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 数日たっても、呼び出しはありませんでしたので、いつものように生徒会室でお手伝いをしております。噂は相変わらずひそひそと流れておりますが、致し方ありません。それよりも、疲労困憊のお二方を回復魔法で癒しました。二週間後には試験です。一、二年生は進級が、三年生は卒業がかかっている大事な試験なのです。お二人のためならばと、わたくしはがんばって書類をまとめます。

 クリストファー様は一枚の書類を食い入るように見つめています。なんでしょう。何か難しい問題でもあったのでしょうか。アリエス様も気になったのでしょう。書類をのぞき込んで、眉間にしわを寄せました。

「まったく卑劣ね」

「ああ」

 クリストファー様もなにやらお怒りの様子です。そんなお顔も素敵と思ったのは内緒ですわ。


 今日からいよいよ試験です。噂は相変わらず下火になりません。それでも、先生からの呼び出しがないということは、わたくしの身の潔白は証明されているのでしょう。でなければ、寮で謹慎処分か実家へ帰されていたことでしょう。わたくしは、噂は噂と自分に言い聞かせて試験にのぞみました。

 結果は六位でした。やはり精神的にまいっていたのでしょう。返された答案用紙もケアレスミスが目立ちました。そして、アリエス様もクリストファー様も見事に一位でございます。さすがですわ。そしてクロトア様は二位でした。エドワード殿下も十位でした。クロトア様は本領発揮というところでしょうか。殿下も十位ということで体面を保たれたご様子です。

「ルーシェ」

「クリストファー様。一位おめでとうございます」

「うん、君の手伝いのおかげだよ。それより、しばらく生徒会室には来ないでほしいんだ」

 え?それはどういうことでしょう。わたくし、何か失敗したのでしょうか。

「今はエドワード殿下が卒業式後のパーティの準備をされているんだ。君に危害を加えられたくないから。寂しいけど我慢できる?」

「はい、そういうことでしたら我慢いたします。ですが、卒業パーティは学院主催なのでは?」

「そうなんだけどね。一応、出席者の確認なんかの仕事があってね。ごめんね」

「そんな、謝らないでくださいませ。クリストファー様は何も悪くありませんわ。ほんの二週間ですわ。わたくしは大丈夫です」

「寂しくないの?」

「それは寂しいですけど……」

「けど?」

「クリストファー様がわたくしを危険から遠ざけてくれることがとてもうれしいのです」

 わたしは一生懸命微笑みました。あら?クリストファー様、なんだかお顔が赤いような気がしますが、わたくしの気のせいでしょうか?

「ランチはできるだけ一緒に食べよう。待ち合わせは食堂の入り口、三十分待っても僕がこなかったら、先に入って食べておいて。食後のお茶くらいは付き合えるようにするからね」

「はい、わかりましたわ」

 それから、毎日、ランチかランチ後のお茶にお付き合いいただけました。もうそれだけで、十分幸せです。そのおかげでしょうか。噂もいつの間にか消えてしまいました。もうすぐ卒業式です。その後のパーティでは何が起こるのでしょうか。ゲームのようにアリエス様は婚約破棄と断罪を受けて幽閉されるのでしょうか。いいえ、きっとそんなことにはなりませんわ。だってアリエス様はエドワード殿下との婚約を破棄したがっておいででしたし、いじめなど一切されておりませんもの。わたくしは一抹の不安を胸に抱えながらも、記憶と現実は違うと思い始めておりました。


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