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落ちこぼれ騎士と銀のゴーレム  作者: ベンソン
第2章 災いの始まり
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第13話 黒鉄のゴーレムその1

一週間更新とか言って一ヶ月も投稿しておりませんでした。すみません!!


今回から投稿に時間がかかる分、一話あたりの文字数を少し増やして投稿しようと思っています。


大変勝手ですが、少しずつ一話一話進めていこうと思います。


宜しくお願い致します。

 昔々、大陸の大半は大樹海によって覆われていた。 


 樹海の中は人類の侵入を拒む世にも恐ろしい怪物達が闊歩し、新種の病や毒の霧が発生する危険な場所であったため人間が暮らす事など到底出来なかった。 


 ある日を境に急速に広がっていった樹海は一つの巨大な生き物の様に田畑を飲み込み、山を覆い、大河を侵食し人の住める環境を削り取ってきた。


 この大樹海は大陸のちょうど中央で発達し続けていため徐々にその回りに点在する国々を圧迫していった。 


  国々は、土地を樹海に潰される中で、失っていく土地の穴埋めをするために隣国と戦を始めた。


 残り少ない人が住める土地を奪い合い、血を血で洗う暗黒時代が訪れ、多くの国が滅び、残った国々も衰退の一途をたどっていった。 


  そんな中、人間達を先導する大魔法使いが現れた。


 彼の名はバスター、知恵と勇気と絶大な魔力を持った彼は人類の救世主として樹海を切り開いていった。


 彼が手を振り下ろすと樹海の木々は一瞬で消し飛び、土地は清められ、人が住めるようになった。


 彼は十数年間、各地を歩き回りその魔法を使い続けることで樹海の進行を抑える事に成功した。


 彼の起こす奇跡を目にし、その力になりたいと考えた5人の若者は彼に頭を下げ弟子として付き従い、彼を助けた。


 やがてバスターは自身の起こす奇跡の力を弟子達にわける事にした。


 そして弟子達が発現させた奇跡が“魔法”。


 この世において人間が唯一魔物と樹海に対抗し得る奇跡である。


 バスターの弟子達は各々が得意な魔法を使う事でバスターの手足となって樹海を退ける事に貢献した。


 一人は迫り来る木々を木っ端みじんに破壊し、一人は病に犯された土地を清め、一人は自らが生み出した魔物で土地を耕し、一人は樹海の怪物達を呪い殺し、一人は激流によって木々を洗い流した。


 それらの力は5色に分類され樹海に対抗するために神が与えた力と言われるようになった。
















 私とレイは、この数日間図書館で書物と格闘する日々が続いていた。


 最初はレイに読聞かせていたのだが、どういうわけかあっという間に文字を覚えたレイが自分で本を読むようになったため自主学習をしてもらう事にしたのだ。 


 普段聞き分けがない癖に、学習能力だけは高いらしく今まで自分の知らなかったこの世界の知識を乾いた綿が水を吸い込むように手に入れていた。


 レイの書物を読む姿には鬼気迫るものがあり、ゴーレムが書物を読み漁るという常識はずれな状況をさらに際立たせていた。


 勿論、ゴーレムに関する知識を得るために図書館に通っているのだが、この世界の知識を得る事でレイが過去の記憶を取り戻せるかもしれないという本当にかすかな淡い期待と、基本的な知識ぐらいは知っていて欲しいという思惑がある。


 最初は、ゴーレムに関する情報だけが欲しかったのだがそこにたどり着くためにはそれなりの知識が必要なためどちらにせよレイが理解するためには通らなくてはならない道なのだ。


 ゴーレムは様々な素材、主に土や泥、岩、時には鉄など鉱物を用いて術者が操る魔法で作られた人形の事を意味する。


 では魔法とは何なのか、どういう技術なのか。


 これはこの世界では常識であり、自分がゴーレムの癖にそんなことも知らないレイに対して“このままじゃけない”と私は思ったのだ。まあレイ以外に自分が何者か理解できる者がいるとは決して思わないのだが、私としても今後の事を考えたらレイにはそういう時間が必要だと思ったのだ。


 というわけで、レイには基本的な知識をつけるため、歴史書や簡単な魔法書を読ませている。


 そのただひたすらページをめくるレイの姿は普段の子どもみたいな動きと相反し、無機質な印象をこちらに与えるため少し寂しいのだがこれもしょうがない。


 そして、私は私で本日の目標として机の上に高く積み上げた分厚いゴーレム関係の書物を読み漁っていた。


 レイは勉強中のため、私がゴーレムの事を調べる事にしたのだ。


 初日に図書館の受付でゴーレムについての書物がどれだけあるか聞いた所、 “そこから、そこまでです”と簡単に教えてくれたのだが、指差された場所は天まで届くのではないかと思われるほど高い本棚の列が5カ所。


