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奇行




 川に着いて浅瀬の際で低い姿勢になってバシャバシャと豪快に顔を洗い、最後に両頬をパシん!っと叩いて気合いを入れた。



 「ふーーーーっ……」


 

 冷静に考えを整理する。

 

 奇竜花レシベルの花粉による硬化は体内の免役から引き起こる過剰反応によるものではなく、奇竜花レシベルの性質による、成長の過程とも言えるもの。だから銀汕ぎんせんの蕾に内包されている雫に治療の可能性があるという話は大いに支持できる。その雫は銀汕ぎんせん以外の植物の成長を止め、その働きを組織ごと破壊するからだ。


 問題はその雫が簡単には手に入らないこと……お姉ちゃんが話してくれた手に入らない理由はもっともで覆しようのないものだった……てゆーか、お姉ちゃん……自分のことなのに他人事みたいに可能性を否定して話して……なんか今更ムカついてきた。



 状況を整理したのはいいけども改めて打つ手がないことに現実逃避したくなる。辺りを見渡せば、青々とした植物はいくらでも生い茂っている。わずかな一帯だけでも、少なく見積もって5種類以上の植物が確認出来る。その中にたった1つでもいいから蕾の状態の銀汕ぎんせんがあれば………と、奇跡のようなことを願わずにはいられなかった……。



「あ!ネイナちゃんだー!」



 背後から声がした。聞き覚えのある子供の声だ。

 低い姿勢から上体を起こし膝をついたまま振り返った。


「ラングくん?」

「何してるのー?顔びっしょびしょだよー?」



 木こりの息子で村の年少さん、昔も今もたまに遊んであげている子だ。

 手には水汲み用の容器を持っている。



「1人で水汲みに来たの……?」

「そーだよー」



 昨日モンスター出たばかりなのに……。



「1人だと危ないよ……?」

「今、父ちゃんケガしてるから……」

「あ……そうなんだ…………偉いねラングくん」

「ネイナちゃんの方が偉いよ!」

「へ?」



 ん?何がだろうか……?



「みんながネイナちゃんの作った薬で良くなったって言ってたよ!ありがとう!って」

「そんな……たまたま特効薬に使う薬草が群生してるのを見つけて…………ーーーー」



 ーーっっ!!ーー



「ネイナちゃん?どーしたの?止まってるよ?」

「………………」



 完全に停止しているアタシを心配するラングくんをよそに黙して思考を続けた。



 その時は深く考えなかったけど、どうして民家の裏に本来あるはずのない薬草が群生していたの……?たまたま……で説明できる話じゃない。

 そういえば、あの診療所にいた重度の火傷を負ったおっさんには亜蓮草ジンタスが貼ってあった。……まるで摘みたてのような。でも亜蓮草ジンタスが採れるところは1番近いところでも馬で何日もかかる……。それに摘みたてだとしても……あそこまで状態のいい亜蓮草ジンタスなんて見たこともない…………こんなの……



……奇跡としか言いようがないじゃない。



 その奇跡がアタシの周りで……同じ村で……2回も起きてる。



「おーーーーい!ネイナちゃーーーーん!」



 ラングくんはあまりにも止まり過ぎているアタシの肩を揺らして何度も呼び掛ける。

 おかげで一旦、思考が中断した。



「……ラング……くん」

「ビックリしたよ!急に止まるんだもん!1分くらい止まってたよ!」

「ラングくん……あのさ……」

「……な……なに?」



 アタシの奇行に不安を隠せない表情でラングくんは身構える。





「最近、村で【おかしなこと】なかった?」















 



 




 


 






「……なんかネイナちゃん変だよ?ネイナちゃんがすごくおかしい!」

「…………ーーアタシのこと以外でお願いしまぁす!」

 

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