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清廉な令嬢は悪女になりたい  作者: エイ
第一章

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その夜宰相の迎えを待つ二人の小屋に、激しいノックの音が響き渡り、椅子に腰掛けていたマリーは飛び上がった。


慌てて扉を開けると騎士姿の男が二人立っており、扉に体を差し入れるようにして入ってきた。

妙な威圧感を感じたマリーは思わず一歩下がって騎士と距離をとった。


「お迎えに上がりました。マリー殿ですね?さあ参りましょう」


騎士の一人がマリーに声をかける。騎士は襟元のマスクをあげて顔の半分を隠しているので表情が読み取れない。


「あっ…出立の時間ですか?わかりました。今出ます」


見知らぬ騎士に不安を覚えたものの、宰相が夜に迎えを寄越すと言っていたのでマリーは素直に従った。


マリーに続きエマも出ようとすると、騎士の一人がそれを遮った。


「人目に付かぬよう侍女の方とは時間差で出ていただきます。マリー殿は先に城外へ出て後ほど落ち合う手筈になってます」


そう言われては二人には従う他ない。しかし何故こんなに胸が騒ぐのか?エマを振り返るとマリーと同じように強張った顔をしている。


「宰相様は…どこに?」


「我々はあなた方を安全に送るよう指示を受けただけです。早く出立しないと予定通り城内からでられないかもしれませんよ」


急かされるように手を引かれ、外に出る。確かにこの機を逃したら逃亡の機会は失われるかもしれない。王宮へ続くほうの道を見ると、エドとサムが騎士姿の男ともめているのが見えた。


エドは小屋から出てきたマリーを見つけると騎士の手を振り払いこちらへ走って来た。


「待ってください!ワシらが聞いていた予定と違う!今宰相様に確認するから…」


「おい、衛兵風情が無礼だろう、もう時間だ。我々は宰相様から直接指示を受けている」


エドはグッと言葉につまり不安げにマリーを見る。


騎士はもうエドに構うことはなくマリーの腕を引いて歩き出した。


「まっ…待ってください!最後に挨拶だけ!挨拶だけさせてください!」


マリーが主張すると騎士はしぶしぶ手を放し『手短かに』とだけ言った。


マリーはエドの胸に飛び込んで抱きしめた。


エドはマリーを抱きかえしながら彼女の耳に口を寄せこう囁いた。



ーーーワシが合図したら森に駆け込むんだ。振り返らず奥へ走れ。


「エ、ドさん…?」


「さあもういいでしょう。行きますよ」


騎士がマリーに声をかけ、歩きだそうと振り向いた瞬間ーーーー。



「走れ!!!」


エドが叫ぶと同時に騎士へ体当たりをした。


弾かれたようにマリーは森へ向かって駆け出した。何故かなんて分からないが、エドが、マリーを娘と言ってくれるエドが、そう言ったから理由など考えずにマリーは走った。





ハアッ、ハアッ、ハアッ。



自分の呼吸音が頭に響く。陽が落ちた森は一寸先も見えはしない。

遠くのほうから怒鳴り声や叫び声が響き渡り、マリーは思わず足を止める。


何が起きている?今のは誰の叫び声?何故エドは走れと言ったのか?

エマやエド、サムの顔が頭を駆け巡り走って戻りたい焦燥に駆られる。しかしエドがマリーに走れといった意味があるはずだ。その場に立ち尽くし考えを巡らせる。



その時遠くの方から、追って来たと思われる男の怒鳴り声が響いた。


「マリー殿!あなたが戻らねば残る者が死にますぞ!早くお戻りください!」


男の言葉にマリーは震え上がった。慌てて小屋の明かりが見えるほうへ駆ける。




小屋の前には、地面に押さえ込まれているエドとサム。腕を拘束されて口を塞がれているエマの姿があった。

泥に汚れた顔を上げマリーを見たエドは驚いたように叫んだ。


「なっ…なんで戻って来た?!奥へ走れって言っただろう!!!」


「戻らなきゃ、みんなが…殺されるって…」


「せっかく…せっかく無事に出られると思ったのに…ワシらの事なんかどうでもいいんだ!自分のことだけ考えろ!」


騎士がマリーの腕を取り引き寄せる。


「よい心がけです。さあ参りましょう」


「お前ら!誰の指示だ?!マリーちゃんをどうする気だあ!」


叫ぶエドに騎士が振り返って言う。


「…殿下の指示だ。末端の兵士が余計な口を挟むんじゃない」


その時、サムが騎士の拘束を振り払い立ち上がってエドを押さえる騎士を殴り飛ばした。


「行けっ!エド!」


エドが飛び上がりマリーと騎士の元へ駆けてくる。騎士が剣に手をかけ鞘から引き抜いた。エドも剣を手に取り振りかぶる。


ガキン!!!


エドの剣が薙ぎ払われ、騎士の剣がエドの肩に振り下ろされた。

受けきれなかったエドは、叩きつけられるように地面へ倒れた。



「いやあ!エドさん!エドさん!エドさん!」


狂ったようにマリーはエドの名を呼ぶ。


「マリーちゃんっ…コイツら殿下の配下の人間じゃないっ。逃げろ!」


「くそっ予定が狂った。おい!残りの奴らは縛って隠しておけ!どうするか指示を仰いでからだ!」


騎士が焦ったように仲間へ言う。その間も腕を取られたマリーはめちゃくちゃに暴れるが騎士はビクともしない。



「もういい、とりあえずコレだけ連れて行く」



騎士が拳をマリーのこめかみに振り下ろし、マリーの意識は暗転した。






しばらくこんな感じで続きます。

当たり前だけど誰も面白い事言わないんでしんどいス。すみません。

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