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モリノレーコ





 上級騎士2人を戦闘不能にされた遠征部隊の兵士や騎士達は遠巻きにこちらを伺いつつも決して攻撃を仕掛けてくる様子はない。主力を倒されて戦意を失っているようにも見て取れる。


 

「目的は達したわ、帰るわよネイナ。そのバケモノから離れなさい」

「そんな言い方失礼でしょ!?命の恩人なんだよ!?」



 庇ってくれるのは嬉しいが私の見た目と無意識に垂れ流す殺意による以前に与えた印象からして致し方ないと思っている。お姉さんにとって私はネイナに危害を加えるかも知れない未知のモンスターなのだ。



「いいんですネイナさん、助けてくれて……来てくれただけでも本当に感謝しています」

「聞いた?お姉ちゃん!?さっき上級騎士と、この恩人のモンスターさんのどっちの方が悪者に見えるってのよ!?」



 見た目で言うと私の方が……と言いたいが、今は物腰や受け答えに関して言っているのだろう。



「…………」

「………………むむむ……」


 黙るお姉さんと謎に威圧を放ち唸って睨みを利かせるネイナ。



「………………っっはぁ……」



 睨みつけるネイナから目を逸して空を仰ぎながら諦めたように大きなため息をつくお姉さん。……そして、一歩前に出てキリっとした顔でこちらを見据えた。



「……私はシーザ・ガルバンドール。元騎士で、その子……ネイナの姉です。貴方のお陰で私は……私達姉妹は救われました。その際は無礼な振る舞いをしたことを深くお詫び致します。そして、改めてお礼を言わせてください……本当に……本当にありがとう」



 深々と頭を下げるシーザ。



「あ!その私は……も、も、森乃麗子と申します。えっと!……頭を上げてください……シ……シ、シーザさん……」



 急にかしこまった応対と慣れない名前呼びに動揺を隠せず、隣のネイナに目線をやると……シーザの歩み寄りを見てあからさまに満足気な表情を浮かべていて、それを横見に見るシーザは少し困ったような複雑な顔をしていた。



「…………ところで貴方は……モリノレーコ?さん?は、一体……何者なのか聞いても構わないかしら?私の知ってるモンスターの印象とはまるで違う……話をしていると本当に【人】のような感じ……」

「アタシもそれ聞きたい!あと、長いから〈レーコちゃん〉て呼ぶねっ!」



 姉妹は私に興味を持ってくれて、何より私がこの世界に来て、誰かに1番話したかったことを聞いてくれた。



 嬉しい……。


 さっきあんなに怖い思いをしたことが嘘だったかのように晴れやかな気持ちで満たされていた。



「わ……私は……主婦をしていて……あの!なんか急に……突然のこんな格好で…………」



 ついに念願叶ったこの瞬間だと言うのに上手く言葉が出てこない……。



「レーコちゃん、落ちついーー」

『ーーーー痛っっっってぇええええ!!オイッ!!あのバケモノ野郎はどうなったぁっ!?』



 大声を張り上げ、姉妹との会話に水を差してきたのは先刻ぶっ飛ばして気絶させたテイブだった。



「テイブ様、ここは撤退するしかないかと……」

「撤退ぃい!?何をバカなことを!この部隊には上級騎士が2人もいるだろうが!さっさと呼んでこいよっ!」

「…………」

「何黙ってんだよ!さっさ呼んでこいっつってんだろ!オレの父親が誰だか分かってんのかぁ!?あぁん!?」



 みっともなく大声で周りの兵士や騎士を威圧するテイブに1人が小さな声で応えた。



「……お2人は……そこと……そこです」



 2箇所に指を差してテイブの視線を誘導する。



「は……?…………?………………は?」



 戦闘不能状態で沈黙する2人の上級騎士を見て……先程とは打って変わって静かに錯乱した様子を見せる。



「一体誰が上級騎士をあんなにしたんだよっ!じゃあ誰がオレを守んだよ、なぁオイ!!なぁっ!!」



 再び、けたたましく騒ぎ出すテイブの視線にシーザが映る。



「ーーお前っ!」





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