強行手段
村娘を妹と言った彼女はとんでもない速さの勢いのまま低い姿勢で跳び、両手に振りかぶった2本の武器で全体重を乗せた一撃を私の首の下……人で言うところの鎖骨部分に喰らわせた。
「ーーーーぐっは!!」
視界は大きく揺れ、身体をコの字にして吹っ飛んだ私は数メートル後ろの木に背中を強打する。
木は衝撃により葉を散らす。その視界の奥に見えるのは着地も考えずに渾身の一撃を放った彼女が地面にドシャっと落ちる様だった。
彼女はすぐさま立ち上がり、妹を背にして私との間に入るように武器を構え、鋭い眼光で私を睨みつけながらその妹に声をかける。
「ーーネイナっ!!立ってネイナっ!!ーーネイナっっ!!ーー」
私の動きに警戒しながら妹の安否を確認する彼女の右腿には何故か銀のスプーンが刺さっていて、ほどなくしてカチャンッと地面に落ちた。血の付いた柄の部分は傷の深さを物語る。すこぶる調子の悪そうな彼女の様子は腿の傷だけが要因ではないように思えた。
血色の薄い顔色。
今にも閉じそうな瞼。
冷や汗。
そして、ふらつく足取り。
いずれもレイスの殺気のせいなら心苦しいところだ。
妹が気絶しているだけで特に目立った外傷がないことを確認すると彼女は武器を構え直して臨戦態勢になった。
「……フーッ!……フーッ!……フーッ!……フーッ!」
荒く乱れた息遣いする彼女の眼光はなおも鋭い。気絶した妹を抱えて逃げることは現実的ではないと判断した彼女はレイスを撃破、もしくは撃退する姿勢を見せる。妹の身の安全を最優先にするであろう彼女ならレイスの私が退けば、あえて追ったりせずにこの場は収まるはずだ。こちらとしてもそうしたいところだが、今回だけはそうもいかない。
こんな私を頼って来てくれた村娘……ネイナという子の願いをまだ叶えてあげていない。おそらく……この機を逃したらもうネイナに会うことすら難しくなるだろう……目の前の双剣士がそれを許すはずがない。当然、事情を説明しても聞く耳を持たないだろう。
故に強行手段に出る。
「そこを通してください。その子に用があります……」
そう言って歩き出した瞬間に彼女は持ち前の俊足で距離を詰め、仕掛けてきた。
「ーーーーハァッ!!ーーーー」
2本の剣で繰り出される斬撃を自己修復したばかりの爪で弾くが、手数が多いため幾つかの斬撃はレイスの身体を僅かに傷つける。だがそれもレイスの歩みを止めるほどのものではなかった。
ゆっくりだが確実にネイナに近づいていく。
「ーーーー止まれぇぇええええっっ!!!!」
猛攻する彼女は更に剣速を増していく。もはや、爪で弾きことを諦めて両手はガードに徹した。猛攻の衝撃はレイスの足をふらつかせ、ネイナへの歩みを確実に遅らせるが、それも時間の問題だった。
ネイナが望む植物……【ぎんせん】の詳細が書いてあるであろう本をネイナの手から拾える距離にまで来たその時……これまでにない圧を全身に感じた。
『ーーーー霊装騎纏・白ッ!!!!ーーーー』
「ーーーーがっあぁっっ!!!!ーーーー」
彼女の言葉が聞こえたのと同時に視界が激しく揺れ、身体は初撃を遥かに上回る衝撃を受けて後方に吹っ飛んだ。後方の木を破壊して飛んでいき、その更に後ろの木に激突し幹を抉ってレイスを止めた。
「ーークッ…………なっ!?」
ーーーー何が起こったっ!?ーーーー




