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落ちこぼれ騎士と銀のゴーレム  作者: ベンソン
第2章 災いの始まり
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第1話 スカーレット その1

やっと投稿が出来ました。


次はなるだけ近いうちに投稿できればと思います。

 草木が生い茂った深い森の中。

 そこを駆けていく2つの影。


 黒髪の筋肉質な青年と、その半分程の背丈しかない少女が必死の形相で走っている。


 「くそ、何だあいつらは!」


 「小僧、妾を置いていけ!お前も巻き添えを食らうぞ」


 後ろからは大量のリスがビッシリと地面に隙間を作らずに、雪崩のように追いかけてくる。


 目の前にいたカモシカの横を通りすぎると、“ギェェエエ”という断末魔が聞こえてきた。


 振り返ると、逃げ遅れたカモシカがリス達に飲まれ骨だけになっていた。


 「「ゲッ!」」


 その光景を見て顔面蒼白になる少女とアル。


 「生意気な口をきくな、ああなりたいのか?」


 「ああは、なりたくはない!なりたくはないが巻き込みたくない!」


 「もうとっくに巻き込まれてんだよ!」


 隣を走る少女の首根っこを掴むと抱き抱えると、一瞬で体勢を低くしてさらに加速する。


 少女は“キャッ”と声をあげて驚く。


 前方に木が生えていないのか、外の光が射している。


 しばらく走っていると、視界が広がり、先に道がない事がわかる。


 「まずい、崖だ」


 このまま走っていくと確実に崖の下に転落してしまうし、方向を下手に変えると小回りのきくリス達にあっという間に追いつかれてしまうだろう。

 

 少女はなんとか方向を変えることができないかとあたりを見回すが、木々が邪魔をして走れなさそうだ。


 後方からは“ギャギャギャ”とリス達の鳴き声が波のように聞こえる。


  少女の顔に不安の影がよぎる。


 「ちゃんと掴まってろよ」


  アルは少女を強く抱きしめると崖に向かってさらに加速する。


 「おい、何をする。聞いているのか小僧…」

 

 「下を見るなよ」


  アルは大地を強く踏みしめると大きく跳躍した。


 「え?いゃぁぁぁぁあ」


少女は下に広がる底が見えないほど深い谷底を見て絶叫した。





 2時間ほど前。


 アルとレイは森の中を歩いた。


 「アル、腹へったね」


 「朝飯食ったばっかりだろ」


 「作ってくれよぉ、なぁ、なぁ!」


 レイは目を赤く点滅させて嘆いていた。


 一緒に旅をするようになって数週間、私は毎日このようにねだられて食事を作っている。


 しかもよりによって手のかかる料理ほど欲しがるのだ。


 「頼むよぉ…あれ?」


 レイの視線の先には川があり、岩の間に少女がぐったりとした様子で流されずに止まっている。


 私は、急いで駆け寄って少女を引き上げると呼吸がしやすいように仰向けに寝かせた。


 そして顔をバシバシ叩きながら大声で話しかけた。


 「おい、大丈夫か?聞こえるか?大丈夫か?」


 少女は大量に水を飲んでしまっていたようでしばらくするとゴホゴホと水を吐き始めた。


 「…人間、臭い」


 「何いってる?頭を打ったのか?」


 少女は“う~ん”と声を漏らすと目を開いた。


 「無礼者!人間風情が妾に触るでない!」


 少女はアルの顎をかかとで打ち抜くと素早く立ち上がる。


 「いてぇ!」


 むすっと顔を膨らましている少女は軽装ながらいかにも高そうな服を着ていた。


 いるんだよなぁ、こういうお高くとまってるお嬢様。


 きっとどこかの田舎貴族の娘だろう、自分たち貴族は並みの人間より高貴な存在なのだと勘違いしているのだろうか。


 まあ、従者が近くにいないことと、ずぶ濡れで倒れていたことを見るに何かしらの事件に巻き込まれているにちがいない。


 騒ぎになるのは困るが、無視することはできない。



 「自業自得だ!」


 少女はアルが叩いた両頬をさすりながらで怒鳴った。


 「ああ、痛いのか、ごめんな。とりあえず火を起こすから、体を暖めた方が良い」


 少女は、私がそう言うと可愛げ無く“ふんっ”と言ってそっぽを向いた。




 少女は私が焚き火を用意すると手を広げ、体を温め始めた。


 服が体に張り付いて気持ち悪そうだ。


 「やっぱり服を脱いだらどうだ?乾かないだろう」


 「脱げるわけないでしょ!」


 「はいはい」


 私はそう言うと脇に流れている川に向かった。


 私は木の枝から先端を刃物で尖らせた串を作り、魚に向けて投げると、水面に浮かんでくる魚を掴んで串を刺し直し、焚き火の回りに囲うように地面に突き刺して焼き始めた。


 「相変わらず器用だな」


 レイはそう言いつつ、焼いている魚を触ろうとしている。


 「おい、触るなよ」


 「ちぇ、きっともう食べれるよ」


 「待てと言ったら待つんだ、馬鹿者!」


 私はこいつと話していると人の親になったような気持ちになる。


 「妙だな」


 突然少女が喋りだした。


 「お前がそのゴーレムを喋らせてるのか?」


 マズい、ここでベラベラとレイについて話したら面倒なことになる。


 ゴーレムなのに喋る、物を食べる、魔力を与えなくて活動する、特殊な魔法を使う。


 見せ物としては勿論、その道の学者たちは血眼になって欲しがるだろう。


 「失礼な、私は私の意思で生きている…」


 余計なことを話し始めたので急いでレイの口をふさいだ。


 本当に食べる事以外何も考えていないようだ。


 「自分の意思を持っているのか?それはすごいな…」


 「ま、まあな。あまり人には知られたくないから他言無用な」


 「ふん、妾は人にベラベラ話す趣味はない」


 確かに少女はそんなに人に話すようには見えないが、人の口に戸は立てられぬと言うし用心をしなくてはいけない。





 食事は私と少女だけでいただいた。


 無論、これ以上レイが特殊なゴーレムであると知られないためだ。


 「小僧、なかなか旨いじゃないか」


 「その、小僧というのをやめないか。私はアル、このゴーレムはレイだ」


 「妾はスカーレットという。遅くなったが助けてもらったことには感謝する」


 少女は干し肉と乾燥キノコのスープを飲み干すと満足そうに話し出した。


 「なんで、こんなところに一人で倒れていたんだ?」


 私がそう問うとスカーレットというその少女は簡単にいきさつを話し始めた。


 「多くは語れないが、妾は従者をつれてこの国の王都での会談に出席した帰りだった。そこを何者かに襲撃され、従者達を置いて逃げてきたのだ。そして逃げている途中で足を滑らせて流れが早い川に落ちてしまい危うく死んでしまう所だった」


 …私たちは思っていたより、すごい事件に巻き込まれたみたいだった。


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