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ブクマ、評価ありがとうございます!

ランキング上がって来ててビビっております。

モモンガ人気スゲェ…!

今回王子の回想で鬱陶しいです。



クリストファー殿下が執務室に戻ると、目を通さねばならない書類が山積みになっていた。


ひとつため息をつくと、机に向かい書類を手に取る。

王太子の仕事の範疇がどこまでなのかと考える事もあるが、外交や交渉など相手の腹を探り合うような事は自分には向いていないので弟の裏方に徹している。弟は交渉人としては優秀だが、どうも数字や書類に弱い。こちらに有利な契約をしたとしても、契約書の文言で抜け道を作られたりしていることがあるので、きちんと精査しなければせっかくの交渉が無意味になるのに弟は苦手だからと兄のクリストファーに丸投げしている。

損な役回りだなと思わないでもないが、生まれつき要領がいい弟と違い、抜き出た才能があるわけでもない。

自分はとにかく怠ることなく目の前の事をこなすしかないのだ。

殿下は自虐的にそのように考える。




ある程度目処がついたところで、椅子に体を預け目を閉じる。まぶたの裏に浮かぶのはあの令嬢の笑った顔ーーー。

なんだあれは。あんな女もいるのか。


深い青の瞳に見つめられると心臓が跳ねた。

掴んだ体は細く柔らかく、日向の匂いがクリストファーの鼻をくすぐった。

思い出すだけで体の熱が上がる。


彼は今、これまで感じたことのない激情を持て余していた。


***



幼い頃から女という存在に疎ましい思い出しかない。女が見ているのは、王太子としての肩書き。王家の血筋の証明であるこの容姿。特にこの顔は賢王と謳われた先先代に瓜二つだという。なので賢王の再来だと子どもの頃から持て囃されて育ち、クリストファー自身もそうなる未来を信じて疑わなかった。

しかし弟ミカエルの成長とともに、彼の人生に陰りが差し出した。

天性の人たらしとでもいうのだろうか。弟ミカエルに会った人間はみな彼に心酔するように夢中になった。継承権のない自身の立場もよく理解していたのだろう、クリストファーに足りないものを補う形で政務にも関わるようになり、外交などの華々しい表舞台で成果をあげると風向きが一気に変わった。


弟ミカエルこそがこの国の王に相応しいと。


そういった機運が高まるに連れ、クリストファーに群がっていた人々が波が引くように去って行った。最も顕著だったのは女どもだ。あれだけ好きだの愛してるだの鬱陶しいくらいだったのにあっという間の手のひら返しだ。

ぎゃあぎゃあうるさい女共がいなくなったところでどうと言うこともないが、女の口から出る言葉は嘘ばかりだと知った。

この頃にはクリストファーはすっかり女嫌いになっていた。


父である国王に隣国の姫と結婚するように言われた時も政務の一環として淡々と了承した。

どうせ誰が来ても一緒だ。王族であればあちらも心得てるだろう。


そして初めて顔をあわせた姫は大人しく穏やかそうな女性に見えたので、この姫となら上手くやっていけるのではと期待していたのに…


大人しそうな顔の裏には、非常に面倒くさい、女の悪い面を煮詰めたような顔が隠されていた。それは早くも挙式直後から始まった。


挙式のあと、形式通りに姫の待つ寝室に向かおうとしたところ、年嵩の侍女に止められた。


「姫は殿下の態度に傷ついておいでです。このようなお気持ちで初夜などとんでもありません!出直して頂きたい!」


まさかの拒否だった。

態度と言われても、挙式からまだ二言三言交わしただけだ。それで態度がどうこう言われても訳がわからない。


それからというもの、なにかにつけて姫の侍女が文句をつけてくる。

本人に何が気に入らないのか尋ねても『思い至らないことが最も悪い』と後々に侍女を通じて言われ面倒臭いことこの上ない。


出来るだけ刺激しないよう顔を合わせないように過ごしていたが、挙式から三月もしないうちに姫が病に倒れた。

すぐに命に関わるものではないものの療養に時間がかかるので、温暖な祖国で治療したほうが良いのではないかと、宰相らと勧めたのがそれが姫の逆鱗に触れた。


「役立たずとして病気の姫を追い返そうというのですか!なんと非道な!嫁してからの度重なる冷遇!もう我慢なりません!」


外交問題にするとまで言う姫側に、これまで大人しく意見を受け入れていたクリストファーもいい加減キレた。


「そちらが外交問題にするなら我々もそのように対応しよう。輿入れすぐ病にかかられたようだが、本当は既に罹患していたのを隠して嫁いで来たのではないか?初夜を拒んだのもそのように受け取れる。

いずれにせよ、私の継承権が揺らいでいる今、世継ぎが見込めない貴女と婚姻を継続していくのは無理だとして貴女の祖国に申し入れる!」


それを受けて姫側はみな沈黙した。分が悪いと判断したのだろう。

言い負かした事でスッキリしたクリストファーは本当に隣国に申し入れるつもりなど無かったのだが、焦った姫側からこんな提案を持ち込んできた。



ーーー殿下の子を他の女に産ませましょう。


クリストファーはくだらない、と提案を一蹴したが、宰相ら王太子派のメンバーはこれに食いついた。婚姻の解消による不利益を考えると、それが最良に思われた。


そしてクリストファーの意思は無視されたまま、代理母の女が秘密裏に連れて来られる事となったのだ。





王子が面白いこと全然言わないので書いてる方も全然楽しくなかったです。鬱陶しい回を読んでくださってありがとうございます。

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