がいる方向から視線が逸れる。



 ……2



「……待たせたね、グレン卿」



 ザビティが逸らした視線の先からビクターがベッタリと血の付いた抜身の剣を携えて戻ってきた……。



 ……1



 私は左手の五指の先端を地面に立てるように刺した。



睡下蓮タストネシア



 その言葉と同時に私の欠損した足は顕現し、辺り一面におびただしい数の睡下蓮タストネシアを咲かせ、大量の花粉の胞子のように空気中に散布させたっ。



 「ーーっ!!?」



 ネイナは一瞬、私の殺気に当てられてしまったがすぐさま睡下蓮タストネシアの花粉を吸って文字通り倒れるようにドサっと眠りについた。





 そして、サビティとビクターにも少し遅れてその効果を見せる……。














 ーーはずだった。









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