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ブクマありがとうございます!調子に乗ってドンドン広げてます。短く終われない…

その日、宰相は朝からひどい頭痛に悩まされていた。

原因は分かっている。この目の前に座る女が連日押しかけてきて、グチグチグチグチ同じような話を長時間聞かせるからだ。


「ーーですからわたくしもう姫様が不憫でなりませんの。ずっと涙を堪えておられて…!ええ、ええ、あの日からずっとですわ!あの売女の毒気に当てられて…」


その話はもうさっきから5回目だ。

姫の侍女であるこの年配の女は姫の代弁だとして、愚にもつかない事を毎日言いに来る。無下に扱う事も出来ずこうやって対応しているが、執務が滞ってしょうがない。


「…あのご令嬢は娼婦などではないですよ。ちゃんとした出自の身持ちの堅いお嬢さんです」


「いいえ、殿方はあの見た目に騙されておいでですけど、わたくしには分かります。あれはちゃんとしたご令嬢などではありませんわ。

あの日から姫はずっと心を痛めておいでです!あの薄汚い女が殿下のお子を産むなど!許される事ではありません!」


こめかみを揉みながら宰相は言う。


「ですが、元はと言えば姫様が言い出した事ですよ?難しい条件を全てクリアした女性を探すのにどれだけ苦労したか!ようやく引き受けてくれる方を連れて来たのに何故今になってそのような事を言いだすのですか」


侍女は一瞬言葉に詰まるが、すぐに怒りの表情になって声を荒げる。


「娼婦に殿下の子を産ませる気ですか!」


「娼婦じゃないと言ってるでしょう!」


いい加減堂々巡りだ。女という生き物は、何故こうも人の話を聞かないで感情でものを喋るのか?殿下が女嫌いになった理由もよく分かるというものだ。


「…どうしたら納得するんですか。あなたの望むように、間違っても殿下と彼女が鉢合わせすることのないよう城内の外れに軟禁してますよ?

それに、もうお子を諦めるなら彼女を家に帰らせると言ってるでしょう?何故まだあそこに留めるのですか?」


宰相の質問には答えず、侍女はジッと彼を見返してくる。



「…聡い宰相様であれば、お分りでしょう?」


謎かけのような言葉だけを残して侍女はようやく席を立ち帰って行った。




……めんどくせえ!!!

何が言いたい?いや、何を言わせたい?

宰相はイライラをぶつけるように机に拳を打ち付けた。



隣国から来た姫と女共はとにかく言ってる事が何かにつけてまわりくどい。

言葉の額面通り受け取れば配慮が足りない気遣いがないと責められる。

言った言葉と逆の意味を読み取れと言う事らしいが、あいにくこの国ではそのような文化はない。


姫が昨年この国に嫁いできてからというもの、宰相の精神は削られる一方だった。



ガチャ…。


宰相が居る会議室のドアがノックもなく開けられる。顔を上げ入ってきた人物をみやると。


「殿下…」


この国の王太子、クリストファー殿下だ。


もうひとつの頭痛のタネがきてしまった…。


「相変わらずうるさい女だな、姫の侍女は。隣の部屋まで怒鳴り声が聞こえたぞ」


「盗み聞きとは行儀がお悪うございますよ、殿下」


「うるさい。私に関わることだろうが。

娼婦だなんだと言ってたのは、以前お前が持ってきた話に関わる女の事だろう?何故今になって隠そうとするのだ?」


「殿下こそ『これ以上厄介な女が増えるなんてゴメンだ』とあの話は一蹴されたではないですか。何故今になって関わろうとなさるのですか」


「興味が出てきた。まずはその女に会わせろ。王宮のどこかにいるんだろう?どこを探しても皆知らぬという。どこに隠している?」



宰相は動揺を隠せなかった。

今まで女嫌いで有名だった殿下が女に興味を示した。ひょっとしてあの姫の侍女はこれを見抜いていたのだろうか?



あの日、姫に御目通りいただいた後、マリーは殿下の寝所に近い離れに滞在する予定になっていた。しかしあの侍女が土壇場で『マリー達の存在を殿下に気取られないよう、どこかわからない場所に軟禁するように』などと言ってきた。

冗談ではない。軟禁など罪を犯したわけでもなくむしろこちらがお願いして来ていただいた客人に、そのような真似ができるはずがないと散々揉めたが『姫のご意向です』と言われ仕方なく空き家となっていた庭師の小屋に押し込んだ。本当は牢に入れろと言っていたぐらいなのであれでもなんとかマトモな場所に入れたほうだ。


こうなってしまったら、殿下が彼女に会ったりなどすれば厄介が増えるだけだ。

そう思った宰相は、殿下に伝える事なく早めにマリーを帰そうと思ったのに…。



「…もう殿下がお断りされたのであの話は無くなりましたよ。例の女性もお帰り願いました」


「嘘をつけ!何故隠す?あの侍女と何を画策しておるのだ。お前あの姫に取り込まれたか?!」


「そんなわけ…!ああもうアッチもコッチもおおお!」


繊細な宰相の神経はこの辺りでキレた。

これ以上彼を責めても無駄だなと判断した殿下は、会議室を後にした。



外に出ると殿下の横にスッと護衛の二人がついてきた。


「この後の予定はキャンセルだ。しばらく独りで行動する。城内であるからお前達は付いて来るな」


「は。では影だけお連れください」


「あと、あの姫が何か画策しているようだ。例の侍女の動きを調べて報告してくれ」



御意に…と言うと護衛の男達は音もなく消えていった。



やっと王子様の名前が出てきました。ちなみにさっき考えた。

短編構想の時は名無しだったもので…

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