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若き将





 遠く?横槍?一体なんの話だ?


 そう思った瞬間に突きの構えをする目の前のヒゲ野郎は何かを呟いた。



「ーー追黒ヴァニッシュバルツーー」



 その言葉とほぼ同時にとんでもない突進力のある突きを繰り出したヒゲ野郎は軽々と俺のデカい図体を運んでいく。先程の言葉通り《少し遠くへ》だ。



「ーーグッッ!!」

(なんつーバカみたいな力してやがる!)



 かろうじて武器でガードしたおかげで串刺しになることはなかったが姉妹とレイスのいるところから結構遠ざかってしまった。


 次第に突きの勢いも弱くなったきたところで刃を返すように切り払い、ヒゲ野郎は後ろに飛んで距離を取った。



「うむ……良く防いだな」

「……何言ってやがる……舐めてんのか」



 ……分かってる。奴は突きを防がれたんじゃねぇ……《防がせた》んだ。串刺しになったんじゃここまで吹っ飛べねぇからなぁ……。



「さあ1対1、邪魔は無しだ炎将フロスト」

「…………何度も言わせんじゃねぇよ、俺はーー」

「いいや貴公は炎将フロストだ、あの【魔導卿】が言うのだ間違いないだろう」

「…………仮面野郎のことか?」

「ああそうだ、彼は魔法を見ただけで粒子レベルで癖や特徴を理解し見分ける事が出来るそうだ……まあそんな事はどうでもいい……」



 ヒゲ野郎は話しながら俺を軸にしながら距離を保ちつつ左回りに歩きだした。



「…………およそ13年前のデメタール帝国とアトワイズ王国の大戦にて帝国の若い将が爆炎の魔法を使い単騎でアトワイズ軍の前線部隊を壊滅させた。対策を講じるため再度部隊を立て直し進軍した際は魔導卿、自ら前線に赴き兵を爆炎から護った……だが爆炎が防がれようとも若き将は武器を持って戦場を駆け、またも多くの兵を屠りアトワイズ2度目の進軍も前線を押し上げることなく撤退。まさに無双というやつだな」



 ヒゲ野郎は昔語りをしながら自身の進行方向にある木々を次々と……まるで木に質量がないかのように一刀のもとに淡々と切り倒していく。倒れる音で少し声が聞き辛い。



 一体どういうつもりだ……?



「……防護魔法以外にも爆炎の将を止める方法を携えてアトワイズ国は魔導卿と勇猛な将を連れて再度前線に赴くが、どうゆうわけか彼の者は戦場のどこにも姿を見せず愚かにも大軍を率いて前線に来ていたデメタールの皇帝を魔導卿が討ち取った形で大戦は幕を引いた。デメタール領の残党軍は【逃亡の将】として炎将フロストに莫大な懸賞金をかけているそうだな……」



 ダラダラと話を聞かせやがるヒゲ野郎にイライラが募り、睨みをきかせる。



「ハハ……そんな顔をしないでくれたまえ、戦場から逃げたことを非難したいわけではない、ましてや理由を知りたいわけでもない。ただ私は立場上、国家間の争いに参加することは禁じられていてね。だから炎将フロストと戦えることが嬉しいのだよ……単騎で戦術レベルの戦果を為す貴公とな」



 ヒゲ野郎が周りにある木々をあらかた切り終わった辺りでちょうど話のオチがついて、足を止め身体をこちらに向けた。大きい木から小さい木まで大雑把に根本から切り落とされ広い空間が出来あがっていた。



「フム……足場は悪いが見通しが良くなったな……さて……





やろうか炎将フローー」

『ーーア・ヴォルグッ!!ーー』



 ヒゲ野郎の立っていた場所に魔法を放ち、爆炎と煙が上がる。



「話が長ぇーんだよバーーカッ」










 

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