不相応
魔法で固定された足をなんとか動かそうとしていたネイナはビクターの突拍子もない提案を聞いて動きを止める。そして……なんとも言い表し難い表情に変わる。なんというか……ガンを飛ばすいうか……いわゆる、〈ヤンキー〉みたいな表情になっている。
「今なんつったアイツ……」
……もはや声色が怒っている。
ビクターはそんなことはつゆとも知らずに話を続ける。
「君たちは王命の討伐対象を庇った段階で極刑は免れない……仮に私が個人的に君たちを見逃したとしても後ろの【魔導卿】が君たちを殺す……彼は私と違って国や秩序を守る側の人間だからだ。彼の立場を理解出来るし、それを止める理由を君たちに持ち合わせていない……」
提案の詳細を淡々と話すビクターを睨みながらもネイナは黙って聞いている。シーザも同様に聞いている。シーザに関しては息を整える間のいい時間稼ぎのように感じた。
「だが君を〈身内〉にしてしまえば庇ってやる理由としては十分だろう、全くの他人ではなくなるのならば君の妹も同じ理屈で庇ってやれるという訳だ」
「……あなたにメリットがあるとは思えませんが……」
「君が気に入ったのだ、シーザ・ガルバンドール……私の〈モノ〉になれ」
「…………」
……聞いてみれば、優位な立場で相手を思い通りにしようという話だった。脅迫もいいところだ。
「戴始爵の妻になれるのだ、悪い話ではないだろう?」
ビクターの言葉に血管が破裂しそうな表情で目を見開いて怒っているネイナ。その脅迫内容に自分が含まれいることが特に気に触ったのだろう。
「申し訳ありませんが……」
今にも激昂しかけているネイナを遮るようにシーザが返答した。
「相応しくないので釣り合いがとれません」
「……なんだ、そんなことか。私が良いと言っているのだ、問題はないだろーー」
『ーーいいえ……」
戴始爵の言葉を遮るシーザ。
『……【あなた】が【私】に相応しくないと言っているのです』
「ーーーーっ!!」
眉間にシワを寄せて凄むビクター。
「ーーぷっ!」
激昂せんばかりの表情だったネイナが打って変わって吹き出しそうになる。
ビクターの後ろにいるザビティ・グレンは顔を横に逸し、小刻みに揺れている…………笑っているのだろうか……。
「ーーフッ!フハハハハハハッ!!ーーー」
凄む表情から一変してビクターは声を上げて笑い出す。
「ますます気に入ったよ、シーザ・ガルバンドール。…………ならばもう問答はなしだ」
言葉の終わりを境にビクターは構え……場は少しピリつく……。シーザも呼応するように構える。
「手の内を全て見せたわけではないと、先に私に言っていたな……」
「………………」
「それは私とて……同じことだ」
ピリつく場の空気が更に重たくなるような感覚に襲われる。
『【霊装騎纏・黒】』
ビクターが灰黒の光を体に纏いだした。
『行くぞ……すぐに死んでくれるなよ?』




