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ツェザール公国



 勘違い甚だしい戦争のきっかけを失った将軍は不服そうに眉間にシワを寄せる。まだ諦めのつかない様子の将軍に仮の話をすることにした。

 


「仮にツェザールと戦争したとして……アトワイズが勝つ確率は極めて低い」

「ーー何をバカなことをっっ!!ツェザールのような小国に我が国が負けるわけがないっっ!!」



 頭に血を昇らせツバを飛ばし激昂する将軍。大きな声と剣幕に隣にいる弟子たち3人は身をこわばらせる。

 低脳なサルのように感情的な振る舞いをする愚かな将に丁寧に話を続けた。



「ツェザールの領土はアトワイズの半分かそれ以下です。兵士の数も同様です。ですがツェザールには

黒騎士【アリス・ウォーレン】がいます、彼女は強い。たった1人で万の兵にも勝るほどに」

「黒騎士……アリス……?」

「彼女に対抗できる者はこのアトワイズにはいません」



 感情のない口調で淡々話す私に将軍は息を飲んで質問してきた。



「生ける魔導教典とも呼ばれるグレン卿でもか?」

「……私でも、です」


 まあ実際に相手にしろと言われれば刺し違えるくらいの策は打てるつもりだが……あえてここでは言うまい。



「だっーーはっはっはっは!!グレン卿が負けるわけないだろう!悪い冗談だ!」

「……いえ、冗談では……」



 都合の悪いことは理解の外か……つくづく残念な頭をしている男のようだな。

 もうこの話をしても時間の無駄だ。



『テンバリオン将軍!テンバリオン将軍!!』



 将軍を呼ぶ兵士の大きな声と共に鉄製のグリーブをつけた足音がここへ近付いてくる。



「テンバリオン将軍!ここにいらしたんですね、国王陛下がお呼びです!」

「兄上がっ!?……分かったすぐ行く。ではまたなグレン卿」



 軽く会釈をして将軍が去るのを見送ると弟子達3人は大きなため息をついた。将軍が去って緊張が解けたのだろう。



「あたし、アイツ嫌い」



 メリーはハッキリと物を言う。



「ハッハッハ……一応、目上の人間だから《アイツ》だなんて言うものではないよ?メリー」

「…………」



 口元を歪ませ不貞腐れるメリーは返事をしない。

 そんなメリーの頭をポンポンと撫でた。そして仮面ごしの口元に手を添えて、ほんのちょっとだけ小声(余裕で3人に聞こえる声量)でメリーに耳打ちした。



「でも奇遇ですね……私も《アイツ》嫌いなんです」



 仮面の下で少しいじわるに笑っている私の表情が、まるで見えているかのように弟子達も釣られて笑いだした。


 


 

















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