 私はその書物の多さに愕然とした。


 また、予想はしていたのだが実際に読んでみるとそれは学術書特有の小難しい文字の羅列であり、読んでいるだけでさっぱり頭に入ってこない。


 私も一応貴族の端くれであり、それなりの教育を受けてきたのだがここまで専門的なことを書かれるとさすがに頭痛がしてくる。


 今の所わかっているのはゴーレムとは作られた地域は地域によって素材が変わるものの、その性能は国によってある程度統制されているらしい。今の所、ゴーレムを鉄で作る国は無いようだ。


 確かに、私が騎士時代に戦ってきた隣国は使うゴーレムはどれも岩で出来ていた。


 つまり、レイは少なくとも国で管理しているゴーレムではなく、個人が作ったと推測が出来る。


 それにレイに使われている鉄はただの鉄ではない、私が知っているものよりもさらに硬度の高い洗練された金属だ。これだけの金属を人工的に作り出せる国を私は知らないし、戦争に使うにはとんでもない費用がかかるためまずレイの様なゴーレムを量産するとなるとただでさえゴーレムは維持費がかかるため、兵器として維持できないと私は推測する。


 ならばどのような者がレイを作り出したのか。それこそがレイの過去をひも解く上で重要な事なのだ。


 まあ、そこまで予想が立てられるのもこの図書館で得た知識からなので、あながち私たちにとってこの図書館での時間は無駄ではないようだ。





「…“彼は不思議な力で多く人々に魔法の力を授けた”とあるけど嘘くさいな」


「…ん?何が嘘くさいんだ?」


 私は自分が読んでいた難解な書物の内容から、黙々と書物を読んでいたレイの発した言葉にすぐに対応しようと頭をフルスピードで切り替える。


 レイの読んでいる書物は『バスターと樹海』というこの世界でもっとも広く知れ渡っている伝説である。


「どうだろうな、あくまでも伝説だしおそらくかなり昔のできごとだろうからはっきりとはわからないな」


「…アルは騎士団にいたのに知らないのか?」


 騎士団は魔法のプロフェッショナルの集まりである。魔法が使えないとはいえ、騎士団の一員であったアルが魔法の知識が無いはずが無いとレイは考えた。


 しかしそれはアルにしてみれば、自分が教えている者に“お前も知らないのか”と思われることほど屈辱的な事は無い。


 しかも、騎士団にいた時は魔法が使えないくせに魔法に詳しいということで馬鹿にされていたこともあり、あまり自分の考えを話すのは苦手なアルなのだが自分の推測をあわせてレイに話す事にした。


「んー、まあ突然魔法を人間が使えるようになったというのはあり得ないだろうな。現段階では魔法は生まれもっての力であり、先祖から遺伝しているというのが一般的な考えになっている。

 とすると、この話に出てくる5人の弟子達は突然魔法が使えるようになったわけだからまったく魔法が使えない私からすれば頭を下げてバスターに弟子にてくださいとお願いするだろうが、恐らくこれは誇張された話だと思う」


 レイは“はぁ”と話を集中して聞いてくれている。


 “私の話を聞いてくれている!”


 その姿に、私は自分の内から込み上げてくる熱い気持ちを抑える事が出来なかった。


 どの伝説でもそうだが、昔の人が考えた文献というのは矛盾が多い。

 この本には大陸全土を覆うように樹海が広がろうとしていたとあるが、現在樹海は大陸の中心にしか広がっていないし、 少なくてもここ数百年で面積が拡大したという事実は無かった。


 きっと私たちの祖先は樹海が自分たちの土地を奪うと錯覚するほど、自然と戦い自分たちの住処を守ってきたのだと私は思っている。

 自然との過酷な戦いの中で彼らは自分たちを救ってくれる救世主を求めたに違いない。


 これが騎士団の連中だったら間違いなく馬鹿にされただろうが、私は素直に話を聞いてくれるレイを前に熱弁を振るった。私に知識を与えてくれた師に恥じぬように。そう私も魔法は使えないがきちんと教育を受けたのだ。魔法を使えない分、人一倍勉強したのだ。



 だんだんレイの過去を探るという当初の目的とは離れてきている気もするが、私はレイに一人でいても恥ずかしくない知識を与えたいと思っている。


 私はそれから、レイのなんで?なんで?という疑問を打ち消すために長々と解説をした。


 その結果が、これだ。


 私たちは、今日の目標を全く達成できずにまだ真っ昼間だというのに宿へ向かっている。


「アル、今度から前に読聞かせてくれたとき見たいに小声で教えて貰えると助かる」


 まあ話に熱がこもってしまい、途中で私とレイが声が大きいという理由で図書館を追い出されたのは言うまでもない事実だ。


「ああ、すまなかった。私も嬉しくてつい声を張ってしまった」


 …とりあえず、宿に戻って早めの昼食をとってからレイの魔法でこっそり図書館内に侵入し、今日読むべき書物を読む事にしようと心に決めたのであった。



仲間達から知識だけと蔑まれた悲しき男・アル。その知識はきっと役に立っている…はず。

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