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ノリと勢いで書いてるので名前とか適当です。最後まで姫の名前はでないままか…

「姉様どうぞ、お元気で」


可愛い弟のフレディに見送られ、マリーは城へと向かう馬車に乗って旅だった。表向きは行儀見習いの侍女という名目になっている。

マリーにとって幸運だったのは、エマも一緒に連れて行けるという点だ。これはどうやら父が交渉してくれたらしい。それだけは感謝だ。



宰相自らが変装してマリーを迎えに来たので、馬車の中で詳しい話を聞くこととなった。


この代理母の話は、長期の療養が必要になってしまった姫からの提案だった。それを受けた王太子殿下派の宰相が推進したらしいが、当の殿下が納得してない。

だが女性を連れてくればなるようになるだろうと半ば強引に計画を進めてしまっていて、着いてすぐは冷遇されるかもしれない、と宰相は申し訳無さそうに呟いた。


「しかし、これほど美しいマリー殿ならすぐに殿下もご寵愛くださるでしょう」


それを聞いてマリーは隣に座るエマにコソッと聞いた。


「ねえ、私が美しいって本当?こんなにぼろぼろなのに、宰相様は目がお悪いのかしら?それとも計画が上手くいかなくて自棄になってるのかしら?」


それを受けてエマは苦い顔になった。

マリーの父は母親そっくりの彼女の容姿を貶めこそすれ、褒めることなどついぞ無かった。

確かに日々の生活に追われ一般のご令嬢とは程遠い生活をしてきたマリーは髪や手など手入れが行き届いてなく荒れている。そのためマリーの自己評価は限りなく低い。

しかしその生まれ持った美貌は、素朴な服装をしていても隠しきれないほどの輝きを放っていた。これでもし美しく着飾ることが出来れば、傾国の美女と謳われるほどになるだろうとエマは思っていた。


「マリーは綺麗よ。お城についたらその美貌を存分に活かしてあげるから覚悟してね」


「?そうなの?ありがとう」


いまいちピンと来てないようなマリーをみてエマは考える。

殿下のお子を宿すのが目標だが、あのマリーの父が文句を言えない相手ならば殿下が相手でなくとも良い。もっとちゃんとマリーを大事にしてくれそうな男を見つけて結婚させてやる、と心で誓った。


そんなエマの思惑を知らないマリーは「悪女ってまず何をしたらいいのかしら」とワクワク顔で呟いている。

およそ悪女の真似事など無理だなと思ったエマは、自分がしっかり手綱を握らねばとため息をつくのだった。


***


城に着くとまず、姫に御目通り願うと宰相は言い、姫の療養所となっている建物へと連れていかれた。



この代理母の発案が姫自身とはいえ、夫である殿下に女をあてがうなど身を切る思いだったに違いない。だが、この国の未来のために決意したのだろう。マリーは複雑な思いで長い廊下を歩いていた。


「妾としてではなく、子どもだけ産んで寄越せなんてどれだけ意地が悪いのかしらね?マリーがどう思ってるか知らないけど、きっと相当な腹黒よ?姫様は」


マリーにだけ聞こえるようにエマが恐ろしく不敬な事を言ってくる。


「不敬罪で捕まるわよ。でもひとつの事実も見方を変えるとそういう風にも取れるのね。さすがエマだわ」


マリーは単純だからね…と言うエマは無視して、姫の寝室へと案内され入室する。



そこには、儚く今にも消えてしまいそうな少女にも見える小柄な女性がベッドで身を起こし座っていた。


艶やかな黒髪に深い青の瞳。抜けるような白い肌。マリーはここへ来てようやく自分が選ばれた理由を知った。

髪の色と目の色はマリーも同じ。そして面差しがなんとなく似ている。病気の姫と健康そのもののマリーとでは随分と様子が違うが、それを差し引いても二人は近い雰囲気を持っていた。

なるほど、産まれた子の容姿が、姫が産んだと言ってもおかしくないよう代理母を選んだのだろう。


マリーは淑女の礼をし、姫の言葉を待つ。


「あなたが此度の仕事を受けてくれた人ね。名はなんという?」


「はい、マリーと申します」


登城前に父に家名は出すなと言われてきた。何かしでかしても家に類が及ばぬようにただのマリーであれとの指示だ。父の命令で来てるのに本当にあの人は酷いと思う。


「マリー、王太子殿下の地位を確固たるものにする為にも世継ぎが必要なのです。殿下は拒んでらっしゃいますが…なんとかわたくしが説得しますので…どうか殿下をお願いします」


殿下にいつまでも子が出来ないとなると、第二王子を次の王にと推す動きが活発になってくる。本来なら第一王子の立場が揺らぐことはないのだが、第二王子は飛び抜けて優秀で外交でかなりの成果を挙げている事から王の器だとして支持する派閥が増えている。不安要素は出来るだけ解消しておきたいというのが姫を含む王太子派の本音だろう。


「私には過ぎたお役目ですが、精一杯努めさせていただきます」


そう言って少しだけ顔を上げ、姫のほうへ目線をあげると一瞬だけ目が合った。その瞳にはほんの少しだけ怒りの炎が灯ったように見えたが、それはすぐに消え、姫は優しく微笑み『頼みましたよマリー』と穏やかに返した。


そうして姫の寝室を辞する際、入り口に控えていた姫の侍女がマリーをジロジロと値踏みするように見ていた。


すれ違うときに小さな声で『恥知らずのばいたが…』と呟いた。



ば…売女…。えーとそれって春を売る女性の事よね?こんな役目を受けたから娼館から来たと思われているんだろうか?

違うよ!プロじゃないんです!と言おうかと思ったが、後ろからエマに押されて言えぬまま扉を出た。



「ど、どうしようエマ、私プロの娼婦だと思われてるよ?!そんなすごい技とか持ってないのにどうしよう?」


「どうどう、落ち着いてマリー。アレはそういうんじゃないから。姫の気持ちを汲んでアンタに嫌味を言っただけよ。

…姫は思ったより厄介かもね。姫が言い出しっぺだけど実際殿下にあてがう女をみたら憎くなったってトコかしら?あえて、自分から殿下にお願いしてみるって殊勝なこと言ってみせたけど、あれはアンタへの牽制だと思うわ」


そ、そうなの…?とショックを受けたように固まるマリーにエマは言った。


「しっかりしなさいよ。悪女になるって自分で言ったのよ?これからきっと、こんなもんじゃ済まないわよ」


「そうだね…ごめん、私ひとの心の機微に疎いよね。悪女はこんなんじゃ務まらないね」


どうにも気の抜ける返答をするマリーをエマは複雑な思いで見ていた。



***


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