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落ちこぼれ騎士と銀のゴーレム  作者: ベンソン
第2章 災いの始まり
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第18話 災いの始まり その1



 気がついたら黒犬の姿は無くなっていた。


 その場にいたガナリア騎士団の大半が破壊された建物から人々を避難させ、けが人の手当をするなど戦闘後の後始末に力を尽くしていた。


 そんな中、私とレイは騎士団に身柄を確保され大きな屋敷に連行された。


 そこは騎士団の駐屯地であり、罪を犯した者の身柄を一時的に確保する牢屋がり、私たちはそこに押込められた。


 そして、しばらく牢屋に中で拘束されたあと事の顛末の説明を求められた後に釈放された。


 正直、レイの力を使えば簡単に牢から出れたのだが、レイは先の戦いで力を消耗しすぎていたし、私としてもこれ以上騒ぎを大きくしたくなかった。

 レイは壁に背中をぴったりとつけると、そのまま魔力切れを起こした時と同じように寝てしまい、私も同じように壁にもたれかかって時間が過ぎるのを待った。


 事件の規模からして、釈放されるまで数日かかると思ったのだが、どうやらその場に居合わせた住民達が私とレイを擁護してくれたらしく、目撃者も大勢いたため罪をとがめられることはなかった。


 むしろ住民からすると私は命がけで助けてくれた英雄であり、牢に入れるなどもっての他だと抗議する者すらいたようだ。


 牢を開けに来た若い騎士も“町や民を守って頂き感謝いたします”と頭を下げて来た。


 その表情には心苦しさがにじみ出ており、この若者が私とレイに対して申し訳なく思っていることが伝わって来た。


 私としては、岩のゴーレムが自分を捜していたような事を言っていたので、住民達を巻き込んでしまった気がして罪悪感があるので素直にその言葉を受けいれることが出来なかった。


 ちなみに、岩のゴーレムが自分たちを捜していた様子だったということは黙っていた。


 それを話した所で、騎士団がどうにかできるとは思えないし、もしかしたら誰かをまた巻き込んでしまう気がしたからだ。


 頭を下げた騎士の後ろにはあの金髪の少年と騎士団の隊長らしき男が立っていて、この二人も同様に頭を下げた。


「これは、ただの旅人風情に騎士樣方が頭を下げるなど…」


「いえ、私たちは自分たちの代わりに町を守って頂いたアルフレッド殿に頭が上がりません。ガナリア騎士団隊長として感謝致します」


「は、はあ」


「私もたいした事も出来ず、すっかりあなたに助けて頂きました。体を張って

 民を守るお姿は、おとぎ話に出てくる騎士の様で胸が熱くなりました」


 金髪少年の“おとぎ話に出てくる”という発言は騎士としてはなんともは子どもっぽい。

 一瞬冗談かと思ったのだが、彼のまっすぐな眼差しを見ると嘘を言っていないとすぐにわかった。


 それにしても、魔法の使えない私が王都騎士に評価されるとは何とも皮肉である。


 私は体中が痒くなる思いをしてこの二人の話を聞いていた。



「もしよろしければ、お礼も込めまして一緒に夕食などいかがでしょうか?」




 食事…、まずい事になった。


 確かに私とレイは腹を減らしている。


 それも何でも良いので一刻も早く食べたいと思うくらいに。


 しかし、レイは物珍しいゴーレムということを隠すために人前で食事をする事を禁じている。


 しかも相手は、魔法のプロフェッショナルである王都騎士団の一人。


 自我を持ち自ら食事をとるゴーレムの存在を知ったら、国の魔法技術を上げるためにレイを捕えかねない。


 捕えられたら最後、レイはバラバラに分解され体の隅々を調べ尽くされるであろう。


 命の恩人をそんな目にあわせられないと思うのは当然の事だろう。


「ああ、せっかくなのですが、その…」


「そんな、ご遠慮なさらずに。ここは市民を救って頂いた感謝の気持ちを受け取って頂きたいのです」


「今夜は何かご予定があるのですか?」


「い、いえ。そう言うわけではないのですが…」


「それじゃあ決まりですね。君、馬車の用意をしておくれ」


 私が断りを入れようとすると、なぜか隊長と金髪少年がそれを遮るように話しかけきていつの間にか断れない状況になってしまった。


 何か、罠にはめられた様な気がするがあの様な事件があった後に夜に町を出ようとするのはあまりにも不自然だった。


 本当はすぐにでもこの場を離れたいのだが、しょうがない。


 レイには悪いが、この二人の招待を受ける事にした。





 隊長さんが招待してくれた店に向かう間、私とレイは馬車に乗って移動していた。


「初めての馬車はどうだ?普段と違った景色が見えるだろ」


「…」


 レイは普段だったら初めて乗る馬車にはしゃぎそうなものだが、今は外に顔を向けてこちらを見ようとしない。


 レイは、自分だけ料理を食べれないと知って、すっかりすねてしまった。


 機嫌を直して欲しくて声をかけると精一杯の嫌みを口にしてくるので頭を抱えた。


「元気を出してくれ、後で何か食べさせてやるから」


「はいはい、それまでオレはみんなが美味そうな料理を食べている時に指をくわえて待っていればいいわけだ。

 まったく、人間様には頭が上がりませんな。

 アルは知っているか?犬をしつける前にすべき事は腹を空かせた犬の目の前で飯を食う事なんだと図書館で読

 レイもそれを知っているはずだが、それでもこれだけ私に敵意を向けてくるとは。


 食べ物の恨みは怖いというが、レイから食を奪うことことの怖さを私は感じた。

 んだ本に書いてあった。

 犬は自分が食べたい物を目の前で食べられることで、その者が自分より上位にいると感じるようになり、言う事を聞くようになるんだと」


 勿論、私は自分をレイの主人であるとは思っていない。あくまで対等な存在であり、さらに言うと返しきれない恩義がある。


 王都騎士にその存在がばれるという事は、国中にその得意な存在が知れる可能性があり、研究熱心な変態学者達がアルをバラバラに分解することもあり得る。


次回は7月6日0時投稿予定です。

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