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落ちこぼれ騎士と銀のゴーレム  作者: ベンソン
第2章 災いの始まり
23/28

第15話 黒鉄のゴーレム その3

年明け一発目の投稿になります。


毎日通勤中に寒さにこらえながら、スマホで書いているため誤字脱字があるかも知れません。


見つけた方はお気軽に教えて頂けると幸いです。


今年も不定期の投稿になりますが、どうぞよろしくお願い致します。

 真っ昼間の市場では人々がひしめき合っているのだが彼らにいつもの賑わいはなく、雷に打たれたようにその場から動けなくなってしまった。


 路地裏の上から見ると団扇のように人々が弧を描いてその場を避けている。


 中心にいるのは拳を地面に叩きつけた動く巨大な岩の塊だった。


 その怪力で地面へめり込ませた拳を持ち上げると、突然姿を消した二人を探し、重たい頭をぎこちなく上げ、紫色に光る一つ目をキョロキョロと動かし辺りを見回していた。


 不思議なことに隠れる時間も、物陰もないのに二人の姿は文字通り消えてしまい見つけることができない。


「…逃ゲタカ」


 どんな方法を使ったかわからないが、辺りに二人の気配はない。

 そして反撃してこないということは既にこの場を離れてしまっていると考えていいだろう。


 しかたなく振り返り、主の元に帰ろうとした時、辺りの静寂を壊すように岩でできた頭が角材で殴られた。


 殴ったのは壊された店の主人。腕っ節が強くいかにも喧嘩早そうなヒゲ面の男だ。


「てめぇ!人の店をぶっ壊しといて、どこ行こうってんだ!!」


 棒立ちしているゴーレムに向かって、何度も打撃を加えた。


 最初は何の変化もなかったが、岩の表面が叩かれるたびに砂埃を吹き出し少しず砕け始めた。


 辺りの人々は地面に岩の破片が落ちるのを見て次第に“いいぞー、やれー”と男に向かって応援し始めた。


 声援に包まれ勢いに乗った男はさらに打撃を加えた。


 殴り疲れた男は息が切れ始め、一呼吸を入れ少し間を置いた後に渾身の力を込めて殴りかかろうと角材を振り下した時、巨大な岩の手がそれを阻んだ。


「おッ!?」


 ゴーレムは無言で男の持っている角材を掴むと、自らの力を誇示するように太陽に向かって持ち上げた。


 ヒゲ面の男は必死に抵抗しようと角材を離さなかった。


 戦いの素人とはいえ、喧嘩馴れしている男は持ってきた獲物を奪われることがどんなに危険かわかっていた。


 もし離してしまえば自分の持ってきた獲物でこのゴーレムが誰かを傷つけられてしまうかもしれない。


 この辺りで店を出しているのは皆、古くからの知り合いだった。


 “絶対に離さすものか!”


 少なくても自分が掴まっていれば、いかに怪力だろうと簡単に振り回す事は出来ないだろう。


 そんな男の想いとは裏腹に、次第に自分の体ごと持ち上げられ両の足が地を離れ高々と天に向かって掲げられると、岩のゴーレムはクッキーをつぶすように軽々と角材を粉々に握りつぶしてしまった。



 男をはじめ、ゴーレムの想像以上の力を目の当たりにして、辺りにいる人々は驚きを隠せなかった。



「自ラ、死ヲ選ブトハ。愚カナ」


「なッ!」


 驚きの声を発する間もなく、左右の脇腹辺りから胴体を包むように両手で掴むと徐々に力を入れていく。


「ぎゃぁぁ、は、離せぇ!!」


 体を掴む腕に向かって必死に拳を振り下ろし抵抗するが、力が緩まる気配はない。

 男の体は徐々に圧迫され痛みが増してきたためか、抵抗も出来ずただ悲痛な叫びを上げ始めた。


「何しやがる、そいつを離せ!」


 ヒゲ面の男と同様に腕っ節の強そうな男達3人がゴーレムに石をぶつけ、角材で殴りかかった。 しかし、岩の体はびくともしない。


 店の瓦礫をぶつけられ、金槌で頭を強打され、角材が折れるまで殴られ続けた。


 しかし、いくら殴られても全く動じる事無く、ヒゲ面の男を離さなかった。


 男達は仲間を救おうと、なおもこの岩の塊へ精一杯の力で殴り続けた。


 「良イ、ダロウ。幾ラデモ殴ルガ良イ。正シ、コノ男ガ死ンダ後…」



  男達はさらに殴りかかろうとするが、ゴーレムの次に発した、たった一言で戦意を喪失する事になった。


「…次ハ、オ前達ダ」


 その無機質な声から殺気を伝わり男達の動きを止めた。


 どこまでも冷たい言葉の響きに、男たちの体は氷漬けにされたように動けなくなってしまったのだ。


 それほどまでに、このゴーレムからは戦いの素人でもわかる“凄み”があった。


  「私ハ、弱者ガ嫌イダ。覚悟ノアル、強者ダケガ、私ヲ止メラレル。…ドウシタ、先程ノ威勢ハ?助ケタインジャ、ナイノカ。」


  その姿と言葉にその場にいる誰もが恐怖し、自分ではこのゴーレムに太刀打ちできないと直感的に分かってしまった。


  頭の先からつま先まで、自分達が相手に出来るはずがないとわかってしまったのだ。


「誰か、助けて、く、れ」


  ヒゲ面の男は顔を口元から泡を吹き出しながら、最後の助けを求めた。


「アト10秒ダ!ソレ、マデニ、私ヲ壊サナイト、コノ男ハ死ヌ!!」


 ゴーレムは今までに無いほど声を張り辺りにいる全員にわかるように大声を出し、ヒゲ面の男を見せしめのように高らかに宙に浮かし“10、9、8、7…”と数を数え始めた。


 人々は先程ゴーレムが角材を粉々にしたのを目の当たりにしていたため、その男の行く末が簡単に想像できた。 きっと、あの男も先程の角材のように粉々にされてしまうのだろうと。


 その恐ろしい想像が、男の苦しむ表情が、悲痛な叫び声が伝わってくるたびに現実味を帯びていった。たった10秒数える時間がとてつもなく長く感じ、その場にいる者達の思考をじわじわと恐怖の色へと染上げていく。


「終ワリ、ダ」


そう言うと、ゴーレムは一気に力を入れ男の体を雑巾を絞るようにねじ切った。


 辺りにいた女達は凄惨な光景に堪えかね絶望の声をあげ、男達は自分たちの無力さを呪い目を伏せた。


 そして、無惨に引きちぎられた男の亡がらは地面に無造作に落とされた。





 …そう誰しもが思った。


しかし、地面に落ちたのは男の亡がらではなく岩で出来た左腕。



  そしていつの間にか現れた黒髪の男が刀を岩のゴーレムに向けたまま、先程まで掴まれていた男を片手で担いでいる。


 その横には騒がしく掴まれた男に話しかけるゴーレムがいた。


「おい、大丈夫か!?アル、どうなんだ、生きてるのか!?」


「ああ、死ぬ程じゃないがかなり痛め付けられている、早く医者に診てもらおう」


 そのあまりに突然起こった出来事に、人々はしばらく何が起こったかわからなかった。


 ただ一つわかったことは、目の前にいる黒髪の男と、銀色のゴーレムが圧倒的な力を見せつけ場を恐怖の底に沈めた岩のゴーレムの腕を斬り飛ばし、死にかけた男を救ったということだった。

思ったより長くなってしまったため新キャラ登場は次回に延期になります。


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