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ちょっとデカい旅人




 診療所に着くなり診療医の先生にダンキュリーさんのところに案内してもらい、先生は忙しそうにその場を離れていった。案内されたベッドに横たわる男の上半身……特に両手から胸辺りまで大小無数の葉っぱが貼ってあって、葉と葉の隙間から痛々しい赤くただれた皮膚が覗く。葉っぱが火傷の処置のためのものだったと実際に見て初めて理解できた。



「はじめましてダンキュリーさん、私は騎士団に所属するシーザ・ガルバンドールと申します」



 男は上体を起こさないのか、起こせないのか視線だけをこちらに動かした。ずっと立って見下ろしているのも失礼かと思ったのでベッド横にある椅子に座った。



「アンタが……村長の言ってた双剣騎士シーザか……犬っころ共を片付けてくれたんだってなぁ……王都から遠い田舎の村へは騎士様は来てくれないと思ってたぜ」



 いきなり嫌味を言われるとは…………でもモンスター被害に対して国や兵士、騎士団に不満を持つ人に多いのも事実だ……致し方ない。



「ごめんなさい……でも、まずお礼を言わせてください……これまで何度も近隣の村をモンスターから守ってくれてありがとう、ダンキュリーさん」



 反論するでもなく深々と頭を下げる姿に男はそれ以上言及してくることはなかった。



「……で?アンタみたいな美人が俺に何の用だ?」



 ……美人……?……皮肉かしら?それとも初対面でいきなり悪態をついたしまったことに気をつかってくれたのかしら……?



「ガスター・ギルマークという男をご存知ですか?」

「俺が川辺で倒れている時に襲ってきたって奴のことか?悪いが知らねぇな……」

「誰かに命を狙われる心当たりは?」

「山賊やら野盗の類いには数え切れねぇほど恨みを買ってるだろうなぁ……もし残党がいたらの話だがな」



 やっぱり、この線からは大した情報を得られそうにないですね……。もっとダンキュリーさん自身のことが分かればいいけれど……。



「ちなみに川辺で倒れていたと聞きましたけど……何があったんです?」

「…………」



 男は記憶を思い返すように少し間を置いた。



「バケモノ退治だよ」

「バケモノ……?」

「おとぎ話に出てくる【森のレイス】を思わせるモンスターと戦ったんだよ……凄まじい殺気を放つ正真正銘のバケモノだ」



 ………………。





 ーーーーアイツだっ!



 森で出会った……人語を話すモンスター。吐くほどの殺気をあてられて全身の細胞一つ一つに死が迫るような思いをしたのを覚えている。



「どうした?顔色が悪いぞ?」

「い……いえ、続けてください」



 男は怪訝けげんな顔をする。



「続きなんてもんはねーよ、道連れ覚悟で挑んで気付いたらここに居たんだよ……葉っぱ付きでな、それだけだ」

「……その火傷は……その……森のレイスの攻撃によるものなんですか?」

「…………」



 即答しない……。それに急に話が雑になったような気がする……。



「これは手持ちの爆弾を至近距離で使った結果だ」



 ……道連れ覚悟で、とはそういう意味か……。

 このガタイの男が……爆弾を……というのも違和感がある……。何か隠している……?。



 いっそ、直接聞いてみようかしら……。



「何か……お話に違和感を感じます……。ダンキュリーさんは……何者ですか?」

「……何者でもねぇよ……ちょっとデカい、ただの旅人だ……」

「そう……ですか」



 葉っぱの上からでも分かる鍛え抜かれた肉体、何度も死線をくぐり抜けてきたような雰囲気もある……元兵士か傭兵ってところだろうけど……言いたくないことをこれ以上聞くのも失礼ね。


 そろそろ席を立とうとしたとき、バタバタと足音が近づいてきた。



「シーザ!話中にすまないね、警ら隊の方々が来たから村長からシーザを呼ぶように言われたんだけど」

「わかりました。すぐ向かいます」

「よろしく頼むよ」



 そして、先生はまたバタバタと足早にその場を去った。



「ダンキュリーさん、今日はお話をありがとうございました……それでは私はこれで」

「ああ……」



 その場と去ろうする足を少し遅くして振り返った。



「あ、1つだけ言い忘れていました、ダンキュリーさん」

「……?」

「戦ったりは……しませんでしたけど、私もその…………【森のレイス】に会いました、……両腕を失っている様子でした」

「ーーっ!…………はっ……死ぬ覚悟までして……両腕だけかよ……バケモノめ……」

「……それでは」



 静かに驚愕している様子の男をおいてその場を後にする。


 歩きながら脇腹の傷口を優しく手で抑えて、ゆっくり深呼吸した。


 

「ふぅ…………ネイナどこ行ったのかな……」



 帰ってくる、とは言っていたけどやっぱり心配になってきた。

 警ら隊への手続きや調書が終わり次第、ネイナを

迎えに探しにいこうと心に決めて診療所を出た。










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