絶瘴石
一体何しに来たんだろう、この人達。
手柄を立てようとモンスターに挑み、秘策の絶瘴石とやらは効力を発揮するもすぐに壊れて直後に気絶って、誰がどう見ても酷い有様だ。
彼らは話では私の事を特級モンスターだのアンデッドカテゴリーだのと言っていた。モンスターに対して階級やカテゴリーを定める組織や機関があるのだろうか。そこには彼らが預言者と呼ぶ人も所属しているのだろうか。
すべてが推測の域を出ない考えの答えを誰かに聞きたいところだが、この無尽蔵に垂れ流す殺気をなんとかしないことには他者との意思疎通は困難を極める。
そこで注目したのが目の前で気絶してる坊っちゃんが持っていた絶瘴石なるもの。
その石の効果によるステルスと殺気の無効化はおそらくレイス自身の弱体化による影響だと思われる。この絶瘴石の効力こそレイスが他者とコミュニケーションを取る手段になると期待したが、見て取れる問題が一つ。容量だ。
効力には限りがあって無効化する対象に応じて消耗し、色が変わったりしていたのが消耗量の目安なのだろう。彼らが私を認識してレイスの殺気が影響する条件が整ってから絶瘴石が割れるまで2分も保っていなかった様子からレイス対しては実用的ではないのは明白だった。
この絶瘴石にもっと上位に位置するものがあればと考えたが今そこで割れている絶瘴石こそ希少で最高品質である、みたいなことを坊っちゃんが言っていたのを思い出した。残念だが絶瘴石は問題解決の一手になり得ないようだ。知識としてだけ蓄えておくことにしよう。
「さて……どうしようかな」
絶瘴石の考察を終えて悩まし気に独り言をこぼして気絶する2人を見つめたが、その独り言は2人の処遇に対して言ったことではない。
実は……今回の来客は気絶している2人を合わせて合計4人。絶瘴石の効力でレイスの探知能力にも影響が出ていたのか、今なら正確な人数がわかる。1人は気絶している2人の後方の見える木の太い枝の上に。もう1人は自身の左斜め後方、正確な位置は不明、距離は50メートル以上は離れている。木の上にいる1人は目の届く距離にいるものの姿が見えない。不思議な力でも使っているのだろうか。居るのは分かるのだが、うっすら輪郭がボヤける程度にしか視認出来ない。
「さて……どうしようかな」
思わず同じ独り言を2度言ってしまった。
相手に動きはない。なんらかのアクションがあるまで待つことにしようと思った矢先に事は起こった。
自分の頭部に勢いのある何かが当たり、跳弾して落下、わずかに地面の土をえぐった。左斜め後方の1人からの狙撃されている。続いて胸、腹、足と合計4発の狙撃を微動だにせず喰らってしまった。普通の生物なら頭部への一発で終わっていただろうが、レイスの身体には一切ダメージはない。手応えのない頭部への一発の後は弱点を探すかのように3発、明らかに動揺が見てとれた。だが、正確な射撃には少し驚いた。とゆうより疑問に思う点があった。ここは森の中だ。離れた場所から狙撃するには木々が多すぎて射線上に被ってしまうはず。弾丸が木々を避けたとでもゆうのだろうか。そもそも、こちらの位置を正確に把握しているのも謎だ。謎といえば、木の上にいる姿がハッキリ見えない来客も未だアクションがなくて目的が不明だ。少し距離があるせいかレイスの殺気で気絶ほどの影響が出てないようなので話かけてみる。
「あのー……」
私はその2文字を口にした瞬間、木の上の来客は姿がハッキリ見えるようになってドサッと落下した。
気絶している。
「……はぁああ……」
ため息も出る。
多少距離があってもレイスの殺気の影響を浴び続けた木の上の来客は声を掛けたタイミングで気絶。またも会話は不成立に終わった。とりあえず、受け身も取れず木の上から落ちた来客に大きな怪我がないかだけ近くまで行って見ることに。すると、近づくなと言わんばかりの狙撃を受ける。だが、先程とは違って精度が低くかすりもしない。何発かのお粗末な狙撃を確認した後、狙撃手はその場から離れ、レイスが探知出来ない距離へ撤退していった。




