賛辞
ビクターの猛攻の最中、シーザは一瞬の隙に後ろに飛ぶ。距離を取った……かのように思った次の瞬間……シーザの着地先の地面から地響のような音が鳴り爆発的な加速で再びビクターに迫るっ。
「猟剣の牙爪ォォオッッーー!!」
声を張り上げたシーザは逆手に持った双剣を同時にクロスするように斬り上げる、およそ一本の剣では防ぐことは不可能な双撃を此処ぞというタイミングで放つ。シーザ自身の速さと剣速が乗った斬撃は伸びるようにビクターに迫るっ。
「ーー追黒ッ!」
ビクターもシーザの技に呼応するように何かを呟いて次の瞬間には数メートル先の別の場所から重い大きな音がした。
さっきまで2人が居た場所には誰もいない……遅れて追いかけるビクターの灰黒の光の方へ視線を送る。
『ーーぅうっ……ぁああああああぁあああああああああああああああっっっっ!!ーー』
その断末魔の上げたのは…………
……シーザだった。
「すんでのところで急所をずらされたか……さすがだが、この辺りが限界というところだろう」
ビクターの話す先のシーザの左肩には痛々しく剣が刺さり、背に面している木をも貫通している。
「ーーお姉ちゃああんっっ!!ああ!もうっ!!なんなのこの足のやつ!お姉ちゃんのとこ行きたいのに!行かないといけないのにっ!!……何とかしないと!何とかしないとっ!!」
ネイナは既に指先をボロボロにしながらも足を固定して抑えつけている魔法を叩いたり引っ掻いたりして焦りは極限に達している。直後に何か手がないか腰に下げたポーチをガサガサと探り出す。
隣のネイナも心配だが今はシーザが大ピンチだ。
ビクターはシーザに刺した剣を勢い良く引き抜く。
「ーーぁあああっ!!!!……ハァ……ハァ……」
ビクターに頭を垂れるように膝をつくシーザ。肩を貫かれた時に落とした双剣の右手側の一本をシーザは痛みで震える手で再び握る。
だがビクターがその剣を足で踏み、シーザはそれを持ち上げることが出来ず姿勢は低いままだ。
「…………双剣士シーザ、本調子ではないとはいえ良くぞこの私とここまで戦った……【死してなお、誇ると良い】」
ビクターはシーザの首に剣を添えて賛辞を送る。
……ヤバい。
【首を落とすつもりだ】
どこか……〈殺しはしないだろう〉と思っていた。
甘かった。
ここは私を知ってる世界じゃない。
私の知っている常識や感性をこの世界の人が持っているだなんてどうして思っていたんだろう。
後悔するような思考を巡らせる中で視界に映るビクターは剣を振り上げる。ポーチを探るネイナはそれに気付いていない……。
(ーー今にもシーザが殺られるっ!!)
『ーーーー待っ…………』
私が叫んだところで、ビクターは剣を振り下ろすっ。
「終わりだシーザ!」
『霊装騎纏……
……【奇竜花ッ!】』
シーザの放った声の直後、まるで金属が刃を弾くような音がした。




