学校の七不思議?
パクった訳ではありませんが、どこかにありそうなオチの話です。
どこの学校でもあると思うんだよね、学校の怪談ってのは。無難なのは、トイレの花子さんとか、あるく人体模型とか、そのへんだよね。
うーん、私もよく知らないんだけど、どうやらうちの学校にもあるらしいんだよ。内容はまったく知らないけどさ。興味もないしね。
しかしまあ、運命ってのは面白いもんで、知らなくても良いって言ってんのに、自分からやってくるんだよね。友達の琴音に誘われたの。「ねえ、調べに行かない?」ってね。
天から海老が降って来るのかと思ったわ。いやマジで。だって、あの琴音がだよ?臆病で弱虫で泣き虫で、お化けとか見たら卒倒してそのまま死んでもおかしくなさそうなあの子が。
私も最初は信じられなかったよ。でもまあ、本人が大丈夫って言うなら大丈夫なんでしょ。私は暇だからオッケーしたよ。
確かに不安もあったけど、メンバーも他に7人くらい集まってるらしいし、まあ、なんとかなるだろうって。まあ、どこにでもある普通の展開だよね。
がっくりする物も、ドキドキするものも、その時は何もなかったよ。メンバーはなかなか個性的だったけど。
心春、三和、苺、連、建二、翔に、私と琴音が加わった8人。結構いろんなクラスからかき集めたみたい。4組は私と琴音と蓮の三人だけだし。
こんな感じで、あつまることになったのよ。夜11時、校門前で。一番早く来てしまった私は、とてつもない寒さと、恐ろしい夜の学校を拝むことになりましたよ。夜でも寒いんだよね、この辺りは。標高高いし、海に近いし、薄着で来ちゃったし。
日時を間違えたのかと不安になりましたよ。そのあとしばらく誰も来なかったから。私以外全員遅刻ってどうゆうことよ。
如何せん寒いもんだから、終いには私はその辺を走り回ることになったんだぞ。怖いのと寒いのを紛らわすためにさ。
ルンルン気分ではしゃぐんじゃねえよ、って言いたくなったわ。まあ、逃げ出す奴がいなかったのは良かったかな。寒いなかで、あれ以上待たされたらたまらん。
ノックアウトしそうな寒さの中、私たちは前もって開けておいた一階の窓から学校に入ったのよ。
でも、学校にはもう誰もいないから暖房なんてついちゃいないし、私と琴音以外の女子三人は怯えてこっちに抱き着いて来るし、散々。「私、怖いのホント無理!」ってさ、何のためにあんたここにきてるんだよ。
終いにゃ男子も怯えてるし、無理なのはこっちの精神だよ・・・。
でもまあ、とりあえず確かめに行こうって話になったのよ、学校の七不思議ってのを。そのために来たんだしね。まず一個目は、『トイレの花子さん』。何処の学校にもある、無難なやつだね。
三階の女子トイレのどっかの個室に、出るらしいんだよね。泣き声みたいな声がして、真っ黒い長髪の女の子がうずくまってるんだって。琴音が言ってたから、本当かどうかはよくわからないけどね。
うちの学校には、東ホールと西ホール、東階段と西階段ってのが各階に一個ずつあるんだよ。ちなみに、入って来た教室から一番近い階段は西階段。でも、西階段の大鏡にどっかの時間帯に写ってしまうと、そのなかに引き込まれてしまうっていうのがあるから、東階段から行くことになった。どうせなら一から順に回って行こうっていう琴音の提案から。
それにしても、寒い寒い。私は怖がりではないけど、寒がりなんだよね。なんで私薄着で来たんだ。アホか。
怯えてぐずる男女計四名を無理矢理進ませ、なんとか三階のトイレに辿りついた。ここまで来るのに何分かかったんだ。
「ふーん、ここが出るトイレか」って、翔と建二が冷静に言ってる。「普段は女子トイレの入口なんて見たくても見れねぇからな」ってさぁ、何考えてるんだよ・・・。怯えてブルってる蓮よりはマシかもしれないけどさ。
