決意
「ハァ…………ハァ…………ッ……」
気付くと森の中を走っていた……。家を飛び出していた…………お姉ちゃんの顔を見ていられなくて……。
本当は……傷口の硬化した部分が擦れて痛いくせに……。
本当は……独特な香りのハーブティーがそんなに好きじゃないくせ……。
本当は……。
本当は…………死ぬのが怖いくせ……。
どうして平気なフリをして綺麗な顔で微笑うのよ。優しい声で話すのよ。
辛いって言えばいいじゃない……。
怖いって言えばいいじゃない……。
死にたくない……って…………
「……言えば……いい…………じゃ……っ……」
立ち止まって心の声が口に出る。
「アタシは……そんなに……頼りないのかな?……支えに……ならないのかな……?お姉……ちゃん……」
我慢していた涙が溢れて大粒の雫がぼたぼたと足元に生えている植物の葉を濡らしていた。
ボロボロに泣きながら昔のことを思い出していた。
まだ小さい時に村の男の子達にいじめられていたアタシをお姉ちゃんが助けに来てくれたことがあった。たった1人で自分より大きい体の男の子達をボコボコにしてやっつけてくれた。
その時はお姉ちゃんをかっこよくて強い勇者みたいだと本気で思っていた。
でも、その夜……お姉ちゃんはお母さんに抱きかかえられて声を抑えながら、それはもう酷い顔で泣いていた。お姉ちゃんが泣いている理由がわからなかったアタシは後でお母さんにこっそり教えてもらった。
理由を聞くと…………全部が、ただただ怖かったのだいう。
いじめを止めに入ったこと、男の子を殴ったこと、ケガを負わせたこと、その全部が怖い……。
復讐されるんじゃないか、家を燃やされるんじゃないか、家族に迷惑がかかるんじゃないか、暴力をふるった自分を妹や母は嫌いになるんじゃないか、村を追い出されたりしないだろうか、捨てられたりしないだろうか、その全部が不安だったと。
傍から聞けば突飛な理由かもしれないけど、お姉ちゃんはそれを考えれば考えるほど、怖くて不安でたまらなくて、ずっと心臓の音が責めるように鼓動するのが止まないのだという。
それなのにお姉ちゃんはアタシを助けてくれた。
とっても勇敢で……か弱くて臆病な心を砕いてくれた。
だから、お姉ちゃんはアタシが守ってあげるんだと子供ながらに思ったことがあった。
そして、それは今でも変わらない……。
絶対に諦めない。
最後の最後まで足掻いてやる。
諦めてなんかやるもんかっ!
「お姉ちゃんは……絶対にアタシが治す」
決意を口にした。
そのときにはもう大粒の涙は止まっていた。でも顔は涙と鼻水でグチャグチャだったので家に戻るまえに水汲みに村の人が良く使う川で顔を洗ってくることにした。




