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ザビティ・グレン


 床に大きな魔法陣が描いてある天井の高い大きな庭園で見慣れた弟子達3人が何やら言い争っているのが見える。ここはアトワイズ王宮の転送陣の間だ。



「ーー早く!師匠を助けに行かないとっ!ーーちょっ!離してっ!」

「魔力が枯渇してフラフラの状態で何が出来るんだ!落ち着けメリー!セザンも止めてくれ」

「すまん、ちょっと腰が抜けちまってよぉ」



 どうやら私は無事に帰って来られたようだ。私の使うゲートは気配の感知を遅らせる効果があるため弟子達はまだこちらには気付いていない。



「大きな声で騒ぐものではないよメリー、私は無事だから心配ーー」

「ーー師匠っ!」



 私の喋り終わるのを待たずに大きな声で私を呼び、こちらに駆け寄ろうとするメリーだったがフラフラで足がもつれてドシャっと目の前で転倒した。その後ろで男の弟子2人は呆れたように安堵する顔を見せた。少し間を置いてメリーは息を整えた。



「ところで御子息はどうしたんです?」

「バカ息子ならビスタバンの者がお付きの護衛共々、医務室へ運んでいきましたぜ」

「そうですか、ではこれで私の出した依頼、もとい課題は達成ですね。3人ともお疲れ様でした」

「バカ息子の為に特級モンスターと対峙するのはもうこれっきりにしてほしいです、ザビティ師匠」

「ホントよね!あんなの相手にしてたら命がいくつあっても足りないわ」



 そう言われて、少し沈黙した。

 あの特級モンスターのことを考えていた。



「師匠?」

「ああ、すまない。あの特級モンスターのことなんだけどね、あまりにも異質過ぎて私にもよくわからないんだ」



 過去に確認してきた特級モンスターの強さならメリーを含む3人だけで対処出来ないレベルではないと踏んでの依頼のつもりだった。

 メリーは気性が荒く直情的で口も悪いが魔法に関しては非凡な才能の持ち主だ。

 私以外に空間魔法"ゲート"を使える希少な人材でもある。とんでもなく魔力を消耗し、極めて扱いが難しい魔法故に習得した者は国内でも数人しかいない。

 弟子の中でもズバ抜けて優秀な彼女だが、あの特級モンスターを前にすればその他大勢と同じだろう。



「ところで、あの特級モンスターの"両腕"は3人でやったのかい?」

「あー!あの腕は……オレがぶった斬った!」

「バカ言わないでセザン!あれは最初から!だよね?イーデン!」

「ええ、最初からでした」



 イーデンとメリーは呆れ、セザンは私から視線を逸らし、目を泳がせた。



「まあ3人とも無事で良かったです。今後あの特級モンスターの件は私が引き継ぎますので、各自絶対に手出ししないでください、特にメリー」

「なんで私にだけ言うかな…………いや、さすがに私でも再戦しようなんて思わないから」



 負けず嫌いなメリーでもさすがに今回の相手には堪えたようだ。




『ここにいたのかグレン卿!探したんだぞ』



 勢い良く転送陣の間に入ってきた声の主に3人は視線をもっていかれた。



「これは……テンバリオン将軍、どういった御用向きでしょう?」

「戦争だ!また手を貸してもらうぞグレン卿!」


 戦争?そんな話が出ているなんて聞いたことがない……。隣にいる弟子たち3人も初耳だとゆう表情で顔を見合わせている。



「えっと……どこの国とです?」

「ツェザールだ!なんでも交易品の値段を以前の倍にしてきたらしいじゃないか、これを許せば奴らは付け上がる!我が国を舐めているとどんな目に合うかわからせてやらんとなぁ!」

 


 全く……一体何がどうゆうふうに伝わったかは知らんが、何でも戦争の引き金にしようとするこの将軍には困ったものだ。



「将軍、その値段は通常の相場です。友好国としてツェザールが破格の安さで取引してくれていた期間が終わっただけです」

「そ、そうなのか!?いや……だがしかし……」

「これは国の貿易担当も承知していることです」



 一国の将がこの程度のことも知らないとは……この人は本当に戦争をすることしか考えていないようですね。この国の兵士達は大変不憫です。

 ……本当に。

 



 


 



 








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