今はもう関係無いから入って良いよっていう琴音に続いて男子達が入って行くと、流石に怯えてた女子達も入ってきた。つまり、計八人がトイレに入ってるわけなんだけど、流石に狭いっすね。
で、とりあえずトイレのドアを一つ一つ開けて行くことにしたのよ。個室は全部で五つ。皆で緊迫した雰囲気で開けたんだけど・・・まあ、やっぱり何もなくて。
トイレの証明もつけてたし、廊下の電気も点けちゃってたし、なにせ人数が多いから、居ても出ないだろうとは思っていたけどね。
でも皆期待してたのか拍子抜けしちゃって、トイレしていこうって話になったの。苺が、「安心したらトイレ行きたくなった」って言ったら、「じゃあ、皆でしていくか」みたいな話になって。
女子も男子もトイレに行ったのよ。私は一番前のトイレに入った。
で、早々に女子トイレから出てきたのよ。男子三人はもう出てきてた。
女子も次々出てきたのよ。三和、琴音っていう順番で。でも、苺と心春がいつまでたっても出て来ない。
そろそろ心配になって、見に行こうかって話になったところで心春が出てきた。
心春曰く、「今ちょっと便秘気味で」遅くなったらしい。どうでもいいね。でも、出てきたのは自分が一番最後だったらしい。じゃあ苺はどこに行ったのかと思って女子トイレに入って行っても、本当にいない。
「怯えてたみたいだし、こっそり帰ったんじゃねぇの?」という男子達の声を信じ、ともかく先へ進むことにした。でも、一人でここから帰るよりは、私たちと一緒に来た方が怖くなかったんじゃないかな、なんて思ってた。
二つ目は、体育館のバスケットボール。死んだ生徒がバスケットボールをついているらしい。これも結構有名なやつなんじゃないかな。
私はよく知らないから、そうゆう情報網に詳しい心春の話を聞きながら、一階にある体育館の入口に向かったんだよ。ビクビクしてるけど、前もって情報集めてたんだね。
皆少しは慣れて来たのか、さっきよりは早く歩いてくれるようになった。まったく、助かったよ。あれ以上遅くなったらどうしようかと思ってた。
蓮は相変わらずビクビクしてるけどね。まったく、男だったらもう少ししっかりしてよ・・・。他の男子なんか、どっかのクラスから拝借したリコーダーでチャンバラやってるよ。何のために来たんだあいつら。
まあそんなこんなで体育館に着いたんだよ。真っ暗な中に月明かりがぼんやりと差し込んでて・・・なんだか不気味だったよ。
だけど、怪談を調べに来てるはずなのに、蓮以外の男子二人がはしゃいじゃって、「体育館独占ちゅー!」とか言いながら走り周り始めたの。ガキかって話なんだけど。
でもさ、確かにこうして見ると体育館って結構広いんだよね。今まで全校集会とかの、人が沢山いる中でしか来たことなかったからさ。それで男子二人を除いて、みんなで体育館をしげしげ眺めてたの。
だけど突然、建二の声がしたんだよ。「翔がいなくなっちまった」って。器具室の前からだった。
どうやら、二人で鬼ごっこしてたらしくて。建二が鬼で、翔が逃げてたらしいんだけど。それで、翔が器具室に入って行ったから、建二も入って行ったんだと。でも、中には誰も居なくて、不気味に思ったから皆を呼んだんだと。
私たちも中に入って探して、名前を呼んだりしてみたんだけど見つからなくて。最後には翔が皆を驚かせるためにわざと帰ったのかもしれないって話になったんだけど、私にはそうは思えなかった。
だって、器具室の床にひとつだけ落ちてたんだよ。バスケットボールが。
器具室はそうゆう物をしまっておく場所だから、偶然かもしれないけど、やっぱりそうは思えなくて。
皆もさすがに嫌な予感がしてきて、帰ろうかって話になった。まさかとは思うけど、ね・・・。
