リスク
ーーまた彼女が何か唱えたっ。
確実に捉えたと思って出した木だけが眼前にあり、彼女の姿を見失った!感覚共有した地面にも気配はない!……つまりーー
「ーー上っ!?ーーがぁっっ!!ーー」
僅かな思考の直後に頭上から大きな衝撃を受けた。レイスの頭部は轟音と共に地面にめり込み沈む
。
「……もう……立つなっ!……ハァッ……ハァッ……ハァッ……」
首から肩辺りまで地面に埋まりながらも彼女の疲弊仕切った声が聞こえた。とんでもない速さと衝撃……今の一撃は本当に全く見えなかった……。でも……それでも私にダメージはない。
両手を地面に立てて地面に埋まる顔を土を掘り散らしながら起こした。
「ーーっだは!!」
「ーーーーっっ!!?このっ!バケモノぉおおっっ!!ーーーー」
立ち上がる私を目の当たりにして驚愕して後ろへ距離を取る彼女の耳や鼻や口から出血しているのが見える。……やっぱりキア……なんとかという魔法のような身体能力の向上にはリスクがあったんだろう……そうでなければ、彼女は最初から出し惜しみなく使っていたはずだろう。急激な身体能力の向上の代償に彼女の身体が悲鳴を上げてる。……もう長引かせるわけにはいない。それに戦闘用に木を操るのも少し慣れてきたところだ。
「そこを……通してもらうわ……双剣士さん」
そう言って彼女の後ろに見えるネイナを目指して歩みを進めた。そして歩きながら彼女の足元に木を生やした。
彼女は軽々とそれを避ける。速すぎて……避けたように見えたというよりは既に消えていた。それでも微かな彼女の動きの気配を辿って次から次へと木を生やしていった。とうに二桁は越えたであろう生やした木は確実に彼女の視界を悪くする。更に木を生やして自らは歩みを続ける。さっきまでとは森の景色が変わり始める。不揃いで不気味な曲がり方や長さの木が不自然な間隔で無数に生え続ける中、ネイナとレイスの直線上には木が生えておらず……まるで道のようになっていった。
そして彼女の気配を辿りながら待った……彼女が攻撃に転ずる前のピリつくような一瞬の感覚を。
「……ハァッ……ハァッ……ッッ…………スーーッ……」
感覚共有した木々を通して彼女の息づかいを感じる。
……そろそろ……
ーー来るっ!ーー
風を切って動く気配、そして空気がピリつく。
「ーーーーハァアアッッッッ!!!!ーーーー」
「ーークッァ!!ーー」
目の前の地面から巨大な何かが落下したような地響きと衝撃が起こった。それが彼女の踏み込みだと認識した時には既に彼女の鋭い刺突をレイスの胸に喰らっていた。それをノーガードでモロに喰らって後方に吹っ飛ばされるところだが……私は……
……あらかじめ予測して策を講じていた。
「ーーーーっバカな!?ーーーー」
「ーー今度こそ……捕まえたっーー」
鋭い武器を突き伸ばした彼女の右手首を私が自らの手でガシッと掴んだ。




