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硬研斧槍





「ーーくっ!!ーー」








「ーーくぁっ!!ーー」








「ーーっんあ!!ーー」








「ーーっぐ!!ーー」





 私の声をかき消してレイスの身体を斧槍で何度も何度も叩きつける音が地鳴りのように森の響き渡る。アルピラの子供に負荷をかけないよう庇っているレイスの身体はその四肢で支えている。斧槍の衝撃を受け続ける度に四肢の先端は土を抉って徐々に沈み続ける。特に欠損した右腕右脚は切断面を地面についているため衝撃の都度、位置を変えて高さを維持にするのに気を張り詰めている。



「キュ……キュ…………」



 アルピラの子供の呼吸のリズムが変わった。

 


「凄いねぇ、この武器、硬研斧槍スキュロザードの一撃を何度も喰らって傷一つ付かないとは……逆に安心したよぉ、討伐対象の特級じゃないかも知れないと思って心配してたんだよ……っねぇ!!」



 巨体の騎士は言葉の終わりに勢いをつけて再び斧槍をレイスに振り下ろしたっ。



「ーーくっ!!ーーもう、やめて……この子が……保たない……」

「心配するなよぉ、そいつも一緒に痛めつけて殺してやるから……よぉ!」

「ーーっぐ!!ーーやめて……やめてください!」



 怖い……飄々となぶり殺しを楽しむこの男が……心底怖い。レイスの身体に依然としてダメージはないが、自身に向けられる悪意と敵意でこの男への恐怖は増大していく。



「お願い、やめて……やめてください……」

「この硬研斧槍スキュロザードが壊れたらやめてあげる……よぉ!!」

「ーーぐっ!!ーー」



 その言葉にすがるように武器が壊れるよう祈って衝撃を受け続けた。



 それから10数回程耐えつづけて男が口を開く。



「ホントに凄いねぇ、【まだ】全く歯が立たないじゃないのっ……さすが特級だねぇ」



 ……なに?今の言ったことにとても嫌な違和感を感じた。……【まだ】……って言ったの?どういう意味……?



「言ってなかったけど、この硬研斧槍スキュロザードはねえ、〈刃に衝撃を加えれば加える程に鋭く硬くなる〉っていう武纏魔法アーツがかかってる国宝級の代物なんだよぉ」

「ーーそ、そんな!ーー」

「まあそういうことだから、気長にいこうか……ねぇ!」

「ーーぐぁ!!ーー」



 物理的にも言葉でも絶望を擦り込むようなやり方に恐怖は限界に達した。パニックが起こしそうになったその瞬間にアルピラの子供の鳴き声が聞こえてかろじて正気を保った。



「キュ……キュー……」

「…………ごめんね……助けようと……思ったんだけど……」

「キュ……キュ……………フッ!フッ!フッ!フッ!フッ!フッ!フッ!……」



 急に鳴き声とは違う、身体全体で膨張収縮するようなテンポの早い呼吸音に変わった。



「ーーフッ!フッ!フッ!フッ!フッ!フッ!フッ……フッ!……フッ!…………フッ!……」

「……ああ、そんな…………どうしたらいいの…………」



 その呼吸音は数秒もしない内に間隔を広げて弱くなっていった。



「ーーフッ!……フッ!……………………フッ!

……………………フッ!…………………………フッ!……………………………………フッ!……………………………………フ………………フ………ッ」



 この子の心臓が今に止まろうしているのが分かる。



「……フ……フ……ッ…………キュー…………」



 最後に鳴いたこの子は、覆いかぶさって近くあった私の顔を……動物の頭蓋のようなレイスの頭部をペロッと舐めて…………動かなくなった。



「……………………ごめんね…………怖かったよね…………ごめんね…………守ってあげられなかった……………………助けてあげられ……なかっ……た………」

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」



 もう……いくら待ってもこの子の愛らしい鳴き声は聞こえてくることはない。



「そいつが死んだのは直接的にアンタのせいじゃないが、そいつに〈ごめん〉って謝るのいうのはあながち間違ってないかもねぇ……実際に致命傷を与えたのはウチの遠征部隊だが、討伐対象はアンタだ。

アンタがこの森いなきゃそいつも殺されずに済んだだろうにねぇ!へへ……へへへへ……」

「……………………」



 もう何一つ言い返す言葉も思い浮かばない……。ただ自身の無力さと哀しみで心が壊れてしまいそうだった。



「それじゃあ!第2ラウンドといこうか……ねぇ!」

「ーーっく!!ーー」



 男は再び斧槍を振り下ろし始めた。哀しみに暮れるあまり、この子の亡き骸にすら負荷をかけたくなくて必死にその場で斧槍に衝撃を受け続けた。

 また十数回ほど振り下ろした後に男は口を開いた。



「いやぁ……いい運動なるねぇ……でも、あんまり時間かけるともう1人の上級騎士がイライラしはじめるからねぇ、ちょっと【本気】出すわ」



 この男は喋る度に絶望を与えてくる。

 今までのは全力じゃなかったっていうの?それともハッタリ?……いや、この男はさっきのテイブのような小者とは違う……嫌な予感がしてならない。



 そして……思考の直後に聞き覚えのある言葉が聞こえてた。








「あんま使いたくなかったんだけどねぇ……これ…………










【ーー霊装騎纏キアグリフセスタぁ】」



 


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