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8月16日。嘘が直ぐにバレる。
初めは声をかけられた。眠ることにした。
次に肩を叩かれた。眠ることにした。
体を揺さぶる。突っ伏したままやり過ごす。
起きろと言われた。叫ばれると周りの目が集まるし頭に響くのがとても効果的だ。憎たらしいほどに。
顔を上げる。目が合う。そして問われる。
「あなたがホリデーナイトメア…なんですよね」
顔を見た。見たくない顔だった。生き写しのようだった。理解することを拒絶する。流し込んだ悪夢が掘り返されたようで吐き気がしてくる。
栗毛の髪に、整った顔立ちに、泣きぼくろを添えたそのまっすぐで吸い込まれそうな瞳は…
「…違うぞ、人違いじゃないのか。」
考えるのはやめた。吐き気がした。この顔と向き合って素直に答えるのが躊躇われた。要は逃げだ。見なかったことにしよう。そしてまた酒を煽ればいい。
8月16日。
「あの!ホリデーナイトメアさん!ありがとうございます!」
俺は嘘が下手らしい。