ビクター・ガロンズ
3日後……。
森の特級モンスター討伐遠征の出征式がアトワイズ城門前にて行われていた。
遠征部隊の列に見える顔ぶれはテンバリオン将軍配下の騎士がほとんどだった。
恵まれた大きな体に長柄の斧槍を使いこなす巨腕の轟天騎士アンクス。
刺突剣で敵を刺し穿つ瞬速の若き天翔騎士エルファー。
天の名を授かる上級騎士を2強とし下級騎士10名と魔術師5名、兵士20名を組み合わせた混成部隊。その混成部隊の列から距離を置いて囲むように討伐参加者の家族や関係者が出征式を見守る。
それらの間を縫うように歩き、列をなす部隊の顔ぶれを今一度確認したが、その中に【例の戴始爵】の姿は見当たらない。私の話では戴始爵様の興味に届かなかったようだ。少し……安心したような……残念なような……複雑な心持ちではあった。
得体の知れない不気味さを持つ【森のレイス】と【血の選定者】と呼ばれる戴始爵、ビクター・ガロンズをぶつけてみたいとも思う自分がいたからだ。
それはそうとアンデットカテゴリーの特級モンスター相手にこの編成と人数は過剰戦力に思えてならない。テンバリオン将軍配下の上級騎士の実力は粗が目立って癖の強い者ばかり。下級騎士に至っては爵位を持つ親のコネや権力や金で騎士の名を授かった実力の伴わない偉そうな小僧がいる始末だ。誰かが足を引っ張って部隊が瓦解する可能性も想定できる上に今回の討伐モンスターはただの特級クラスとは明らかに一線を画す。
「ただでは済まないだろうな……」
つい口に出てしまった言葉を言い捨てるように出征式の終わりを待たず執務室兼自室へ戻った。
「失礼を承知で勝手に待たせてもらったよ?グレン殿」
部屋に戻るなり、そこに居たのは【例の戴始爵】だった。
「たっ……戴始爵様!こ、これはお待たせしてしまったようで……御用件を伺います」
「うむ。以前の話の件なのだがね、覚えているだろうか?」
「森の特級モンスター討伐の件ですね、先程出征式を見て来たところです……戴始爵様は今回お断りになったんですね」
戴始爵は来客用の席から立ち上がり咳払いして少し間を置いた。
「いや私も討伐に参加することにしたのだよ」
「ーーっ!なっ!?」
「そこでグレン殿にお願いがあって今日は伺ったのだ」
戴始爵は驚き立ち尽くす私にツカツカと近づき、そのお願いとやらを話し始めた。
「部隊が討伐対象のいるとされる森に着くまで大体5日ほどかかるらしいのだが……5日後に私を転送魔法で現地に送って欲しいのだ」
……そうきたか。
「……それは構いませんが転送先があまりに遠い場合、ある仕掛けをする必要がーー」
「転送石だろう?部隊に選抜された魔術師の1人に持たせてある。これで問題はないだろう?」
「ええ、そうですね」
調べはついていて、おまけに手配済みというわけか……。
「では5日後にまた伺わせてもらうよグレン殿、……ああっ、もし忙しいのであれば転送魔法が使える別の者を紹介してくれても構わないが……」
「いえ、私ザビティ・グレンが責任を持って戴始爵様をお送りさせていただきます」
「それは安心だ、助かるよグレン殿」
「戴始爵様、不躾ながら……その際に同行させていただいてよろしいでしょうか?」
「おお!もちろん構わない!【魔導卿】と呼ばれる国家最強の魔術師の実力は私も気になるところではあったのだ」
「戴始爵様のお力に比べたら些末なもので御座いますので」
「謙遜されるなグレン殿……では私はこれで失礼させてもらうよ」
元々固い表情の戴始爵だが、こころなしか上機嫌で部屋を去っていった。




