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殺気



 まさに答えだった。

 レイスの姿になってから他者とのコミュニケーションが不自然なほどに取れないとは思っていたが、まさか自分から殺気が出ていたなんて思いもしなかった。


 危害を加えない、という私の言葉を誰も信じないのもそのせいだ。爆発男やこの女双剣士からしてみれば言葉で危害を加えないと言っておきながら銃口を向けて撃鉄をおこしているようなものなのだろうか。


 「ぅうぇええ……ハァ……ハァ……」



 女双剣士は顔色を真っ青にして吐物を地面に撒き散らした。この姿を見るに、私の放っている殺気は相当なものらしい。逃げればいいのに、とも思うのだが爆発男も女双剣士も相当な使い手であるからこそレイスの殺気に対して倒すことにしか活路が見出せなかったのかも知れない。最初に出会った親子は逆に戦う選択肢が無かったからこそ逃げてくれたのだろう。

 そして、ガスターと呼ばれた柄の悪い男に関しては……拘束されてレイスが徐々に近づくてくる足音を聞かされながら女双剣士が吐くほど殺気を浴び続けたのだ。そりゃあ、泡吹いて気絶もするのも分からないでもない。

 女双剣士の教えてくれた事実に色々なことに合点がいってスッキリしている自分とは逆に、瞬きすら出来ない程に神経をすり減らしてこちらを凝視している彼女は実に不憫だ。


 

「では……これで……失礼しますね……」


 

 まるで寿命が縮まっていくような様子の彼女にこれ以上レイスの殺気を当て続けるのは良くないと思いその場を去った。


 「……クッ……こんな規格外の化け物が……いるなんて……ハァ……ハァ……」



 去り際に聞こえた彼女の言葉に自身の存在の歪さを改めて実感した。






「ーークソっ!!この木はどうなってんだ!!早く下ろしてやらねぇと手当ても出来ねぇっっ!!」



 村人の声が聞こえる。だが、自分の周りには誰も居ない。まだ村に向かって森を進んでいる最中だった。もはや、耳が良い。という範疇でないのは明らかで、これもレイスの能力であることは容易に想像できた。

 とにかく、村人の言動から村に生やしてきた木に困ってるみたいなので村へ急ぐことに。能力の仕様に関しても少し検討がついていたので、それを証明、検証するためにも村へ向かった。


 森を抜けて村に生やした木が見えるところまで来た。誰かに見つかると面倒なので森の入り口の木の影に身を隠して立ち止まった。早速、木を引っ込めることに。



「木がっ!!勝手に地面に引っ込んでいく!!」

「この木は一体何だったんーーーー



 木を引っ込め終わると聞こえていた村人の声が途端に聞こえなくなった。


「……なるほどね」


 どうやらレイスの生成する木は聴覚がある。

 河辺まで爆発男を運んだ時、離れた村人の声が鮮明に聞こえたのはその近くに生やした木が耳の役割を果たしていたからだ。



「……つくづく便利な化け物ね、私は。」



 次々と明らかになっていくレイスのぶっ飛んだ能力に思わず口から皮肉が溢れた。

 




 


 








 


 

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