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もーえろよもえろー



わははは……。


あはは……。



王宮のはずれにある森の奥。

普段人の出入りのない小さな小屋の前で焚き火が赤々と燃えて、木の爆ぜる音がする。

その周りに笑い声が響く。



「なるほどーお嬢さんはそういう理由で連れてこられたのかー」


「そうなんですよ、ウチの父酷いでしょう?もーやってられないですよ」


「マリー飲み過ぎ」




マリーとエマ、それに警備に残された衛兵二人が焚き火を囲んで酒盛りをしている。

聞くと、衛兵の二人は、帰ろうとしてたところを宰相に捕まり寝ずの番を頼まれたそうだ。突然のことだから、もちろん夕餉もまだだというので、マリーとエマで無理矢理座らせて一緒に食事をした。

そこにワインと果実酒があったためみんなでちょっと飲み出したら止まらなくなってしまい、今マリーは酔いに任せて代理母の件までペラペラ喋ってしまっている。


「ふつーに、慎ましく暮らしていければそれでいーんですけどねえ、許してもらえないんですよ。生きるって大変ですよねえ…」


「お嬢さん…っ。いやマリーちゃん!なんて不憫なんだ…!俺の息子の嫁さんに来れたらいいのに!」


「エドおじさん…!いい人…!ありがとう!かんぱーい!」


エドと名乗った衛兵と気が合ったのか、マリーはずっとこのおじさんと乾杯して飲み続けてる。


「かんぱい何回してんの。そろそろ寝なさい」


家の中から引っ張りだしてきた毛布をマリーにくるむ。焚き火があるのでそれほど寒さは感じないのでこのまま寝かせてしまおうとエマは思った。


「面白いお嬢さんだねえ。ビックリするぐらい綺麗な子なのに全然ご令嬢らしくないねえ」


もう一人の衛兵のおじさん、サムがニコニコしながら丸くなって寝るマリーを見ている。



エマはマリーが寝たのを確認したところで二人に向き直り問いかけた。


「お二人に聞きたいことがあるんですけどいいですか?」


「内容によるけど、なんだい?」


「先程宰相様はどこに行ってどなたと会ってらしたかわかりますか?この空き家に追いやられたのも、そこと関係あるのではないかと。どうも不測の事態が発生してるようで心配なんです」


「いやー我々は警備だから中まで入らないしなあ。でも我々が宰相様に警備を依頼された時、えーと、姫様の侍女さんかね?乳母さんだったかが出て行く所だったからその人と話してたんじゃないかね?」


やっぱりか、とエマは内心ため息をついた。あの時の姫達の反応を見ると疎まれるのは予想できたが、こんなにも早く手を回してくるとは思わなかった。そもそも姫の発案だろが!ふざけんな!とエマは心で毒突く。



「まー宰相様もわざわざ連れてきたご令嬢をこんな所に押し込めて何考えてるんだか。ワシら朝には警備交代だけど、また来るから何か困った事があったら言ってくれ。出来るだけ力になるから」


「ありがとう、エドさん、サムさん」





その後、夜が明けてから交代の兵がやってきたが、どう見ても宴会をやってた雰囲気の彼らを見て唖然としていた。


仲良くなった衛兵のエドとサムが交代にきた若い衛兵に何か口添えしてくれたらしく、コワモテの二人はマリーとエマに親切だった。




しかし交代の警備はくるものの、食事やリネンが運ばれて来る事はない。


「えっ?ひどくない?もう3日も放置だけどパントリーの在庫だけであと何日生きればいいの?」


マリーとエマはもう3日もここに閉じこめられてる。監視だけいて、軟禁状態なのに食事もお世話も無いってどう言う事?!と二人は憤ったが肝心の宰相があらわれない。


仲良くなった衛兵に訴えたが、宰相が捕まらなくて困っているらしい。




「エマ、ここは籠城作戦でいきましょう」


「作戦て。ほかに選択肢ないし。あーあ媚薬も睡眠薬も、殿下の御渡りがないなら活躍の場がないわね。どっちにしろこんな小屋で夜伽もクソもないもんね」


「どうしてこうなったのかしらね?殿下にあわないまま一年が終わったら困るわ」


そうは言ってもどうしようもないので、もう自給自足で生き延びようと二人は決意した。


幸い、小屋から近いところに畑があり、雑草まみれだが育てられてた野菜がいくつも自生している。小麦粉や米は衛兵に少しずつ恵んでもらう事にした。


なんやかんや言いながら、生活のメドが立つとマリーは楽しくなってきた。昼と夜は、差し入れをしてくれるお礼に衛兵達と一緒にワイワイ楽しく食事する。

小屋の周りは森に囲まれていて、うさぎやリスが時々顔をみせる。夜はみんなでお茶やお酒を飲んで星を眺めたりしているうちに、すっかりこの暮らしが馴染んで楽しいものになってしまった。


「ヤバイわエマ。私一生ここでもいい気がしてきた」


「うっかり私もそんな気がしちゃうからマズイわね」




だがそんな訳にはいかない事など本当は分かっている。



二人の知らないところで、事態は急速に動き出していた。


キャンプファイヤー楽しいですよね

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