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自己修復




「あのババアはどこ行ったんだよっ!家事もやらねぇで何日も何してやがるっ!帰って来たらぶん殴ってやるよ!マジでクソがっ!」



 不意に聞こえてくるその声の主は……私の息子だった。

 また元の世界の自宅リビングを俯瞰で眺める夢を見ているようだ。


 以前見た状態よりも更にゴミや衣類が散乱しているリビングには夫の姿はなく、息子は私の財布からお金を抜き取ろうとしてた様子だったが満足のいく額が無かったため激昂している。初めからこんな子だったわけじゃない……自分なりに優しい人間になってくれるよう愛情を持って接していたつもりだった。それを私を下に見て召使いのように扱う夫が自分と同じ事をしても良いと息子に入れ知恵しだしてからどんどんと歪んだ人間になっていった。自分より下だと思った人間を蔑んでもいいと考えるようになった息子には母親の言葉はもう届かない。


 そのまま身体だけ成長した結果、夫自身ですら手がつけられなくなり避けるようになったのだ。だというのに「お前の教育が悪いから」と外で息子が悪さをする度に母親の私を責めた。



 これが元の世界で私のいた場所……そこに帰るための手がかりを見つけるためにレイスというバケモノの姿で戸惑いながらも足掻いている。



 ……でも、私は本当に帰りたいんだろうか。



 ……帰るべきなんだろうか……自分にとって正しいのかどうか……それが分からなくなってきていた。








 ーーーーっっ!!ーーーー



 不意に目を覚ました。



「気分……最悪……」



 あまりにも目覚めが悪かったのでつい口に出る。

 自分で作った鳥の巣から仰向けに寝転がった視界に映る空にはまだ星々が輝いている。まだ夜は明けていない……。朝までの時間をどのように使おうかと考えていた時……ずっと後回しにしてことを実行することを思いついた。



 両腕の修復だ。





 さっそく仰向けになったまま、欠損部分から同じ種類の木が手の形で伸びるようなイメージで気を集中させた。すると、欠損部分が浅緑に柔らかく光出して修復したい箇所が半透明にうっすら輪郭を現す。……もの凄くゆっくりだが修復している。



「おお!凄い凄い…………って、あ!ーーえっ!?」



 思わず喜びに声を上げた次の瞬間、空が少し遠くなって背中に大きな衝撃を感じた。



 一瞬、何が起きたが分からなかったが簡単に言うと…………落ちた。



 かまくらハウスの上に作った鳥の巣に仰向けなっていたはずのレイスの身体は地面に落下していた。周りを見渡すと作ったはずのかまくらハウスも鳥の巣も見当たらない……。作ったはずの草のベッドも簡易的な椅子も……何もない……。



「これは……一体…………」



 レイスの身体を修復し始めた途端に自身の能力で作った他の木々が地面に引っ込んでしまったのだ。しばらく……この現象に関して仰向けのまま黙して考えた。







「あ…………もしかして……」



 ある1つの仮説を立てた。





 それは……


許容量を超えたのではないか


というものだ。



 家やマンションなどの一室で電子レンジやドライヤー、テレビ、pc、クッキングヒーター、炊飯器などの家電を複数同時に使用するとブレーカーが落ちるように【自己修復】がレイスの力の許容量を超える要因の一手になった、と考えた。


 実際、【自己修復】を試みて感じたことがあった。

 針に糸を通すような集中力を長時間にわたって要する上にレイスの何かを……どんどんと消耗している感覚があった。

 植物を……木(樹)を作り操る力、その源たるレイスの力……仮に【樹力】とでも言っておこうか。


 【自己修復】は他の能力を同時に行使出来ないほどに樹力を喰うようだ。





 考察も一段落して身体を起こして歩きだした。何もない場所にポツンと居るのも落ち着かないので1番近い手頃な木に寄りかかって腰を下ろした。



「ふぅ……では続きを……」



 こんな深夜の森の中なのに月明かりが差して意外に見通しが良いんだなぁ、なんて思いながら……もう一度【自己修復】を開始した。



















 …………3、4時間ほど経ったろうか、両腕の修復が殆ど終わって残すは爪先だけとなった。腰を下ろしてうつむきながら腕をだらんと伸ばす姿勢から見える視界に……人の足のようなものが入ってくる。



「あの……【森のレイス】……さん……?」



 可愛らしい女の子の声がした。



 


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