Ⅰ:集められた人達
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ここは、どこだ…?
辺りを見回してみる。あたりが真っ暗で何がなんだかわからない。俺は確か、学校で普通に授業を受けてその帰りだったはず…
いや、その帰りからの記憶が全くも
ってない。
俺はようやく目が慣れてきたのか、見えてくるようになったので、辺りを見回す。広さは、10畳くらいだろうか?そこには、血だらけになったノコギリや包丁、拘束具、ギロチン、カナヅチやペンチなどの拷問器具としか思えない物が大量に置いてあった。
その光景だけでも圧巻であったのに、腐った生臭い鉄のような匂いが俺の鼻を刺激して嘔吐してしまう。
パニックになりそうな衝動を抑えて必死に状況を整理する。
俺は多分この施設?かどこかに拉致監禁されているのだろう。手は自由に動かせるが、足首には手錠のような拘束具が付いており逃げることは困難そうだ。
もっと辺りを見回してみる。
俺以外にも人がいた。6人程であろうか。俺と同じ高校生くらいのやつから大人までいる。
「君、良かった目が覚めたんだね。」
隣から声が掛かり目を向ける眼鏡の20代後半くらいであろうか?優しそうな人がいた。人がおり、このような状況で喋れるという安堵感が俺を包み泣きそうになってしまう。
「僕は、大槻 けんや。君の名前は?あ、急に名前なんて失礼かも知れないが、こんな状況なんでね。少しでも話して気を紛らわせたいんだ。」
けんやと名乗るその人物は、優しくゆっくりと自己紹介をしてきた。実際俺も話し相手が欲しい。少しでもこのわけのわからない状況を理解したい一心で返事をした。
「けんやさんありがとう。俺は吉沢 いつきって言います。すみませんこの状況って…」
俺は、もうパニックになるのを抑えて自己紹介をした。
これに対してけんやさんは
「すまない。この状況に関しては僕もさっぱりなんだ。仕事から帰っていたはずなんだが…気付いたらここに…それに頭が上手く働かない。」
けんやさんも俺と同じ状況らしい。実際、記憶も完全に飛んでいる。この薄暗い部屋、なおかつこの拷問器具の数に頭が回るはずもない。
「他の人達は…?」
その質問に対してけんやさんが答えてくれた。
「あぁ…それなら、話しかけてみたが、皆パニックになっているようだ。けれど、自己紹介くらいは出来るだろう。こういう時こそ自分を確かめないと…」
その、けんやさんの言葉に少し救われる。俺自身も自己紹介という形で自分を確かめることが出来た。
最早恐怖という感情を超えて無になろうとしていたからである。
「皆!聞いてくれ!よかったら自己紹介しないか?こんなわけのわからない状況なんだ!少しでも自分を確認しよう!俺は、大槻 けんやと言う!嫌ならしなくてもいい!」
けんやさんがそう言ってくれた。
それに、賛同するかのように俺も自己紹介をする。
「俺は、吉沢 いつきっていいます!」
それに、続くかのように自己紹介が始まった。喋れるという安堵感からであろう、皆以外にも冷静に答えてくれた。
「ぼ、僕は山中 たけしって、い、いいます。」
たけしと名乗る人物は、太っていて見るからにオタクという表現がぴったりのような人物であった。
「私は、古川 しゅんと言う。」
しゅんと名乗る人物は、シュッとした銀縁メガネをかけた、いかにもエリートサラリーマンというような人物であった。
「わ、私は、栗林 あかねと言います…その…なにがなんだかさっぱり…」
あかねと名乗る人物は、俺と同じくらいの高校生であろうか?それに制服も着ている。いたって普通の高校生という感じだ。
「私は、鬼輪 さえと言います…息子の幼稚園の迎えに行っている途中だったのですが…なんでこんなところに…」
さえと名乗る人物は、美人な人妻というような感じだ。
「俺が最後かな?俺は森 ひろきってんだよろしくな。」
ひろきと名乗る人物は、高校生くらいのヤンキー?というような感じであった。
合計で俺を含めて7人もの人がこの空間に集められた。なぜ?だれが?何のために?わからない。
その時である。部屋のはじにあるモニターがいきなりついた。
そこには、椅子に座った熊の可愛らしいぬいぐるみが映っていた。
「やぁやぁ!皆さん!僕の名前はマスター!よくお集まりで!何でここに集められたのかわかるかな??」
陽気な声で熊のぬいぐるみが喋ってきた。
「ふ、ふざけるな!僕は何でこんなところに!」
たけしがマスターと名乗る熊に怒りをあらわにして食ってかかる。
それに同調するかのように皆が野次を飛ばす。
「あー!あー!うるさいなぁ!ねぇ?山中 たけし君?君ってさ、2年前に8歳の幼女を誘拐、拉致監禁して酷い性的な暴行を加えた後殺したよね?」
その発言に、皆の空気が固まった。視線がたけしの元へと集まる。
「ぼ、僕はそんなことしてない!」
たけしはマスターに対して食ってかかったが、
「そんな、やりそうな見た目でやってませーんなんて、説得力無いよね。ギャハハハ」
熊のぬいぐるみはたけしを嘲笑い突っぱねてしまった。
「まぁね?僕の話を信じるか信じないかは君達しだいだけどさぁ?そこにいるだけし君だけじゃないはずだよ?世の中で言うところの犯罪しちゃう、生きる価値ないクソみたいな人は。ギャハハハ」
また、面白おかしそうに熊のぬいぐるみは笑っていた。
俺は周りを見渡す。目線が泳いでいるもの、下を向いているもの様々である。
しかし、俺は犯罪など犯した記憶などはない。なのに…なんで!
「マスターとかいうやつ!俺は犯罪などしていない!」
その反論に対してマスターはまた嘲笑うかのように答えた。
「んー?君はいつき君かな?あー。君は小さかったしねえ。ブラックアウトしてるのかな?まぁ、犯罪には変わりないからいいや!ギャハハハ!」
何が何だがわからない。ブラックアウト?小さかった頃?ふざけるな。
反論しようとした時。俺は頭痛に襲われた。
なんだこれは?
そうしているとまた、マスターが話し始めた。
「んじゃ本題に入るねん!君たちクズは君達の手で裁くってのが一番面白いと思うんだよね!ってことで、これから君達には殺し合いをしてもらいまーす!」
また、マスターと名乗るこの熊のぬいぐるみはギャハハハと高笑いをし、シーンとしたこの空間にに響き渡った。