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モヤモヤ






 ヒュっと、風を切る音が耳の横を通る!



 斜め後ろからの横一閃の斬撃を瞬時に目の端で捉え間一髪の所でしゃがみ込み、それを躱した。



「ーーっぶね!」

「その図体で良く反応するものだな」



 躱した反動を殺さずに向きを反転させながら斬り上げ、そのままヒゲ野郎と距離を取った。間合いを取りたいだけの斬り上げは当然、空を切る。すぐ追撃して来ようものなら一撃喰らわせてやったかもしれんがそう上手くはいかない。



 にしても、このヒゲ野郎……不意のヴォルグをいとも簡単に避けて更に間を置かずにカウンターで背後を取ってきやがった……それにまだ余力がある……。


 それに比べてこちとら、病み上がりだ。魔力だってレイスとの戦闘で半分も回復しちゃいねぇし体力だって同様だ。なんなら座りてぇ……。



「……フゥーー……」



 息をつく、オレを見てヒゲ野郎は少し視線を下げた。

 


「……フム……やはり……貴公もか炎将フロスト……」

「あん?なんの話だ?」

「……ほんの数回だが、貴公の動きを見れば嫌でも分かる……上手く隠してはいるが……





……万全ではないのだろう……?」



 ヒゲ野郎は問う……それはもう……残念そうに。



「……それがテメェに関係あんのか……!?」


「あるとも!私は今日、この国でもほんの一握りの強者に相まみえ、それと剣を交える機会を幸運にも得たのだ!それも2人もだ!」



 少し興奮しているのか声高らかに語る。



「それが蓋を開けてみればなんだ……2人ともが手負いで、おそらく本来の実力の半分も出せていないであろう有り様だ……」



 ヒゲ野郎は声のトーンを落とす。



「全く……貴公達程の実力者をそこまで消耗させるような【何】があったというんだ……」



 貴公達?オレとあの騎士の姉ちゃんか……?騎士の姉ちゃんも手負いの状態でヒゲ野郎とやりあったってことか……?



 まさか、オレと同じように【レイスあれ】に手ぇ出したんじゃねぇだろうな……。



 そういえばレイスの野郎……戦った時とは違って殺気が全く出てなかったな……何故だ?あの姉妹が何かしたのか……?いや、レイスが姉妹を守っていたようにも見えたような……ダメだ考えたってわかんねぇ……。そうだ……オレはこのモヤモヤした感じが嫌でまた森に入ったんだ。


 レイスが一体何なのか……それが知りてぇ……。


 そのために……まずは……



「テメェから片付けねぇとなぁ……ヒゲ野郎」



 つい頭で考えていることが口に出た。



「……フム……急に雰囲気が少し変わったな……」



 ヒゲ野郎は剣を構え、少し足を広げこちらを見据え……備える。



「万全がどうとか関係ねぇ……やることは一つだ」

「……いいだろう来い。……あまり期待はしてないがガッカリさせてくれるなよ……?」

「ほざいてろ、すぐに後悔させてやるよヒゲ野郎」




 剣の切っ先を地面に這わせてジリジリとゆっくり間合いを詰める。


 (普段は小細工なんてしねぇが……奴が【瞬き】するその刹那に地面から跳ねるイメージで……キメる)




 少し静寂の直後……その時はすぐに来た。



 



 

 

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