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たとえ彼らを……





「これは死合だ、…………そこを退け小娘」

「ーー退きませんっ!!」



 両者が睨み合う沈黙の中、次に声を発したのは意外な人物だった。





「……ほぅ、術式配列がめちゃくちゃになってるな…………なるほど、それで強度が落ちたわけか…………薬草と薬液でこんなことが出来るとは……面白い……」



 距離のあるところにずっと居たはずの仮面の紳士ザビティ・グレンが一瞬の内に私のすぐ隣でブツブツと喋っている。


 下を向いて自身の考察に声を漏らすザビティの視線の先にはネイナの足を固定していた魔法がある場所と、そこに散乱した空の小瓶と潰れた赤い実の植物があった。


 いつ動いたのか分からない妙な不気味さを放つザビティは飄々と私の側で考察にふける。



 そんなサビティに気をとられていたが、ビクターの大きな溜め息を聞いて視線を戻すと……




 ネイナの首元にあった剣は振り上げられていた。





「……ならもう何も言うまい」



(ーーダメっ!!もう自己修復に集中してる場合じゃないっ!)


 シーザとネイナ諸共と言わんばかりに振り降ろされるビクターの剣を私は…………





 姉妹に覆いかぶさるように背中で受け止めた。





「ーーっっ!?モンスターが……人を庇うか……」



 ビクターはポツリと呟く。



「ほぅ……これも興味深いですね」



 ザビティも私の行動を見て声を漏らす。





 モンスターである私がこの子達を守って盾になることは彼らからすると極めて異常で異質でありえない事なんだろう。

 でも、そんなことはどうでもいい。……こんなよく分からない世界でよく分からない化け物の格好をしたこんな私を助けようとしてくれたこの子達を……蝕むような悪意や敵意から私の心を救ってくれたこの子達を……



 絶対に失いたくない……。


 絶対に……。


 

 たとえ……







 【……彼らを殺してでも】



「ーーーー離れてください戴始爵様っっ!!」



 私が《殺し》を決意した瞬間、ザビティ・グレンがこれまでにない大きな声でビクターに呼びかけた。直後……少し前に聞き覚えのある声と言葉が耳に入ってきた。




『【ーーア・ヴォルグッ!!】』



 私とビクターの間で爆発が起こる。

 ビクターはすんでのところで後ろに飛び退き、直撃を避けた。



 私は爆発の熱が姉妹に伝わらないようその衝撃を背中で受け止めた。





『おいおい、人の獲物に手ぇ出してんじゃねぇよヒゲ野郎』



 姉妹を庇う姿勢から顔を上げて声の方を向く。



 ザビティの斜め後ろから現れた声の主は……




 数日前に私の両手を吹き飛ばした……



 あの【爆発男】だった。






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