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自室に戻ったマリーは、侍女であり親友でもあるエマにこの代理母の件を相談した。


「…というわけで完全に詰んでるのよ。八方塞がり。でもその気もない殿下を籠絡してどうこうなるなんて、私にできると思う?」


「うーん無理だね。残念美人のアンタにはできない芸当だろうね」


「ちょっと残念美人てなに?褒めてるの?けなしてるの?」


どこか呑気そうな顔のマリーをみてエマは苦笑を漏らす。

親友として幼い頃からこのマリーを見てきたエマとしては、今回の話にはハラワタが煮えくりかえる思いがした。爵位をもつご令嬢にも関わらず奢ったところもない、純粋で穏やかな性格に育ったこの幼馴染は、奔放な母親のせいでしなくてもいい苦労を散々してきた。

下女がやるような仕事でさえも骨惜しみせず進んで働くマリーを、彼女に関わる人間はみんな愛していた。

あの母親のせいで縁談は碌なのが来ないようだが、彼女と付き合いのある商人など彼女を娶りたいと思っている人は沢山いる。

だが、苦労ばかりで色恋など全く無縁だったマリーは男どもの熱い視線になど全く気づく事なくフラグを折りまくっている。残念美人はそうしたマリーの様子から皆が付けたあだ名なのだ。


「もうこの話が蹴れないなら、なんとかするしか無いね。よしこのエマさんがマリーに知恵を授けよう」


「えっエマすごい!打開策があるの?」


ゴソゴソと棚から二つの小瓶を持ってくるエマ。赤い小瓶と青の小瓶をテーブルに置いて言う。


「じゃーん!コレは媚薬でーす!」


「びやく」


「そしてコッチの青いのは睡眠薬ー!」


「すいみんやく」


「この二つを使えば残念美人のマリーさんにも殿下が押し倒せるでしょーう!」


「ちょっと待って、どうしてこんな薬品をエマが持ってるのかも気になるけど、それよりもこの二つの使い方が分からないわ」


「簡単よ。媚薬と睡眠薬を相手に飲ませて、意識が朦朧として媚薬が効いたところでパクっと食べちゃえばいいのよ。

これくらいの準備は乙女の嗜みよ」


「説明してくれたところ悪いけど、何言ってるか全然分からないわ。本当に世のお嬢さん方はみんなコレを持ってるの?」


ソウヨーと嘯くエマに不審の目を向けながらも、マリーは自分に打つ手がない事も分かっていた。


「…でもさすがに相手の意思を無視したやり方はいけないわ…」


「何言ってるのマリーは。何もせずそのまま帰ってきたら、サディストのカイウス伯爵に嫁がされるのよ?命が惜しいならどんな手も使わなくちゃ」


そうだった。報償金ももらえずノコノコ帰ればあの父が許すはずがない。カイウス伯爵と縁つづきになる事は、父の仕事に旨味があるようだ。必ずマリーは嫁がされるだろう。


「マリー、アンタ散々苦労して生きてきたのにそれじゃあんまりだよ。使える手はなんでも使って幸せ掴んだってバチは当たらないよ」


エマが涙を浮かべてマリーが幸せになって欲しいと訴える。もしここで逃げてもあの父は絶対に見つけだすだろう。

やるしか無いのだ。幸い、一年という猶予がある。やれる事はやってみよう。


「わかった、ありがとう私どんな手を使ってでも殿下の子を産んでみせる。私、悪女になるわ」


それまで清廉潔白に生きてきたマリーが、悪事も厭わないと決意した瞬間だった。


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