大柄の男
振り返って目に映ったのは担架の進路を妨げる3人の男達だった。ガラが悪く清潔感がない、不気味にニヤつく彼らは野盗や山賊を思わせる風貌をしている。
「ーーお前らぁ!! その死にかけを置いてさっさと消えろオラァ!!」
「ーーうわぁ!!」
3人の内の一際大柄な男が担架の前方を持つ村人を乱暴に払い除ける。担架は倒れ爆発男は力なく地面に転がった。
身の危険を感じた村人達は爆発男を残してその場から離れていく。去って行く村人を見届けた大柄の男はフンッと鼻で笑った後、爆発男に近づき髪の毛を乱雑に掴んだ。
「おい、こいつだよなぁ!?」
大柄の男は後ろの2人に爆発男の顔を向けて見せた。
「ああ、こいつだ。さっさとヤッちまおう」
「これで金が貰えるんだよなぁ、へっへっへ…」
大柄の男は爆発男を離して手持ちの武器を構えた。
「恨みはねぇが死んでくれや」
大柄の男は柄の長いハンマーの様な武器を爆発男の頭部目掛けて振り下ろす。
「ーーやめなさいっっ!!」
私は大きな声を張り上げ、同時に木を生やして爆発男の頭部を庇った。振り下ろされたハンマーは少量の木の枝をへし折っただけで頭部まで届くことはなかった。大柄の男は何が起こったのか理解できていない表情を浮かべている。
「おい……なんだあれはぁ? ……この木はアイツがやったのか??」
3人ともレイスを視界に捉えて固まってる。こちらも下手に動かず様子を見ることにした。
「……お……おい!! いいから先にそいつを殺せ!」
「そうだ、やっちまえよ!! 早く!!」
後ろの2人が大柄の男に催促するが、得物が木に絡まってもたついている。
「ーーうるせぇな!!! 黙ってろっっ!!! クソ!!」
再度、爆発男を殺そうとする動きに私は次の手段に出た。
「口で言って聞かないなら仕方ない……」
「ーーうわ!! おい!!! これどうなってんだっ!! クソが! クソっ!!」
私は大柄の男の足元から木を生やし、彼の身体を枝で絡めて地上から7、8メートルくらいの高さまで一気に持ち上げた。
一応、爆発男にケガがないか確認するために例の移動方法でゆっくり近づいていった。
「ーーおいおいおいおい! やべぇよ! こっち来るってーー!!」
「お……俺は逃げるぞ!! ……あ……あんな化け物、お……お……俺達なんかで何とかなるわけがねぇ!!」
2人は大柄の男を置いて逃げる算段のようだ。それが聞こえたのか大柄の男は木の上から2人に激昂する。
「ーーてめぇらっっ!! ふざけんじゃねぇぞっっ!! 絶対にぶっ殺してやるからなっっ!! このクソどもがっっ!!」
「へっ……悪く思うなよガスター。せいぜい俺らが逃げる時間を稼いでゆっくり殺されてろよ!! じゃあなっ!!」
「あ……あんたにはわりぃけど、お……俺も行くぜ! へっへっーー」
ガスターと呼ばれた男はありったけの汚い言葉と恨みの言葉を2人に浴びせ続け、2人は徐々に近づくレイスの姿を見て青ざめながら上にいるガスターをおいてその場を去っていった。




