やめられない
変わろうと決意してから早一年。
筋トレをやり始めた当初は腕立て一回もできず、腹筋も数回で筋肉痛になっていた。
だが諦めなかった。変わろうと決意したから。認められたかったから。
それからと言うもの、起きたら筋トレをし、アニメ鑑賞に使っていたパソコンはもはや筋トレ一色。食事にも気をつけるようになり、親には食事のメニューを手紙越しに伝える。
筋トレがある程度の回数できるようになるとプロテインもネット注文。お金は親のカードから。
すまない親父。働いたら返すから許してくれ。
そうしてただひたすらに体を鍛えまくった結果一年が経っていた。予定だと今頃はもう親に謝って変わったと証明していたと言うのに、気づいたら一年。時が経つのは早い。
そして筋トレに終わりはなく、理想とした体系を維持できるようになってももはや筋トレが習慣になってやめれなかった。
そしていま、俺は迷っていた。
果たして痩せた俺が部屋から出ただけで親は変わったと認めてくれるのだろうか。
もう二十代後半だ。それだけでは認めてくれないんじゃないかと。
この頃そればかりを考えて筋トレをしている。本当は筋トレに集中しないと筋肉に悪いのだが、こればかりはしょうがない。
迷いに迷った結果、俺は一つの結論に至った。
外見だけじゃなく、中身も変わろうと。
人は第一印象は最初の3秒で判断するとネットで見た気がする。
確かに3秒で好青年だと思われたらプラスだろう。だが、その先は?中身が残念だったらまたいじめられるんじゃないか。また底辺に戻るんじゃないか。
そうなったら俺の一年……いや、俺の筋肉に申し訳がない。俺の筋肉は悪くないのに内面が悪いばかりに筋肉までバカにされることになるのだ。それは許されないことだ。なら徹底的に内面も鍛えるべきだろう。
こうして俺は半年間に及ぶ性格補正を行なった。
だが最初の壁はこの染み付いたいじめられっ子体質だろう。どうしてもネガティヴになり、周りのやつがどうしても信用できなかったのだ。
俺はすぐに性格補正計画を修正した。
あくまで俺の根本は変わらない。ならせめて上辺だけでも完璧に仕上げよう……と。
こうして高クオリティなポーカーフェイス、いかに好青年に見えるかの研究を積み重ねた結果。
どこにでても恥ずかしくない細マッチョ好青年の出来上がりだ。
いや、鏡で見ただけなので他の人がどう思うのかはわからないが、少なくとも俺の中のイメージだと好青年だ。
こればっかりは相手の評価次第なので、どうすることもできないだろう。
さぁ、親にお披露目するのも時間の問題だ。