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さあ盛り上がってまいりました(私が)

ブクマ、評価してくださってありがとうございます!嬉しいです!




「おーいマリーちゃん、今日の昼飯なにー?」


「カブとベーコンのスープとくるみパンですよーそろそろパン焼きあがるのでご飯にしますよー」


昼間に来る衛兵ともすっかり仲良くなったマリー達は、衛兵達の差し入れもあってこの小さな小屋で快適に過ごしていた。


「あー美味い。今日のメシも美味いわ。マリーちゃんお願い結婚して」


「バカかお前、殿下の為に来てんだぞマリーちゃんは。そんな事言ってるのバレたらクビになるぞ」


「アーロンさんが伯爵以上だったらすぐマリーを差し出すんですけどねえ」


「エマさんや勝手に差し出さないで」



昼間に来る衛兵はアーロンとイーサンという若い男性達だ。普段女っ気のない宿舎生活なので、こうして若い女性の手料理を振舞われてお喋りできるとあって、毎日ご機嫌で護衛に来ている。

夜の担当エドとサムの二人と二交代ではキツイはずなのだが、他のどんな仕事よりも楽しいらしく、他の衛兵に『すごく大変な仕事だ』と言いふらしてこの仕事を独占している。



「さて、片付けたら薪を拾いに行きますかー」


「うん、気をつけてねマリー。帰ってくるまでには風呂釜直しとくわ」


「あーマリーちゃん、悪いけど王宮側の森へは入らないでね。そちらへは近づけるなって言われてるんだ」


「りょーかいりょーかい。心得てますよー」


忘れがちだが、こういう時やっぱり軟禁されてるんだなあと思い出す。あれから一ケ月が経とうとしているが、相変わらず何の動きもない。安定の放置だ。



今日は風呂釜が使えそうなくらいに修復できたので、とうとうお風呂に入ろうと決めた。これまで桶に湯を張って体を清拭するだけだったので、ずっと楽しみにしていたのだ。

湯を沸かすようになると薪が在庫では足りなくなりそうなので、今まであまり来なかった森の奥まで行くことにした。


落ちて乾燥した枝を拾って回った。大きいのは鉈で切ってカゴに入れていく。

王宮の敷地内とは思えない豊かな森だ。これなら冬が来ても薪に困ることはないだろうと思いマリーは安心する。


作業に夢中になっていると、後ろのほうでパキッと木の折れる音がした。振り向くと少し離れたところに男が立っているのが目に入って、マリーは慌てて鉈を握りしめ身構える。


「お前…こんなとこに居たのか…」


男が話しかけるでもなく呟いた。

マリーは、自分を見知ってるようだと思い相手の顔を見つめる。


「…あっトイレの人?!」


「トイレの人ではない!その呼び名やめろ!」


よく見ると以前トイレでぶつかりそうになった男性だ。トイレにまつわるエピソードしかないのに他に何と呼べばいいというのだ。マリーは不満に思い口を尖らせた。


「では何とお呼びすれば?それよりもこんな森の奥で何なさってるんですか?」


「お前こそ名はなんと言うんだ?こんな暗い森に独りで危ないぞ」


質問返しは良くないですよ!それに正体不明の男に名乗ったりしません。なのでマリーは逃げようと決め、カゴを持って走り出した。


「あっ待て!ちょっと話があるんだ!」


男が本気で追いかければマリーに逃げ切れるはずもない。いくらも行かないうちに男に捕獲されてしまった。


「待てって!何もしない!話をしたいだけだ」


腕に抱え込むようにされているのに何もしないなどと説得力がないなあとマリーは思ったが、掴む手が意外にも優しく、気遣いが感じられたので抵抗をやめて話を聞くことにした。


「…お前、あの庭師が使っていた小屋に住んでいるだろう?そして監視が付いている。何のために彼処にいるんだ?」


「何でって…宰相様に連れて来られて彼処に押し込められたんだもの。殿下の子どもを産むように言われてきたのに、もう一ヶ月も放置なんですよ。私にも訳がわからないわ」


そこまで言うと男は驚いたように目を見張って、マリーを掴む手に力がこもった。


「お前が…」


急に様子の変わった男にマリーは戸惑った。相手の目を見返すと、なにかを堪えるような苦しげな顔をしている。しばらく見つめ合ったまま時が流れるが、男がマリーを引き寄せるようにして顔を近づけてきた。


なぜ顔を寄せてくるのだろう?この男は誰なんだ?


不思議に思い相手ををぼんやり眺めていると…男の頭越しに白い影が動くのが見えた。



「あっ!!!モモンガ!!!」


「はっ?!も…もも…?!」


「あーー!待って待ってモモンガよ?!モモンガいたわ!あーーーー!飛んだ!見て見て可愛い!飛ぶの下手!下手なのね!かわいいいいーーー」


白い影は、なんと木から木へ滑空するモモンガだった。

今まで小屋の周りでリスやウサギはよく見かけたが、モモンガを見るのは生まれて初めてだったマリーは興奮が止まらない。



「ああー…行っちゃったあ…あれ?どうしました?ちゃんと見た?」


隣を見ると男が膝から崩れ落ちてお腹を抱えている。


「おまっ…お前…モモンガって…」


どうやら息も絶え絶えで笑い転げてるようだ。モモンガのなにがそんなにおかしいのかとマリーはムクれた。


「も…もう笑わないでください!可愛いからせっかく教えてあげたのに!それよりあなた私に用事があったんでしょう?!」


「ああ、ごめん、可愛くてつい。お前が何者かわかったからもういいんだ。怖がらせて悪かったな」


「はあ…じゃあもう戻っていいですよね。あなたも仕事しなくていいんですか?なんか偉い人なんでしょ?」


「あ、ああ私は…俺は…そう、宰相の息子だ。まだ見習いだから暇なんだよ。だからまた遊びに来ていいか?」


「えっダメです。暇で遊んでるなら宰相様に私達の現状をなんとかしてくださるよう言ってください」


「ええー?!わ、わかった!ちゃんと伝える!必要なものなどあれば私が運ぶ。だからまた来るからな?それでいいだろう?」


「はあ…ではよろしくお願いします」


正直仕事もしないで遊び歩いてるようなドラ息子とはよろしくしたくなかったが、宰相とつなぎが出来るのは有難い。なのでもう一度伝えてくれるよう念を押してマリーは男と別れた。





***


「エマ!エマ!」


「おかえり…遅かったねマリー。何かあった?」


「大変よ!モモンガがいたわ!飛んでたの!白いの!飛ぶのがとっても下手だったわ!」


「…ああ、うん良かったね。ホラもうお風呂直ったから、沸かして入ろう?」


「また見れるかしら…ねえ、エマも見たいわよね?モモンガ…」


マリーはモモンガの報告で頭がいっぱいになり、宰相の息子という男に会った事をエマに報告するのを忘れた。思い出したのはベッドに入り眠りに落ちる直前だった。


「そういや…名前…きいたっけ…」



その夜、マリーはモモンガの夢をみた。

モモンガかわいいですよね。これからもドンドンモモンガを出して行きたいと思います(嘘)

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