それで、最後に、「翔、出てこないんなら置いていくからなー!」って建二が言ったんだけど、結局出て来なかった。
それで、早々に体育館を後にして、私たちが入って来た教室に向かったの。
偶然かもしれないけど、二人も人が居なくなっちゃって。三和なんか足が震えてた。
だから皆で一丸となって廊下を歩いてたんだよ。皆、他の人から見られない位置に居たら消えるとでも思っている見たいに。私は、男の癖に怯え過ぎて前も見れない蓮の隣を歩いてた。三和と琴音は手を繋いでたよ。いつもだったらそれを笑い飛ばしそうな建二も、今回ばかりは黙ってた。
だけどね、もうすぐその教室に着くって時に、心春が異変に気がついたんだ。「なにか足音が聞こえない?」って・・・。琴音も、「そういえば、一階の廊下にもそうゆう話があって・・・」って。
まさかとは思ったけど聞こえるの。ヒタ、ヒタって、その教室のある方向からさ。
これが用務員とか先生だったら良かったんだけど、明らかに違うって皆わかってた。靴の音じゃなかったってのもあるけど、なんだか・・・雰囲気が違ってた。
でも、私を含め、皆、その場から動けなかったの。恐怖で感情がフリーズしてたのかもね。だけど、ここは真っ暗な廊下でしょ。それでもはっきりとその歩いてる足首が見えるようになったんだよ。私達から数メートル離れた位置に来た時に。薄ぼんやりと光り、足首から上が無いそれは、明らかに人じゃなかったよ。
だけど、そこまで見たところで蓮が限界を迎えたの。「ぎやあああああああっ!!!」って、ありえないくらいの悲鳴をあげて。
それを合図に、皆駆け出したんだ。一番足が早い建二が、「こっちだ!」って西階段を指指して。
でも、三和が恐怖のあまり転んじゃったの。「助けてえええ!」って必死の形相で叫ぶんだけど、人間じゃない物に命を賭けて三和を守ろうって人は居なかった。皆それどころじゃなかったんだ。
だから、必死で階段を駆け登った。最後に恐ろしい三和の絶叫が聞こえたけど、それすらも気にならないくらい全力で走ったよ。涙が出ようが涎を垂らそうが、股間から変な液体が漏れていようが皆気にならない。
光の速度で階段を駆け登ってさ、琴音と並んで三階に着いたと思った時、琴音が隣でこう呟いたんだ。「十三段ある」って。
その次の瞬間、琴音が消えたんだよ。階段から落ちた訳でもなければ、四階の階段へと向かった訳でもなかった。本当に消えたんだよ。まるで、部屋の電気を消したかのように。プツッと、音も無く、ね。
でも、その時はそれどころじゃなかったから、驚きとかはあまり感じなかったよ。
だけど、皆で三階の美術室に駆け込んで机の下にしゃがみ込んだら、一気に恐怖が押し寄せて来て。
裸足の足首に捕まろうとしている三和の顔や、「十三段ある」と呟いた琴音の絶望的は顔が、鮮明に思い出されてきたのね。体がだらし無くガタガタ震えて、涙がボロボロ零れた。蓮なんか漏らしてたよ。
机の下に隠れて、しばらく経った頃かな。五分経ったのかもしれないし、ひょっとしたら数十分経ってたのかもしれない。恐怖で誰も動けなかったから、時間の感覚とかも麻痺してた。
「うわああああっ!」って、建二が叫んだの。隠れた場所も別々で各自離れたところにいたから、机の下からじゃ見えなくてーーー嫌な予感もしたけど頑張って机から這い出して立ち上がったんだ。何かが暴れてる音もしてたし、今までの出来事から、ただ事じゃないことはなんとなくわかってたしね。
そしたら、ビンゴだったの。意味は分かるよね。
美術室に飾られてる手や顔、動物なんかの彫刻が、建二に襲いかかってた。建二が暴れてるんだけど、所詮多勢に無勢で。私は動けなくて立ち尽くしたよ。悲鳴も出なかった。
でもね、恐怖ですくんで動けずにいたらね、人が見えたんだよね。ぼんやりと。さっきの足首みたいに。
