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 お休みの当日、パンツスタイルの乗馬服をばっちり着こなしました。そして、クリストファー様も素敵な乗馬服に身を包まれています。わたくしは、クリストファー様に補助をしてもらい、馬にまたがります。クリストファー様はお一人でひょいっと馬に乗ります。街中は馬車道をパカパカとゆっくり進み、城壁をくぐったあたりから少しずつ馬のスピードを上げて森まで行きます。そして、小川で馬を休ませてわたくしたちもちょっと休憩です。水筒のお茶で喉を潤しているそんな時でした。女性の悲鳴が聞こえました。わたくしたちは慌てて街道に出ます。そこでは、男三人に絡まれているアルマ様がいらっしゃいました。ああ、これはイベントですわ。これがクリストファー様とアルマ様が恋に落ちる事件なのです。やはり、モブには何もできませんね。クリストファー様はあっという間に暴漢を蹴散らし、アルマ様をこちらへ引きずるようにしてつれてらっしゃいました。

「ルーシェ。申し訳ないけど、警備隊を呼んできてくれ」

 わたくしは、あきらめモードで馬を走らせました。そして、警備隊を連れてきて暴漢三人を捕まえてもらいました。

「今日は、もう戻ろう」

「そうですわね」

「申し訳ありません。わたくしのために」

 アルマ様は泣きながら謝罪されましたが、よほど怖かったのでしょう。うさぎのように震えていらっしゃいます。

「仕方ありませんわ。アルマ様」

 わたくしは彼女の背中を撫でました。それから、クリストファー様がアルマ様を馬に乗せて、学園にもどりました。学院につくとクリストファー様は馬を返しに行ってしまわれました。ぽつんと残されたわたくしとアルマ様。

「あの、お怪我はありませんか?」

「ええ、クリストファー様のおかげで無傷です」

 なんでしょう?おびえていたのが嘘のように高圧的な態度です。

「そうですか。それはよかったですわね」

 にこりと微笑み返せば、なぜか眉間にしわをよせてアルマ様は余裕ですのねとつぶやいて去っていかれました。余裕とは、はて何のことでしょう。わかりません。ああ、でもせめてランチだけでも楽しみたかったですわ。それにしてもやはり、イベントは強制的におこるものなのですね。過去の記憶では、気晴らしに街へ出たクリストファー様がたまたま酔っ払いに絡まれているアルマ様をお助けするのがきっかけで親しくなるというものでした。ただ、今回、わたくしが一緒だったために、少々補正がかかったのでしょう。後日、クリストファー様がアルマ様をお助けになった話は噂となりました。なんでも、アルマ様は薬学で学んだキノコの実物を見るべく、森に行こうとしていたとのこと。なるほど、これがシナリオ補正というものなのでしょう。ああ、やはり婚約破棄の未来は避けられそうもありません。


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