誤算
ーー自己修復作業が止められない!ーー
これでは他の能力が使えず、この子を助けられない。
「ーーなんでっ?どうして!」
狼狽しつつも、必死に頭を働かせた。
ーーなぜだっ!?考えろ!ーー
……いや、ちょっと待って……そもそも動物の群れに驚いた時に私の集中力は途切れていたはずだったんだ。なのに今も修復箇所への樹力の流れは微量だが止まっていない。意思とは関係なく樹力が注がれ続けている。
そういえば……数時間前に自己修復を開始して間もなくして作業を一度中断すると途中まで修復していた箇所がボロボロと崩れて自己修復作業は振り出しに戻っていた。その時は修復率が低いと中断しても途中から再開出来ないと結論付けた。では、修復率が高ければどうなるのか、とも考えたのを思い出した……。
今が正にその答えだ。
ある程度の修復率を越えると自己修復作業そのものを中断出来ない。いや、そもそも自己修復という作業自体に【中断】がないのかもしれない。ただ、開始直後ならキャンセルが出来る僅かな時間が存在する……とか……?
ダメだっ……考えだすと切りが無い……。
「キュー…………キュー……」
弱々しい鳴き声を聞いて、焦りが加速する。
ーーっ早く……早くしないと……。
修復作業が中断出来ない理由を考えても現状が変わらないっ。
冷静になれ……必要なことを考えろ。
今、分かっている情報で出来ることをするしかない……それは……。
もう一度、集中して自己修復を最速で終わらせる。
でもそれはどのくらいかかる?
その間にこの子の体力は保つのか?
そんな状況で集中なんて出来るのか?
ネガティブな思考が自分の意思を弱くする。
ーーそれでもっ……。
「やるしかない……」
今にも終わりそうな小さな命の傍らで、私は今一度……自己修復に集中した。
「…………」
「………………」
【何か】……いる。
自己修復に集中してから数分も間を置かずにそう感じた。
森の地面は背の低い草、高い草、そして所々に苔が生えている。前方に見えるそれらが不自然に動いている……。
草は向き変えるように揺れ、苔は……まるで踏まれたように一部分が沈む。風では説明がつかない現象が複数、目の前で起こっている。だが気配もなければ音もしない……ただ現象だけが目に見える。
以前、透明で姿の見えない来客が来たことあったのを思いだした。
外套を羽織った透明な美少年…………。
……透明……まさかっ!
「……なんだコレ?これが特級モンスターか?手負いじゃねぇか」
「テイブ様っ……小声でないと消音魔法は効きませんよっ」
「魔術師風情が騎士の俺に指図すんじゃねぇよ!それに瘴気もなんも出てねぇコイツはただの雑魚だ、不意打ちなんていらねぇバレたって構わねぇよ」
正面の何もいないはずの空間から会話が聞こえたかと思ったらその直後に外套を脱いで姿を現す5人の来客が私の目に映った。
『よお……ぶっ殺しに来たぜ、バケモノ!』




