第7話 旅立ちと陰謀
その日は宴だった。
皆、口々に私とゴーレムに感謝してくる。その度に、にごり酒を灌いでくるためさすがに酔っぱらってしまった。
「うまぁぁぁ!このシンプルながらも食材の良さを最大限に引き出す炙り加減でキノコの香りが損なわれていない!そして塩加減も濃すぎず、薄すぎず素晴らしいぃい」
ゴーレムは魔法を使ったためかしばらく動かなくなっていたのだが、私なりに彼を労って出会った時に好評だったポルチの串焼きを作ってやると目を覚ました。
そして、串焼きの他にも村の人々が作ってきた料理を一心不乱に貪っていた。
ふと目をやるとソルは村長の家族や村人たちに頭を撫でられてくすぐったそうにはにかんでいる。
盗賊に立ち向かっていった彼の勇気を目にし、皆心を開いたのだろう。
翌日、盗賊たちは村の柵の修理をさせられた後に罪人を取り締まる地方都市まで連れていかれることが決まった。
昨日倒した魔法使いは炎を出して何度か逃亡を試みたようだが、目隠しをされて狙いがつかないことと、ボスを人質に取られたことでおとなしくなった。
私とゴーレムは改めて村を出ることになった。
村を出るとき、村人たちがたくさん干し肉や乾燥したキノコをくれた。
ソルは私とゴーレムに深々と頭を下げて感謝していた。
「俺もいつか騎士様のように人を守れるようになる!」
ソルはどうやら今回の事で、人を守る仕事がしたくなったらしい。
彼の目は普通の少年の目にもどりキラキラと輝いていた。
私はただ、“頑張れ”と声をかけ、村をあとにした。
村から少し離れた丘で少し休むことにした。
「これからどうするつもりだ?」
「わからない、私は何か重要な任務を受けていた。それを知りたい」
私はゴーレムに言わねばならないことがあった。
「わかった。では私がお前の記憶を取り戻す手助けをしよう」
今回の件で私にとってゴーレムは命の恩人になってしまった。
元騎士としては、恩人の願いを叶えてやりたかった。
それに、こいつとなら失った何かを取り戻せるかもしれない。
「良いのか?」
「嘘はつかない。とりあえず、ゴーレムについて調べよう。ここから西に向かうと大きな都市がある。都市には少なからず図書館があるからそこで何かわかるかもしれない」
「本当か?」
「まあ約束は出来ないが、お前ほど特殊なゴーレムなら何か手がかりがあるはずだ」
「ありがとう、なんと礼を言っていいか…」
「気にするな、どうせあてのない旅をしていたんだ」
「ふふ、これでこれからもアルの飯が食えるな」
ゴーレムが嬉しそうに話す。
「うーん、いい加減“お前”っていうのもなんだな、…名前を決めよう」
「名前か」
「そうだ、“レイ”というのはどうだろう、古代の言葉で光を意味する言葉だ。魔法を使うときに体が光るお前にはぴったりだろ」
「レイ…か。良いな」
「よし、じゃあお前は今日からレイだ。宜しくな」
「ああ、宜しく」
二人は手を合わせ固く握った。
一方、時を同じくして遥か遠く離れた場所で話し合う3人がいた。
その空間はひどく暗いため姿はわからないが、声色からして若い男女と歳をとった男である。
「昨日、“牢”が動いたそうだな」
と青年が聞く。
「ああ、間違いない。一度ならまだしも数回、空間に波紋が生じた。おそらく意図的に行われたものだろう」
と老人が答える。
「意図的に?ということは“奴ら”が現れたの」
と女が答える。
「そう考える事も出来るが、波紋から推測するに”この牢に居た者”かもしれない」
「そんなことあるはずない、そう言っていたのはあなたじゃない!」
老人がそう答えると女はひどく動揺して答えた。
「まあ落ち着いてくれ、まずは私が様子を見よう。どちらにせよ私たちは確かめなくてはならない」
「確かに、その通りね」
「お前なら適任だろう」
青年の発言に女も老人も賛成した。
「もし本当にこの牢に居た者だとしたらどうするの?」
「その時は…なんとしても抹殺せねばならない。まだ牢を破らせるわけにはいかないのだ」
老人がそう言うと残りの2人が静かに頷いた。
予告通り村を出ました。
一応あらすじに、スタイリッシュ☆アクションラブストーリーになればいいと言っていたのに、今までの投稿をみて主人公が男としか喋っていないことに気がつきました(苦笑)
ラブの部分は出てくるかわかりませんが次回からやっと女の子出します!
乞うご期待!!