明らかに透けてて、若干光ってて・・・私に背を向けて建二を見下ろしてたんだ。
もうそこで限界だったね。
「ぎゃああああ!!」って悲鳴をあげて、全速力で美術室から飛び出した。無事だった蓮と心春も、私の後に続いて走ってきた。どこを走ってるかなんて見当もつかないんだけどね。
たどり着いたのは、三階の東ホール。最初八人いたメンバーは、私も入れて三人になってた。
私と、心春と、蓮。たった三人ぽっち。笑えないね。
蓮は漏らしてる挙げ句最早足がガクガクしてた。私も酷い顔してる自信はあるけど、あそこまで酷い自信は無いなって顔してたよ。
それとくらべると心春はマシだったかも。怯えて震える蓮と私を必死に落ち着けてた。ありがたい限りだよ。
数分経って、少し私達が落ち着いてくると、心春が意を決したように話し始めたの。「話したいことがある」って。
今更改まってなんなんだって思った。何か重要な話なら早く言えってね。嫌な予感はがっつりしてたけど、蓮と私は頷いたよ。他にどんな選択肢があるってのさ。
『言うんなら早くしろやオーラ』を醸し出す私の視線の先で、心春はありえない程落ち着いた声で話し始めたの。
「私のお母さんの一族は代々、悪霊を掃って人助けをしているんだ」って。
私は耳を疑ったね。悪霊を掃う一族ならさぁ、どうして他の五人を助けなかったのさ。あの五人に何が起こったかなんて、そんなのもうわからないけど・・・無事ではないことは確かだよ。
異世界に連れて行かれたか、殺されたかーーーいくら考えてもゾッとするよ。
蓮も意義を唱えたそうな顔してたけど、心春は「後にして」って言って遮った。
そのまま話しを続けて、「でも、そのせいで私の家族がこの学校の悪霊に目をつけられて、私の親族を皆殺しにしたの。 私と血の繋がった七人が殺された」ってさ。
やっぱりここでもゾッとしちゃったね。親族を全員殺されたって?
そういえば、心春はお父さんもお母さんも既にいなくて、祖父や祖母もいないから従兄弟の一家が面倒を見てるって話を聞いたことがあるような気がする。
でも、それよりも気になるのは殺された人数の、七っていう数字。偶然だとは思うけど、七不思議と数が同じじゃない?
それは、心春の次の話で明らかになった。「殺されたのはお母さんのお父さんとお母さんーーーつまりおじいちゃんとおばあちゃん、お母さん、お父さん、弟の和真に、妹の友紀菜、叔母さんに従姉妹。 この七人は、この学校の七不思議となったの」だってさ。思わず笑うかと思ったわい。でも、心春の話はまだ続いた。
「七不思議となって、生徒を驚かしてくるくらいだったらまだ良かったんだけどね。 この七不思議の面々は、数年に一度、入れ代わるようにできてるんだよ」って。どうゆうことだかわからなかった。
それに気がついたのか、心春は説明を続けた。「つまり、七不思議となって生徒や先生を脅かすメンバーは、数年に一度のペースで交代してるの。 だから、今七不思議となっている人達は、私の家族じゃなくて、見ず知らずの他人なの」、と。
面倒臭そうだけど、要はうちの学校の七不思議達のメンバーは、数年に一度のペースで、学校に居た見ず知らずの誰かと交代してるってことだよね?つまり、今までで消えた五人のメンバーは、旧七不思議メンバーと入れ代わりで・・・。
ちょっと頭が他の人より弱い蓮は、頭を捻りながら今の話を理解しようとしてた。いつも補習のメンバーだからなぁ・・・。
「ここの学校の七不思議のうち、五つは出た通りよ。 トイレの花子さん、体育館の勝手にはねるバスケットボール、裸足で歩く足、十三階段に、美術室の動く作品。 琴音が途中で言ってた、『引き込まれる大鏡』の話は偽物」
マジっすか。でも、残りの二つはなんだろう?
