第14話 黒鉄のゴーレムその2
お久し振りです。
やっと投稿ができました。
できればお正月中にもう1話投稿したいと考えてます。
レイとアルが図書館から追い出された後、二人は市場に買い物に来ていた。
「今日は何が食べたい?」
「なんでも、いい!俺はアルの腕を信用している、ぞッ!」
レイは今日はどんなものが出てくるのか楽しみでしょうがないのか、足をガシャガシャと小刻みに上げ下げしてこちらを見ている。
「わかった、わかった」
アルは子供をあやすようにそう言うと辺りを見回し、活気に満ちた昼間の市場の光景を見て額から一筋の汗を垂らした。
それは熱気を帯びる人々の真っ只中にいるからではなく、追い込まれるときにでる冷や汗であった。
“ なんと言うことだ…、この私が何を作ればいいか思い浮かばないだと”
久しぶりの町での生活も一週間以上が過ぎ、毎日本気の料理を作ってきたアルは何を作ればいいかわからなくなってしまったのだ。
ネスカを含め、ここ数日で考えていた料理は全て作ってしまった。
しかし、それでもアルの作れる料理を全て作ったわけでは決してない。
ではなぜアルは何を作るか思い浮かばないのか、その理由はアルの今までしてきた生活にある。
今までは偶然現れた熊や、たまたま通りかかった川にいる魚、そこら辺に生えている山菜などを調理すれば良かった。
しかし、ここは王都に次ぐ第二の都市。
市場には様々な食材がところせましと並び人々を誘惑している。
正直なところアルは食材に“縛り”があることで力を発揮するタイプの料理人だった。
安いもの、あまりもの、狩りすぎたもの、作りすぎたもの、そういった何かしらの縛りの中でもがき作り上げる料理こそ、アルの得意とするものなのである。
勿論、アルは今までは様々な料理を覚えてきたがふと何でも作っていいと言われると何も頭に浮かんでこないのだ。
そのためネスカや鶏ハムは前から考えていたため作れたが、今は“何かあったはずなんだがなぁ”、とただ悩むだけであった。
先日、このことを市場で肉を売ってる中年女性に話したら
“わかるわかる、そういう時に変に凝ったもの作ると失敗するのよね。結局食べる方からしたら、いつものように残り物で作ったやつが美味しかったってこと家もよくあるから…”
と共感を受けるほど所帯染みた悩みであった。
今はただただ、レイの何を食べさせてくれるのか楽しみでしょうがない!というようなリアクションを見ていてアルの中でハードルがグングン上がっていくのだった。
素材を生かしたシンプルな料理にするべきか、それともせっかく町にいて様々な食材が手に入るのだから少し手の込んだものを作ろうか…。
そんなことを考えているとレイが後ろから近づいてくる巨大な気配に気づき話しかけてきた。
「アル、後ろから何か大きなものが近づいてくるぞ」
アルが振り返ると、人混みの中に3メートルほどの大きな人に似たシェルエットの塊がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
人々はその塊に気づくと、その重々しく歩く巨体に体が当たらないようにそうそうに道を空けていった。
その巨体が人間でないことは明確であった。
ゴツゴツした岩と粘土が集まってでできた黄土色の体は、分厚く巨大で歩を進める度にする“ズンッ“という足音から、人間にはとても身に付けられない重量を感じることができる。
頭はやはり岩でできているのだが、顔には人間でいうと目の位置に拳ほどの紫色の光の塊が一つだけあり、その他はただの岩の集まりのようである。
また、その歩き方は知性を感じさせない無機質な歩き方で、前を歩く人々などまるで見えていないように自分の歩くペースも進行方向も変えないのだ。
「あれがゴーレムか、でっかいなぁ…」
自分以外のゴーレムを初めて見たためか、レイは嬉しそうに歩いてくるゴーレムを見つめている。
「レイ、向こうの通りに行くぞ」
「え?…ああ」
アルはまっすぐこちらに向かってくるゴーレムに不吉なもの感じ、子供のように見とれているレイの手を引いて路地裏に入った。
その時、アルの不吉な予感は的中することになった。
巨大なゴーレムの岩でできた頭はただ真っ直ぐ前を向いていたのだが、路地裏に向かうアルとレイの姿を追うように急に顔を向けると突然の歩みを早めたのだ。
その進行方向にいる人々は突然早く動き出したゴーレムに驚き、悲鳴を上げて道の端に逃げた。
逃げ遅れた者は容赦なくゴーレムの分厚い手で弾き飛ばされ、壁や店先の食材に激突し悲痛な叫びをあげた。
その叫びを聞いてアルは振り返り、先程まで自分達がいた通りに目を向けた。
「何があった!?」
「アル、あいつこっちに来るよ」
