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「アリエス。婚約破棄の方はどうなってる?」

「こちらからは無理なようですわ」

「王が頷けば、それで済むだろう?」

「完全な廃嫡をもくろんでらっしゃるみたいよ。それには十分な馬鹿をやらかしてもらわないといけないらしいですわ」

「成績が落ちた。婚約者以外と親しくしただけじゃ、廃嫡にはならないからね」

 わたくしは聞いてはならないことを聞いた気がして不安になりました。廃嫡なんて簡単にはできません。

「アルバート様はなんとおっしゃっているの?」

「彼も気が滅入ってるよ。今までは何とか忠告を聞いてくれてたけど最近はまったく耳を貸さないそうだ」

「ということは、すべて陛下は知っている、今は泳がせているって感じか」

 クリストファー様は、ふーっとため息をついておられます。それは、ため息だってつきたくなりますわよね。『アリエスざまぁ』とかいってた前世のわたくし。悔い改めますので、これ以上怖いお話を聞かせないでくださいませ。神様。

「最悪の場合、病死とかありえそうだがな」

 クロトア様は優雅にお茶を飲みながら、恐ろしいことをおっしゃいました。王族の病死は、ときとして暗殺を隠すための方便でございます。

「まあ、なんにせよ。自滅の道を歩いていることに気づいてないから、救いようがないよ。あとは陛下がどうにかなさるさ」

 ああ、どうしてこうなったのでしょう。わたくしただのモブでしたのに。

「ルーシェに聞かせる話じゃなかったね。ごめんね」

 クリストファー様がわたくしをなだめるように背中をさすってくださいました。どうやら思っていた以上にショッキングだったようで、体が小刻みに震えているようです。とりあえず、深呼吸ですわ。落ち着かなければいけませんわね。

「とりあえず、この話はこれぐらいにしとこう。それより、夏のダンスパーティの準備だけど、予算内でおさまりそうか?」

「ええ、それこそ今日サインをいただきましたから、滞りなく行えますわ」

「そりゃ、よかった。他の案件は?」

 クロトア様は、にこりと笑われております。さっきまでの黒い話はまるでなかったことのように。

「全部サインが入りましたから問題なく提出できますわ。ただ、新しい案件がございますの」

「なんだい?」

「ルーシェ様にまとめていただいた嘆願書に夜会やお茶会を増やしてほしいとありますの。増やせてもあと二回分ぐらいしか予算がありませんわ」

「それをこのまま、殿下に見せたら……」

「十中八九毎月やらかすでしょうね」

「他にどんな要望がきてるんだ?」

「放課後の訓練場開放ですわ」

「それは顧問に要相談だな。俺たちだけで判断したらけが人どころか死人がでるぞ」

「ええ、そこは慎重にしたほうがいいでしょうね」

 わたくし、予算のことはよくわかりませんけれど、それならと一つ提案してみました。

「あの、よろしいでしょうか」

 三人の目がわたくしに注目します。

「わたくし予算のことはわかりません。ですが、夜会や茶会ではなくても、皆様が楽しく参加できるものが放課後にあればよろしいのではないかと」

「たとえば?」

「ダンスの練習会とか、楽器が得意な方に演奏してもらうなどの工夫をすれば月に一度でも行えるのではないでしょうか。お茶会は庭園にテーブルと椅子を増やして、誰でもいつでも小さなお茶会ができるようにするというのはどうでしょう」

 あ、お三方が黙りました。ち、沈黙が痛いです。稚拙な案でごめんなさい。

「ルーシェ様、とてもいいアイディアですわ」

 え、本当ですか?アリエス様。アリエス様はにこにこしていらっしゃいます。

「うん、それなら、ダンスパーティ二回分の予算でなんとか納まるだろう」

 クロトア様も何やら納得のご様子。

「僕もいいアイディアだと思うよ。ルーシェ」

 クリストファー様が満面の笑みで頭を撫でてくださいました。ドキドキして死にそうですが、お役に立てたようでよかったです。

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