蓮は理解したのか諦めたのかは知らないけど、わざとらしい真剣な顔で心春の話をきいてた。ああ、やっぱりこいつは阿保だな。
「残り二つのうちの一つは、窓ガラスから伸びる手。 どこの窓からかは知らないけど、窓から白い腕が出てきて、引き込まれるの」
ああ、引き込まれるってところがちょっと似てるから、多分この話が大鏡の話と一緒になったんだなぁ。
そんなこと考えてないとやってられないね。
蓮は顔が引き攣ってますね。わかりやすい阿保ですね。私も酷い顔してるんだろうな。
それと比べると心春冷静。冷や汗は滲んでるけど、私達よりは顔色良いよ・・・。
「七つ目は私も知らないの。 調べたけど、どこにもなくて」
どこを調べれば載ってるんだか。そこまで調べられた心春や琴音に驚き。
「じゃあ、俺達はこの後どうすれば良いの?」
そうそこが問題だよね。助けを求めて心春をみたけど、心春は首を横に振った。
「窓ガラスから離れて、ここから動かない方が良いわ。 明日こっぴどく叱られるでしょうけど、この際仕方ない」
まあ、どこか訳のわからない場所に引きずりこまれるよりは良いよね。
私と蓮もそれに同意し、ホールの真ん中で身を寄せ合って眠ることにしたんだ。蓮の腕時計の針は深夜の1時を過ぎてた。
眠れないよね、と思ってたけど、疲れてたからぐっすり眠っちゃったんだよね。
なんかこう、不可抗力だよ。すっと眠りに着いちゃってさあ・・・思えば、それが悪かったんだね。
彼女が眠りについてから十分くらい経った頃だろうか。心春が彼に話かけてきた。「ようやく二人きりになれたわね」、と。
彼は黙っていた。表情一つかえず、横たわっていた。
心春は、上体を起こし、背中を向けたまま沈黙を貫く彼を睨みつけた。
「黙らないで。 最後の一つはあなたでしょ。 『一人増えてる謎の生徒』。 皆気がつかなかったけど、あなたはどこのクラスの人でも無いでしょう」
彼は鼻で笑った。もう、起きていることはばれているだろう。いや、そもそも寝ることは無いのだ。ここ数年、その必要はなく、そもそも出来なかった。
「あなたには消えてもらうわ。 救えなかった五人のためにも、今ここで!」
心春は立ちあがり、蓮と呼ばれていた同年齢の少年にお札を投げつけた。
バシィッ!
お札が床に叩きつけられる。彼はすんでのところで転がって避けたのだ。その拍子に、隣で寝ていた彼女の体が転がった。
「そうだね、僕は消えたいな。 お前を身代わりにして」
さっきまでの怯えた表情はどこへやら、彼はニヤリと不敵に笑った。
心春はそれを不気味に思ったが、表に出さないように経文を唱え出した。この時のためにずっと練習をしてきたのだ。一語一句間違えず、流暢に唱えていく。
しかし、蓮の表情は全く変わらなかった。相変わらず不気味な笑みを崩さない。
「僕らは学校の七不思議で、君達の一族の役割を引き継いでるんだよ? 君の力で成仏させられる訳ないじゃん」
そうゆうと、彼はゆっくり心春に近づいて行った。心春は明らかに怯んだ。
すでに彼の後ろでは、窓ガラスの近くまで転がっても尚眠り続けている彼女の体が、ゆっくりと白い腕によって窓ガラスへと引きずりこまれていた。
心春はそのことにも目もくれず、とにかく蓮から目を逸らさなかった。それどころではなかった。
しかし、もう勝敗は決していたと思われた。心春は恐怖から動けなくなっていたのだ。彼は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
彼の手が心春の頬に触れるか触れないか、わずか数センチになったときだった。
バシッ!!
彼女の手に握られたお札が、彼の頬に直撃していた。彼の体が頭から消えてゆく。
信じられなさそうな顔で消えていった彼に、なんの言葉もかけず、心春はそれを見守っていた。
七不思議が六不思議になった。親の敵をとった。
心春は一人、焦燥感や達成感にまみれながら、一階の、入って来た教室に向かって階段を降りて行った。
最後の展開が急だったかもしれないです。
そして、よくあるような話だったかもしれないです。
気がついたらどこかでみたことあるような普通のオチになっていました。




