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短編【文学】集(1)

虫の夜

作者: 蠍座の黒猫

薄が銀色に照り返す一面の野原で、


二本の銀杏の木が語らっていました。


三日月は天高く昇っていました。


雲が黒くまたは透けて


詩の欠片が、その間を翻りまた翻り渡っていきます。




「気が狂いたかったの。」


「そうなんだ。」


「銀杏がね。薄緑いろの葉っぱなの。」


「そうなんだ。」


「明るすぎる黄色に弾けてしまう前に、見ておかないと。」


「なぜなの。」


「何か欲しいんだけど、わからないの。」


「どこなの。」


「どこかに行かなければいけないの。」


「心臓だね。」


「どきどきが治まらないの。」


「何かを言いたいけれど、どうすればいいか、わからないんだ。」


「あの日に植えた銀杏の実が、必ず芽を出すと知っていたの?」


「知らなかった。僕の胸に銀杏の実が植えられていたことも。」


「ずいぶん育っているわ。私の銀杏の実も。」




何か虫が鳴いています。


私は、無学につきその虫の名を知りません。


でも、あちらで、またこちらで、鳴いています。



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― 新着の感想 ―
[一言] まるで、銀杏が互いにささやき合っているかのような、そんな場面が浮かんできます。 それはもしかしたら、風が葉を揺する音かもしれません。木の下で休む人達の会話だったかもしれません。 ただ静かに、…
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