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 だんだんと肌寒くなってまいりました。訓練場開放一日目にクリストファー様の提案でお昼は生徒会室でお弁当を食べることになりました。なので、ボッチ飯ではございません。とてもうれしい提案でございました。それにしても相変わらず生徒会室には書類の山。お手伝いも欠かさずおこなっております。そして月二回の治療係。これが思った以上に大変でした。毎回三十人、みな対戦形式で魔法の技術を磨きます。先生の指導のもと、同等レベルの組み合わせか、同じ属性の組み合わせなどで怪我が少ないよう配慮はされているのですが、重傷者が後を絶ちません。もちろん、全力で完治させていただいております。

 そんなある日のことでした。放課後、生徒会室へ向かう途中、階段でアルマ様とすれ違いました。と、突然きゃっと悲鳴があがり、振り返ればアルマ様が倒れておりました。駆け寄ろうとしたところ、さらにきゃーっと悲鳴があがります。あれはたしかミシェル様。茫然としておりますと、私を指さして言いました。

「アルマ様がルーシェ様に突き落とされましたわ。だれか先生を呼んで!」

 え?わたくしが犯人?でも、両手が塞がっていますよ。生徒会室へ向かう前にウィルス先生から託された書類で。おろおろしているうちに、困惑した視線が飛んできます。ミランダ先生が飛んできて、治癒をほどこしています。気がついたアルマ様はおびえた表情でこちらを見て、ミランダ先生に何やら訴えております。ミランダ先生は半信半疑でこちらをみて階段をあがってきました。

「事情を聴きますから、いらっしゃい」

「あの、そのまえに書類を生徒会室に……」

「ああ、そこの君」

「あ、はい」

 ミランダ先生は階段を降りようとしていた少年にわたくしが持っていた書類を託しました。わたくしとアルマ様、ミシェル様はミランダ先生についていきました。そして職員によってそれぞれ別の部屋で事情聴取が行われたのです。わたくしの担当はミランダ先生です。

「それで何があったのかしら」

「……何があったといわれましても。わたくしにも何がなんだかわかりません。状況を説明しますと、アルマ様とすれ違って数秒後にきゃっという悲鳴が聞こえました。振り返ればアルマ様が倒れていて、近づこうとしたら、ミシェル様が悲鳴をあげられて……わたくしがアルマ様を突き落としたと叫ばれました」

「あなたは突き飛ばしたの?」

「いいえ、第一両手に書類を抱えていたので、突き飛ばすなど無理です」

ミランダ先生はでしょうねと頷いた。

「わかりました。また、後日話を聞くかもしれません。今日は帰ってよろしいです」

「はい、ありがとうございます」

 わたくし、あっさり解放されました。どうやら、ミランダ先生はわたくしの証言を信じてくれたようです。わたくしは、部屋を出てからため息をつきました。これもイベントということでしょう。モブなのにイベントに巻き込まれてしまうというのはどういうことでしょう。この先にはいったい何が起こるのでしょうか。そんな思いを抱えて歩いておりますと、クリストファー様が血相を変えて走ってきました。

「大丈夫だった?何されたの?」

「えっと、アルマ様を階段から突き落とした犯人にされました。でも、ミランダ先生はわたくしの証言を信じてくれたようです。大事にはいたらないでしょう」

 そうはいってみたものの、濡れ衣を着せられそうになって今頃ぞくっと震えがきました。クリストファー様は、そっと優しく抱きしめてくださいました。ああ、涙が出そうです。でも、泣いてはいけません。これ以上、クリストファー様に心配をかけるのは良くないのです。わたしが涙をこらえていると、すっと抱きしめる腕がほどかれました。

「寮まで送る」

「でも、お仕事が」

「仕事は明日でもできるよ。こっちのほうが大事」

 そう言って寮まで送ってくださいました。


 次の日は、あっという間に噂になっていました。わたくしがアルマ様を階段から突き落としたと。噂です。真実ではございません。そう言いたいのですが、噂というものは出所がわからないので対処がしづらいいのです。わたくしは黙って針の筵に座っておりました。


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