“ドカドカドカッ”という地響きをたてながらそのゴーレムは路地裏の前まで来ると、通りの様子を伺おうと路地から顔を出そうとしたレイとアルと対峙した。
「…オ、マエガ、…ギン、ノ、ゴーレム、ト、ソノ使手…ダナ」
“これは、ゴーレムを通して術者が話してるのか”
ゴーレムはレイという例外を除いて自我を持たない人形のため、話すことはできない。
アルはゴーレムを通してその使い手の言葉だと理解した。
そして、なぜかはわからないがこのゴーレムの主は自分とレイを知っていることに危険を感じた。
「…そうだと言ったら?」
「コ、コ、デ、…コロスッ!」
「さがれ、レイ!」
そのゴーレムの問にアルが答えると、ゴーレムは突然巨大な腕を振り上げるとアルとレイめがけて降り下ろしてきた。
アルが咄嗟にレイの肩を引いてゴーレムの降り下ろした場所から遠ざけたお陰で、レイの体には傷一つついていない。
しかし、ゴーレムの降り下ろした腕は地面に深々とめり込み、窪みを作っている。
あんなものをまともに食らったら…。
アルは“ゴクリッ”と喉を鳴らすと戦場で兵士達がゴーレムに蹂躙される光景を思い出した。
相手がどんなに許しを乞いても、どんなに嘆こうとも、決して主人の命令に背くことない残酷で巨大な人形。
その加減をしない無機質で、淡々と命じられたまま人々を磨り潰し殺す兵器の恐ろしさを。
このままでは無事では済まないと感じ取ったアルは、瞬時に抜刀しながらゴーレムの懐に入ると、横腹から首に向かって刀を振り上げた。
アルの鋭い斬撃はゴーレムの岩でできた体を引き裂き、大きな傷を作った。
「岩を切った!」
目の前の光景にレイが驚く。
“ダメだ!浅い!!”
アルが振り上げた刀を二撃を放つために刃先を変えようとしたその刹那、ゴーレムは何事もなかったかのように降り下ろした腕をなぎ払うようにアルに裏拳を放った。
「ウウッ」
アルはかろうじて刀で拳を受けるも、ゴーレムの圧倒的な怪力で吹き飛ばされ背中を路地の壁に強打した。
降り下ろした時と比べると、力がない攻撃だがその威力は人間にダメージを与えるには十分だった。
ぶつかった壁にはヒビが入り、頑丈さが売りのアルが痛みからすぐに動くことができないほどだった。
ゴーレムは近寄ってくると、そんなアルの姿に何の躊躇もなく追撃を加えようと腕を振り上げる。
「アルッ!」
ゴーレムの一撃が迫る中、レイが白く輝くとアルの視界が一瞬で視界が変わる。
そこは市場を囲む建物の屋根の上。
そして移動した直後に真下から聞こえる乾いた衝撃音からゴーレムが真下にいることがわかる。
「大丈夫か?」
「ああ、助かった。危ないところだった…」
レイが屋根の上から下を見下ろすと、ゴーレムは重たい岩でできた頭を動かし辺りを見回している。突然消えたアル達の行方を探しているようだ。
「アル、あいつこっちに気づいてないよ!」
アルは突然のゴーレムの襲撃に、どう対応すべきか迷っていた。
あれだけのゴーレムを扱えるという事はよほどの使い手なのだろう。
騎士と同等かそれ以上の力がないと、あれほどのゴーレムは動かせない。
それほど、あのゴーレムの力は凄まじい。
ならば逃げるのが得策だ。
正直、あれだけの力を持つ上に使い手の場所もわからないこの状況は非常に危険だ。
ここは市街地で、隠れようと思えばいくらでも隠れる事が出来る。
それに、これだけ騒ぎが大きくなったのならば、この都市の騎士が駆けつけてくれるだろう。
“これだけ人がいるのだから、もっと才能があるやつが何とかしてくれるだろう”
そう、以前のアルならここで結論を出してしまっていただろう。
…しかし、今のアルはその先を考えてしまう。
“もし、助けがこないうちにあのゴーレムがさらに暴れでもしたらどうする?すでに怪我人もいるみたいだ。私が助けに行かなければ誰がやるんだ!”
アルは危機にひんして、それでもなお自分の中にいる騎士としての自分が人々を守れと激しく訴えかけてくるのを感じた。
そして、その心の中の騎士を支えているのは、自分の半分ほどの背丈しかない小さなゴーレムであると気づき小さく微笑んだ。
“それなら戦うしかない”
アルはそう決心すると、レイを見つめた。
あのゴーレムを止めるには、自分だけで止めれるはずはない。
レイの力が必要不可欠だった。
アルがレイに助力を求めようとした時、レイはアルの視線に答えるように言い放った
「アル、アイツを止めよう。これ以上、町の人を傷つくのは見たくない」
アルはその言葉を聞くと、再び小さく微笑みうなずいた。
「お前ならそう言うと思った」
次回は新キャラ出します。
書いてて本当に思うのですが、女の子って書くのが本当に難しいですね(苦笑)




