わからん
「ああ……ダンキュリーさん、目を覚まされましたか……お加減どうですか……?」
元々、面識のある村長は顔を見るなり身体をきにかけてくれた。
「村長……悪いな、こんな格好でよ……例の犬っころの件は役に立てなさそうだ、誰か別のやつに……」
「その件は……昨日、襲撃があって……色々おかしなことがあったんですが……モンスターは双剣騎士のシーザが討伐してくれました」
「ーーお姉ちゃんが!?」
女はデカい声を上げて、村長を突き飛ばしながらバタバタとその場を去っていった。どうやらその【双剣騎士シーザ】とやらはネイナとゆう女の姉らしい……。
「村長……その色々ってのはなんだ?」
「それが……モンスター襲撃が思っていたより早かったので村人に被害が出たんですが……急に木が……生えてきて……村人をモンスターから一時的に引き離してくれたんです」
「……木が、急に?なんだそりゃ……?」
「私もよく分からないんですが、そのおかげで死者は出なかったんです」
「……そうか、なんにせよ間に合わなくて悪かったな。村長」
「いや、それは違いますダンキュリーさん。この村に来る途中に村の者に別のモンスター討伐を頼まれて向かってくださったことは本人達から聞いております。謝ることなんてありません」
今回の件より以前にもこの近辺に点在する村々を脅かすモンスターを何度か討伐していたことがあって、そのことに村長は恩を感じてくれているようで決して責めるような姿勢を見せなかった。
「それで……例の親子から頼まれた【森のレイス】とゆうモンスター討伐はどうなったんです?それにそのケガは?」
「村長……【森のレイス】っておとぎ話のモンスターのことですか?……そんなのいるわけないじゃないですか、ねぇダンキュリーさん」
急に話に入ってきた診療医は嘲笑する。この診療医をそのモンスターの目の前に放り投げたくなる気持ちを軽く抑えながら質問に答えた。
「……とんでもないバケモノだった」
「え……」
診療医は息を飲んだ。冗談ではない空気のようなものを感じ取ったみたいだった。
「……ダンキュリーさん、ではそのケガは森のレイスに?」
診療医が黙ってしまったので再び村長との会話になった。
「刺し違える覚悟で戦った結果……こうなったわけだ」
「……倒した……のですよね……?」
即答できずに、じっと村長を見た。
そもそも、どうやって川辺まで移動したのか……何故この程度のケガで済んでいるのか、何故身体中、葉っぱがベタベタ貼ってあるのか……。
視線を流して天井を見ながら大きなため息混じりにこう言ってやった。
「……わからん」




