賭け
「うーーーーん…………」
「なんかない?最近、村で起こったおかしなこと」
視線を落として記憶を探るラングくんに神経を集中した。
「あ、僕は見てないけど……木が急に生えてきたって誰かが言ってたよっ!」
ーーっきた!
「詳しく教えて!?」
食い気味で話を急かすアタシにラングくんはちょっと嫌な顔をした。
「えーっと……犬のモンスターが村を襲ってきたときに木が足元から生えて体を持ち上げてくれた、っていう話なんだけど……その騒ぎの中で大きな影が動いてるのを何人も見てたんだって」
「大きな影?なにそれ?」
「わかんないよ!」
大きな影……もしかして、それが奇跡が起きたことに何か関係が……もしくは起こした本人……という可能性も……。
「最近村に新しく来た人とかはいない?魔法使いーとか魔女ーみたいな?賢者ー?植物学者ー?みたいな感じの」
奇跡を起こしたであろう人物の勝手なイメージで目ぼしい来客がなかったかを聞いてみた。
「魔法使いとかは知らないけど、めちゃくちゃムキムキのおじさんに出会ったよ……おっきな剣持ってた!」
「ムキムキのおじさん……?」
「森の奥で【森のレイス】が出て、逃げてる途中でムキムキおじさんに出会って、退治してって父ちゃんが頼んで行ってくれたおじさん」
「ーーちょ!待っ!」
なんか知れっと凄いこと言ったな!この子!
【森のレイス】?
【森のレイス】って言ったの!?
「【森のレイス】……ってあのおとぎ話の?」
「うん。めちゃくちゃ怖かった!それに喋ってたよ!」
……人語を話すモンスター。お姉ちゃんが遭遇したって言ってたような……。
【森のレイス】……木……操りそうじゃない?わかんないけど……植物……生やしそうじゃない?わかんないけど。
わかんないけど……本命かもしれない。いや、むしろコレに賭けてみるしかない!
会ってみようっ!!
「何処にいたの!?レイスっ!」
「ネイナちゃん……」
「何!?」
「……そろそろ水汲みたいんだけど……」
自分の要件だけを優先するあまり、目の前の子が困った顔をしてるのに今やっと気付いた。
「ごめんごめん!一緒に家まで水持って行ってあげる……だから、どの辺にレイスがいたのかだけ教えて?お願い!」
「うん、いいよ。……えーーっと…………ーーーー」
ラングくんはかなりザックリとした方向を教えてくれた、村から南東に位置する方向をしばらく行くと誰も住んでいない廃屋があって、そこに向かう途中で遭遇したらしい。その廃屋はオバケが出るだとか子供を食べる魔女が住み着いているんだ、などと子供達が危険な森の奥へ行かないように作り話で怖がらせられた事があった懐かしい場所だった。
必要な情報を聞いた後、ラングくんと水汲みして家まで送っていった。その後、レイスのことでお姉ちゃんに話したいことがあったので家に帰ろうとしていたときに村長の奥さんにバッタリ会った。
どうやら、お姉ちゃんは村長さんの用事で騎士としてお手伝いに駆り出されているのだそう。なので、「家で待っているので用事が済んだらすぐに帰ってきて欲しい」と奥さんに言伝をお願いしてから家に戻ってお姉ちゃんを待つことにした。




